下記のような質問をいただきました。

「4A講座を受講している者です。
先生は、「合格ラインを確保した上で、加点を積み上げる戦略」を話されてますが、普段の勉強で上記を訓練する方法として、どのような事を意識すれば良いのでしょうか?
例えば、
普段の勉強で、最低ラインの確保を意識するために、
4Aで過去問を解いて、合格ラインぎりぎりの再現答案等を見て、反省分析し、
繰り返し過去問を解く中で、合格ラインを確保する思考・処理過程をシミュレートをする等でしょうか?」


この方法論は、特に論文本試験現場でかなり重要だと考えているので、改めて独立の記事にしてみました。


まず、「合格ラインを確保した」という実感を論文本試験現場で持てるような受験生は、ほぼ皆無です。

私も、受験生時代はそのような実感を持てなかった(今受験したら持てると思うけど)からこそ、まず「最低」ライン確保という考え方にシフトしました(cf.記事「相対評価 」)。

その結果、論文本試験現場では、「まず最低ラインを確保した上で、リスクとリターンを衡量しながら、できる限り加点を積み上げていく」プロセスのどこかで、合格ラインを超えることになります…難問の場合は、その「最低ライン」=合格ラインということも結構ありますが。


さて、「まず最低ラインを確保した上で、リスクとリターンを衡量しながら、できる限り加点を積み上げていく」のを訓練する方法は、論文式問題を解く際に、問題文読み→答案構成→答案書き→検証・復習の全段階で、文字どおり“常に”これを意識することに尽きます。

その具体化は、個人差があるところだと思うので、これまで具体的に語ってはこなかったのですが…参考までに、以下、私個人の受験生時代の方法を紹介します。

1.「最低ライン確保」

講義でいつも言っているように、4Aのプロセスを辿って、①当事者の②言い分を③法的構成した条文の④各文言に直接、あてはめやすい問題文の事情を1~2個ずつあてはめて終わりという感じです。短答式問題を解くようにとにかく最後まで処理だけをし切り、それを箇条書き的に答案に書くというのが「最低ライン」のイメージ…講義で板書している4A図をほぼそのまま答案に書き写す感じです。
たとえば、今、2016年合格目標の4A論文解法パターン講義は行政法に来ているので、取消訴訟の訴訟要件パターンの問題では、
・(行ソ3Ⅱ):○
 ∵①(問題文の事情のキーワード)、②(同左)
・(9):○ ∵(同上)
・(9Ⅰかっこ):○ ∵(同上)
…というのが、私個人の答案構成かつ「最低ライン」の箇条書き答案のイメージです。

制限時間ギリギリなら、本当にこれをほぼそのまま書きます(“(3Ⅱ)”の前に「処分」性、“(9)”の前に原告適格、“(9Ⅰかっこ)”の前に訴えの利益と書き加えるくらいはしますが)…ちなみに、私が受験生時代に1回、NOAさんの答練受講権を使わせていただいて、実際にこのような箇条書き答案を某予備校に提出したことがありますが、悪くない点数だった記憶があります。

2.「加点積み上げ」

私は、上記1の「最低ライン」答案構成ができたら、もう答案を書き出します(答案を書く余裕がなければ、頭の中で答案をイメージします)。答案構成した内容を全て答案に反映し切れず無駄にしてしまう経験を多く積む中で、答案構成は最低限にして答案を書き出し、行き詰まったらその部分だけ、一旦撤退して詳細な答案構成をしてからまた書き出す…という方法に行き着きました。

その際、上記1の「最低ライン」以外の内容(問題文の事情や条文操作・解釈論など)を、「これを書くリスクをリターンが上回るのか?」という衡量を文字どおり“常に”しながら、書く・書かないの判断を秒単位でしていました。

ここで「リスク」とは、内容的に誤り等が混入するリスク(ex.これで正しいのか自信がない)だけでなく、時間オーバーや混乱して論理矛盾・不整合となるリスクなど、論文本試験現場で考えられるあらゆるリスクを意味します。

また、「リターン」も、ただ単に得点につながるかだけでなく、楽に得点できるかという得点“効率”まで考えていました。

ここまで徹底的に無駄を排除し、得点効率を極限にまで高めなければ、頭の回転が遅くかつ遅筆の受験生たる私が確実に合格することは難しい…と思っていました(今にして思えば、そこまでやらなくても合格できたと思うけど、そのように突き詰めたことが、予備校講師としての土台になっています)。

3.検証・復習

最後に、ご質問にもあったとおり、「合格ラインぎりぎりの再現答案等」を入手できれば、それと上位の再現答案や予備校の“完全解”とを比較しつつ、「反省分析」をくり返します。

「合格ラインぎりぎりの再現答案等」を入手できない場合には、できる限り自分の答案スタイルに近い再現答案や予備校の“完全解”等を見るしかありませんが。