その4掲載の「もしやる気があったらでいいから、その3-2に載せた答案例のうち、検察官側に有利な論述だと自分で考えた部分に、何らかの“しるし”(ex.下線、「」、マーク)を付けてみてくだせ~い。」
というやる気なし課題、やってみましたか?
…まあ、やらなくてもいいさ~せいぜい10点/100点にすぎない(cf.司法H27論文設問1(2))し、クソ出題者・採点者側の一貫性を欠くくだらんムチャ振り対策にすぎないし。
私もやる気出なくてその4から1か月近く空いてしまったんだけど、このシリーズの記事ランキングから見て、このシリーズの完結を待っている人(特に今年司法試験を受ける人)も結構いると思うので、そろそろ完結させないといかん!
というわけで、その3-2に載せた答案例のうち、検察官側に有利な論述だと私が考えた部分に水色のマークを付けたものを、この記事の末尾に載せたので、参照してください。
で、参照してもらえば一目瞭然だと思うけど、水色のマーク部分がかなり長いので、これを全て10点/100点にすぎない反論(cf.司法H27論文設問1(2))として書くのは、得点効率が悪すぎる。
その4で示した司法H28論文の採点実感(公法系)の「5 検察官の反論又は私見」でも、
“検察官の反論を明示する以上は,判断枠組みを定立するだけで終わるのでは不十分であるし,「目的は不可欠で,手段は最小限である」などと結論を記載するだけでも足りず,冗長にならないように留意しつつ,検察官としてその結論につながる積極的・直接的・根本的な理由(判断の骨組みとなる部分)まで端的に示す必要がある。他方,結論的に付添人の主張と同一の結論となるにしても,なぜ検察官の反論を採用できず,付添人の主張と同一の結論に至るのか について説得的に論じなければ,検察官の反論を踏まえたものとはならないことに留意して欲しかった。
・ しかしながら,例年と同様,検察官の主張を詳細に述べる余り,あなた自身の見解が簡単なものにとどまってしまった答案や,あなた自身の見解が検察官の反論に対する再反論に終始してしまい,そのため,あなた自身の見解について,どのような判断枠組みの下,どのような事実関係に着目して,どのような結論を導いたのかが不明確な答案が相当数あった。また,検察官の反論及びあなた自身の見解に言及されているものの,あなた自身の見解が検察官の反論を踏まえたものになっておらず,付添人の主張を繰り返すだけになってしまっている答案も見られた。”
とあるし…注文多すぎ!!(#^ω^)
いったい、水色のマーク部分のうち、
・どの部分を“反論”とし、それをどのように表現すれば、得点効率が最大化できるでしょうか?
他方で、
・どの部分を“私見”とし、それをどのように表現すれば得点効率が最大化できるでしょうか?
なお、付添人の主張を参照する必要があれば、その3-1に掲載した答案例を参照してください。
これを、最終課題とします。
あっ、余裕・やる気がなければやらなくていいと思うよ~_(┐「ε:)_
次回、シリーズ完結予定!(o^-')b
第2 設問2
1 自由1は憲法上保障されるか。
人権のインフレ化防止のため、「幸福追求~権」として保障するのは、人格的生存に不可欠な利益に限定すべきである。
確かに、誰もがその時々の位置情報を周囲の者に把握されているし、継続監視は、監視対象者の前科等の参考情報をもともと把握している警察本部長等が行う(22条)だけである。
しかし、前記A側主張に加え、警察に位置情報を収集されることによる心理的圧迫は大きいといえるし、収集した位置情報の漏えいや目的外利用等を防ぐ管理体制も明らかでない。
このような情報をコントロール(強制的に収集されないように)することは人格的生存に不可欠といえるから、自由1は「幸福追求~権」として保障される。
2 としても、「公共の福祉」に基づく最小限の制約に服する(13条後段)が、最小限の制約かどうかの審査基準が明らかでない。
前記A側主張の一方で、政党国家現象が進み国会野党対国会与党(≒内閣)という対立が激化している中で、超党派の「性犯罪被害の予防を促進するための議員連盟」が結成され、性犯罪者の再犯防止に関する具体的方策を講じるために必要な法整備についての検討が進められた翌年、「全国民を代表する選挙された」国会議員(43条1項)の提出法案として法が国会(41条)に提出され、衆参両議員で可決され成立した(59条1項)から、これを尊重する必要もある。
そこで、最も厳格な明白かつ現在の危険の基準よりは緩やかに、(a)相当の蓋然性で生ずる放置できない害悪防止のため(b)必要かつ合理的な手段による制約ならば、最小限と解する。
3⑴ 本件では、(a)20**年5月に連続して発生した①②事件により、性犯罪者の再犯防止に社会の関心が集まることとなった。
①②事件に関する報道では、心理学の専門家等が、「一定の類型の性犯罪者は、心理的、生理的、病理的要因等により同種の性犯罪を繰り返すおそれが大きく、処罰による特別予防効果に期待することは現実的でない。このような性犯罪者の再犯を防止するためには、出所後の行動監視が必要である。」旨の所見を述べた。
こうした経緯を受けて、前記2⑵の事情に至ったから、法の主目的は、「性犯罪の再犯の防止」(法1条)にあり、これを通じて「性犯罪者の社会復帰を促進するとともに、地域社会の安全の確保を推進する」ものと解すべきである。
