最近、「司法書士受験生S.K.さん」から、下記『』内のコメントをいただきました。
『私は、宇都出雅巳さん(同じオンスク動画サイトで勉強法を紹介されている)の勉強法をとってます。私流に宇都出さんの勉強法をアレンジしてしまっているかもしれませんが、「過去問を繰り返しくり返し読む過程で、中村先生のおっしゃるところの〈副産物〉としてではなく、過去問を通して意図的に知識を記憶していく」という感じでやってます。過去問は「解く」ということをしないで、正文化して読み知識として定着するまで繰り返し読んでるのですが、これはいわゆるインプットでしかなく、別にアウトプットも必要と考えるべきでしょうか?
中村先生の動画やブログ記事のいくつかを拝見して、過去問を繰り返し読んでインプットしつつも、ストップウオッチを使うなどして体育会系に過去問をガンガン解く作業を加えるのがいいかもしれないと思いつきましたが、中村先生はどう思われますか?(ちなみに、私は40代で仕事・家事・育児の三重苦を背負っているため勉強時間の確保に苦労しています、苦笑)
また、司法書士試験は条文を持ち込むことはできませんが、中村先生の4A勉強法を司法書士試験に当てはめるとして、最終的にはどのような状態を目指せばいいのかもアドバイス頂けると嬉しいです。お忙しいところ申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いします。』
まず私は、問題を「解く」ことの価値は、
1.未知の問題を解くための能力と感覚を鍛える
2.問題を解いて間違えたことをきっかけにして、誤解を修正する
点にあると考えています。
(cf)記事「問題を「解く」とはどういうことか?~その1
」
記事「問題を「解く」とはどういうことか?~その2
」
とすると、司法書士受験生S.K.さんにとって、
1.未知の問題を解く対策をしなくても合格点を確保できる計算が立つ
2.①本試験合格に必要な知識をほとんど誤解なく、本試験現場で“使える”形でインプットできているか、②問題を解いて間違うのと同等以上の効率で、誤解を修正することができる
なら、理論的には、問題を「解く」価値は低くなります。
しかし、
1.
実際に、未知の問題が例年より多く出題される可能性は、司法書士試験等にも毎年あるのではないでしょうか。ただ、その場合でも、相対評価の試験なら、多くの受験生が未知の問題を解くことができないでしょうから、あまり変わりませんが。
また、
2.
現実的には、試験合格に必要な知識を、ほとんど誤解なく、本試験現場で“使える”形でインプットできている自信のある受験生など、10年に1人いるかどうかでしょう。
しかも、試験合格に必要な知識をほとんど誤解なく、本試験現場で“使える”形でインプットできているかどうかを検証する手段としても、やはり本試験過去問を解いて実際に間違うことで、その誤解を1つ1つ潰していくのが最も効果的だと思います。
①
まず、仮にインプット用のテキスト等の内容を「完璧」に理解・記憶できたとしても、そのテキスト等の内容に誤りを含む可能性や、本試験現場で問題を解くには“使えない”形で書かれている可能性は否定できません。
ただ、司法書士受験生S.K.さんのように、短答過去問集等を『正文化して読み知識として定着するまで繰り返し読んでる』なら、その正文化の根拠とした部分に誤りが含まれる可能性や、本試験現場で問題を解くには“使えない”形になっている可能性は、通常のインプット用テキストよりはだいぶ低下するでしょう(とはいえ、正文化の根拠を短答過去問集の解説から持ってくるとすると、少なくとも司法試験・予備試験では、誤りがそれなりに含まれてしまいます)。
しかし、全短答過去問の正文化には、かなり時間がかかるはずです。
その時間で、1回でも多くくり返し解いた方が、学習効率が高いのではないでしょうか(司法書士受験生S.K.さんは、既に正文化済みだと思うので、この点はあまり問題ありませんが)…と私が思うのは、ただくり返し読むといったインプット学習をするだけで、その知識を適切にアウトプットできるようになる受験生は、少なくとも司法試験系ではほとんどお目にかかったことがないからかもしれません。
逆にいえば、正文化した短答過去問集等をただくり返し読むといったインプット学習をするだけでも、目指す試験で適切にアウトプットでき、合格点に達する計算が立つなら、それでもいいのかもしれません。
さらに、
②
問題を解いて間違うのと同等以上の効率で、誤解を修正することができるなら、その方がいいでしょう。ただ、それが誤解かどうかをどのような基準で判断し、どのようにして誤解を修正するのでしょうか…私は、ここにかなりの個人差、いや個人の中でも局面によってブレが生じやすくなると思います。そのため、誤解に気づかず、あるいは誤解に気づけても不適切な修正しかできない可能性が高まると思うのです。
これに対し、問題を解いて間違ったことや、どのような解答に修正すべきか(正解)は、少なくとも短答過去問であれば、外形的に明確です(どのような解答プロセスに修正すべきかまで適切に書いてある短答過去問集には、これまでお目にかかったことはありませんが)。
このような判断の明確性が確保できる点で、問題を解いて間違うという方法がベストだと考えています。
その上、上記1・2に付け加えます。
3.
本試験は、いずれも結局はブラックボックスです。
それを緻密に“分析”すると、もちろん必要・有益な面も大きいですが、バラバラに“分”けたジグソーパズルだと、完成図が分からなくなったり、ピースを失くしてしまったりするのと同様、何かしら見落とす・零れ落ちる要素が生じることも否めません。
私も、誰よりも司法試験系の過去問を愛して誰よりも緻密に“分析”している自負がありますから、その段階では、やはり、何かしら見落とす・零れ落ちる要素があるはずです。
だからこそ、せめて方法論の根幹部分では、あえて“分析”せず、ブラックボックスをブラックボックスとしてありのままに捉えるべきだと考えています。
つまり、「本試験と同じことをする」=本試験問題を解く。
これが、受験生時代から様々な間違いをくり返してきた私が、最も間違いのない対策として、根幹に据えている方法論です。
(cf)動画「司法試験は、本当に“難しい”のか? 」14分あたり~
4.
以上から、司法書士受験生S.K.さんは、一般論としては、『過去問を繰り返し読んでインプット』する時間を削ってでも、『ストップウオッチを使うなどして体育会系に過去問をガンガン解く作業』をすべきだと私は思います。
ただ、この『作業』をちょっとやってみて、あまり効率が良くないとか、自分には合わないと思ったら、『過去問を繰り返し読んでインプット』した方がいいのかもしれません。
あくまで、私も含めて不完全な“自分自身”が合格するための具体的な方法論は、人それぞれ(オンリーワン)だからです。
最後に、『4A勉強法を司法書士試験に当てはめるとして、最終的にはどのような状態を目指せばいいのか』というご質問には、司法書士試験についてはほぼ素人の私は、お答えすることができません。
以上は、そういう素人の戯言として、あくまで参考にするにとどめてくださいね…と言うにしては、長く書きすぎてしまいましたがσ(^_^;)