魅惑と情熱のグラナダ”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

この映像ははっきり言って飽きる程見ている。…が飽きない(笑)。三大テノールが一同に会した世紀の競演の第一回目、ローマ野外コロシアムで行われたコンサートの模様から この部分だけを切り取っている訳だが この日の歌唱は見ての通りホセ・カレーラスは絶好調、とても数年前に骨髄性白血病を患い 生死の境をさまよった人とは想像にも及ばぬ見事なスピントボイスを聴かせている。彼の歌う【グラナダ】ほど魅惑と情熱に富んだものとてない。同コンサートはプラシド・ドミンゴもルチアーノ・パヴァロッティも共に空前絶後の名唱を聴かせた演奏史に残る貴重な記録になったが それは我々に取って 正にそして頗る幸いな事である。大変優れたクオリティを誇る今映像は 後の世に色褪せる事のない歌唱芸術の範たるを指し示すに充分な価値を有し同時に この三人の名歌手の実力をポジティブに明らさまにしている事において比類がない。100年前までに この様な映像記録の技術がもし確率されていたなら きっと我々はカルーソーやシャリアピンなどの伝説の名歌手の歌うライヴも聴けていたに違いない。だが それは【せんなき事】。今 我々はここで20世紀後半を彩った名歌手の類い稀な美声そして名唱を心行くまで堪能しよう。それこそ 正にパラダイスだ。
(ルチアーナ筆。)