ア ここで性犯罪の再犯被害は、①②事件とも再犯を重ねるにつれて被害が大きくなっていることからしても、「生命、自由」(13条後段)や肉体・精神的「健康」(25条1項)、特に子ども(①は前科も含め幼稚園児、②はPの前科で女子中学生が被害者)はその「教育」(26条)の見地からも放置できない害悪といえる。
イ そして、心理的、生理的、病理的要因等により特定の性的衝動に対する抑制が適正に機能しにくい者が存在することは確かで、そのような者が再び同様の性犯罪に及ぶリスクの高さは専門家が判定できるから、そのような者による性犯罪の再犯被害については、相当の蓋然性で生ずるといえる。
⑵ア (b)前記⑴の心理学の専門家等の所見から、主目的を達するには、監視対象者(法2条2項)の出所後の継続監視が必要とはいえる。
また、検察官が継続監視の申立てをしなければならないのは、刑法176~179・181条の「性犯罪」(法1条)で懲役の確定裁判を受けた者(その刑の執行猶予の言渡しをするものは除く)が、その心理・生理・病理的要因等により再び性犯罪を行うおそれが大きいと認めるとき(法10条1項)に限られている。
そして、裁判所が継続監視決定をしなければならないのは、上記申立て(必要な資料も提出:法10条2項)を受けて、必要な調査(11条1項)を基礎とし、被申立人の上記おそれが大きいと認めるとき(この点は上記検察官と二重にチェック)に限られる。
さらに、被申立人は、弁護士を付添人に選任でき(法12条1項)、これを選任しないときは、裁判所は職権で、弁護士である付添人を付さなければならない(同条2項)し、裁判所は、“審判”期日を開き、被申立人及び付添人から意見を聴かなければならない(法13条)から、公開法廷で国民に監視される(82条1項)「裁判」ではないが、被申立人の弁解・防御の機会は充分といえる。
その上、被申立人と付添人は、継続監視決定に対し、1週間以内に抗告できる(法15条)という不服申立手段もある。
(ア)a 前記第1の2(2)ア(ア)については、電子地図上に監視対象者の現在地と前科等の参考情報が表示されるから、監視対象者がその前科等に関連する場所に近づきそうなら事前に警戒できる。
それで監視対象者が性犯罪(の準備行為)をしている疑いある場合には警察官が現場に急行できる態勢が整えられることが想定されていたから、性犯罪の再犯を防止できる。
b また、同(イ)の手段では性的衝動による性犯罪の再犯防止には間に合わないこともあろうし、同区域から離れた場所での性犯罪につながる不審な行動やその準備行為等を把握できない。
c さらに、同(ウ)の社会復帰目的は、性犯罪の再犯防止という主目的達成を通じて副次的に達成すべきものにすぎない。
(イ) しかし、多忙な警察本部長等自身の継続監視(法22条)が、前記(ア)aのような形で充分できるとは考えにくいから、適切な担当者に任せるべきである。
また、継続監視決定の基礎となる「必要な」調査(法11条1項)で、専門家による鑑定等は、「必要があると認めるとき」に命じる「ことができる」し命じないこともできる(同条2項)という任意的なものにとどまる。
(ウ) とするとこれらの点で、継続監視は必要かつ合理的な手段とはいえないから、最小限の制約ではなく違憲である。
イ 法案作成過程では、監視対象者に小型のブレスレット型GPSの装着を義務づける案も検討されたが、「外部から認識可能な装置を装着させると監視対象者に対する社会的差別を引き起こしかねない」との懸念が強く示されたため、最終的に、超小型のGPSについて前記第1の2(2)イの手術をすることになった。
この手術を受けても、いかなる健康・生活上の不利益も生じず、手術痕も外部から認識できない程度に治癒し、継続監視の期間終了後にGPSを取り外す際も同様との医学的知見が得られている。
そうすると、10日間ほどの余裕を持たなければ、上記のように治癒しないだろうし、監視対象者の身体・健康やGPSに不具合が生じた場合も、継続監視開始日までに対応できないだろう。
(ア) 監視対象者に小型GPSの所持を義務付ける等の手段では、GPSがどこかに放置される可能性を否定できず、主目的を達成できないし、医療的な措置にも限界があるのだろう。
罰則も、前記手術を嫌がる者に対する法21条1・2項の実効性確保に(2項については監視対象者の身体・生命の安全のためにも)必要とはいえる。
(イ) しかし、A側の主張に加え、そのような者の自己決定権を尊重する(13条)見地から、「社会的差別」を甘受しても、同手術より、小型のブレスレット型GPS等の「外部から認識可能な装置を装着」する方法を選択する余地を認めるべきである。
(ウ) とするとこの点で、法21条は必要かつ合理的な手段とはいえず、最小限の制約ではないから、違憲である。
ウ(ア) 最後に、前記第1の2(2)ウ(ア)については、①②事件の犯行現場を含んでおり、一般的にも性犯罪が生じやすいといえるし、子どもは特に保護すべきだ(前記⑴イ)ともいえるから、この範囲内で、その者が性犯罪を行う危険性があると認めるときに限り特定危険区域を指定して警告・立入禁止命令をするのは、必要かつ合理的といえる。
(イ) また、段階的な規制は、広範囲の立入禁止命令をいきなり下されるよりは合理的といえる。
前記第1の2(2)ウ(イ)については、これこそが、性的衝動による性犯罪の再犯防止に、継続監視に基づく警官の急行では間に合わない事態を防ぐのに必要と考えられる。
(ウ) よって、この点は必要かつ合理的な手段といえるから、最小限の制約であり合憲である。
以 上