社長になる男14のつづき。

オレがその会社を辞めた後も、3ヶ月ごとにホームページで発表される人事発令を見ていた。

STさんは順調に執行役員まで出世していたが、ある日突然、幹部リストから名前が消えた。

オレは辞めた会社に仲の良い知り合いもいなかったので、STさんがどうなったのかはわからなかった。

その3ヶ月後にその会社のホームページの人事発令を見ると、STさんの名前があった。

子会社の社長に就任していた。

子会社のホームページの社長挨拶の欄にも、写真つきで挨拶が載っていた。

写真ではいつもの薄ら笑いを浮かべていた。

子会社も4半期ごとに決算報告を掲載しているが、毎年確実に売上と利益を伸ばしているようだった。

STさんはなぜ社長になれたのだろう?

いくつか思い当たることはある。

・人が嫌がるようなトラブルプロジェクトを積極的に引き受ける。
 →なんとか成功させ、客と深いパイプを築く。
 →トラブルシューティングの事例を蓄積し、次のプロジェクトに活かす。
 
・人が嫌がるような問題児を積極的に引き受ける。
 →性格に難があるが、実は仕事ができる奴だったりして、部署の売上に貢献するようになる。
 
・人をおだててこき使うのがうまい。

・つねにギャグを言っている。

・気持ちが安定している。切れない。

・セクハラ、パワハラしない。

ピックアップすれば、たいしたことないように見えるが、これを全部できる人間がどれだけいるだろう?

少なくともオレにはできない。

2,3年の短い期間であったが、オレはSTさんと仕事ができて良い経験が積めた。

感謝している。