極上の美に包まれし破廉恥なお話”カヴァレリア・ルスティカーナ。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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リッカルド・ムーティ指揮によるヴェリズモオペラの代表作カヴァレリア・ルスティカーナ”の上演である。シチリア島の片隅、閉鎖的だが日々穏やかなこの地で引き起こる破廉恥で悲劇的なストーリー。復活祭は血で汚れ おぞましい憎悪と深い悲しみの結末。全く救い様の無い この世俗的な展開に誰しもがため息をつきたくなる。だがこのストーリーに世にも美しく華麗で時にこの上なくエレガントな極上の音楽を施した作曲家マスカーニの感性には脱帽だ。しかし又、彼はこの作品の呪縛により まさに この作品を超える新たな音楽を構築するに至らない。凝縮した才能は それ以上の柔軟性を得て 広がりを示す事は無かったのである。その生涯の最後はファシスト党の協力者として全ての財産を没収され非業の死を遂げる。死後その名誉は回復されたとは言え、何んともやり切れぬ話である。とにかく 息をもつかせぬ程のストーリー展開と これでもかと 繰り出される美しい旋律と歌唱との融合。やはり この作品はヴェリズモオペラの典型であり その頂点を極めた作品だ。ただそれは作曲家マスカーニに取って【唯一無二】のものであり彼の全ての始まりであり、心ならずも同時に完結でもあったのだ。
(ルチアーナ筆。)
★カヴァレリア・ルスティカーナとは
要約すると「古臭い田舎めいた規律或いは騎士道精神」…っとまぁ〜そんなふうな意味と思って頂ければ良い。