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「あ、あは、あはははははははは……」

自暴自棄に陥る。
壊れたレコードのように、淡々と笑い__奇声を発し続けた。もう全てが嫌になる。
かなりの声量だったせいか、周囲に集っていた生徒が徐々にこちらの方に注目しはじめた。相手が立っているのだから当たり前なのだが、上から視線が降り注ぐ。稲妻の如く、私を貫いたような気がした。

「稚内さん。どうかしたの?」

騒ぐ高音の中、低音が響いた。西島聖磨だ。
西島聖磨は周りの生徒を、野次馬の如く掻き分けて私の前に現れ、首を傾げて不思議そうに見つめた。顔まで見上げるだけでも首に痛感を覚える。

「ご迷惑おかけしました。私情なんで、お気になさらずどうぞお楽しみください」

私は溜息混じりにそう言い放った。すると周りにいた女子生徒の「そういうことなら、早く続きを!」という言葉を合図に、再び騒ぎ始めた。しかし、西島聖磨はその場から微動もしようとしない。

「……手」

暫く溜めてから、その一言だけを放った。私は訳が分からず、気にも留めずに本に手を掛けようとした。その瞬間、誰かが私の手首を掴んだ。その手は雪のように白く爪を丁寧に手入れされているが、何処か繊細ではない。力強い大きな手だった。もしかしてと思い、手から目線を遡ると案の定、西島聖磨だった。

「掌、怪我してるよね。菌でも入ったら大変なことになるよ。女の子なんだから」

西島聖磨の目を見てみると、漆黒の瞳が真剣さを物語っている。そして私の手首を掴んだまま、上へ引き上げて私を立たせると、そのまま人集りを掻き分けて廊下の方へ引き連れた。教室内からは、より引き立って悲鳴が耳を痛みつけるように聞こえてくる。
女の子だから。それが怪我を放置していたことがいけないことだという理由になるのか。男女構わず適切な処置が必要だろう。それに私は菌が入るのも承知していた。負傷者本人が構わないというならば良いのではないか。そんな疑問を残しながら、私はひたすら引き連れられ、足を動かすしかなかった。