哲学者さんから
「中村先生は現在の司法試験予備試験対策として肢別本の利用についてはどのように考えていますか?」
というご質問をいただいたのですが、これまでにも同様の質問が結構あったので、記事で回答します。
端的に回答すると、肢別の短答過去問集は、司法・予備の短答対策としては「ずれている」と考えています。
理由は、以下の4つです。
1.
“本試験と同じことをする”のが最も効果的な試験対策だという根本的コンセプトからすると、短答本試験の出題形式を肢・記述ごとに分解してしまっている点で、短答本試験と同じ出題形式をキープしている1問単位の短答過去問集と比べると効果が小さい。
特に、肢・記述間で“比較的正しい・誤ってるっぽいもの”を選ぶという、短答本試験現場で必須の能力が鍛えられないのが非常に心配。
訴訟法的にいうと、単に肢・記述ごとに正誤判定をするのは、その肢・記述の正誤が“確信”の域(約80~90%ともいわれる)に達するかの勝負になるが、肢・記述間の比較なら“証拠の優越”(“more than half”=50%超)的な勝負になるので、正答可能性にだいぶ差がつく。
また、1問単位の短答過去問集でも、肢単位で解くこともできるので、“大は小を兼ねる”関係にあるといえる。
2.
(新)司法試験・予備試験の短答過去問の全肢が載っていると明記していないものが結構あり(ex.「司法試験予備試験の重要肢までフォローしています。」)、網羅性はもちろん、肢の選別基準の信用性にも不安がある。
3.
それなのに、旧司のかなり古い肢まで載っていたりして、知識過多→最も重要な個々の知識の“精度”が落ちる(cf.記事「動画『業界初!参加型講義「4A実践道場」フルVer』+補足」)。
4.
肢別の短答過去問集にしか載っていない知識の有無で合否が決まることも、まずありえない。
∵全受験生における肢別の短答過去問集のシェアは小さいだろう。
∵その中で、肢別の短答過去問集を“完璧”にできる受験生は、ごく少数だろう。
∵(新)司・予備短答過去問以外の知識を問うかのようにみえる本試験問題は、現場思考で解けるように作られている。
ただし、下記のような受験生は、肢別の短答過去問集を使ってもいいのかもしれない…とも思います。
・これまでに肢別の短答過去問集を使って、短答本試験に危なげなく合格してきた受験生(⇔論文対策にもなる短答過去問の教育効果を減殺してしまっている懸念はある)
・移動時間等の隙間時間に、1問単位よりも肢別の短答過去問集の方が解きやすい受験生(⇔1問単位の短答過去問集でも、1問ずつ解けばそう時間はかからないし、解きやすさは大して変わらないのでは?と個人的には思うが…)
・1問単位の短答過去問集をどうしても受けつけない受験生
・肢別の短答過去問集をこよなく愛している受験生