1月24日(日)Eテレ・クラシック音楽館。本オンエアーをタイムシフトで本日視聴した。何んとも清々しいひと時であった事か!【おぞましき世情】の中でうごめく愚人【特に安倍晋三を頭とした自民党の議員ども】の事など一瞬にして忘れさせてくれる音楽芸術の神々しいまでの【永遠の価値】を私は今また心静かに享受していた。今回のプログラムはドイツ伝統の正当な伝承者として的確で何んと言ってもその極めてナチュラルなテクニックと格調の高い表現で定評のあるピアニスト、ゲアハルト・オピッツをソリストとして迎え、巨匠ネヴィル・マリナーが渾身のタクトを振ると言う元々N響が最も得意とするまさにドイツ音楽の主流を体現してくれた近年稀に見る出色の名演であった。前半オピッツのピアノで奏でられたモーツァルトのピアノ・コンチェルトNO24。モーツァルトの作品としては極めて珍しい短調しかも最も重厚である面、悲劇的とも言われるC-mollで書かれたこの名作がオピッツの優れたピアニズム、即ち包容力と実直さ、明暗の中に確実に浮き立つ極上の美質で彩られその質感の見事な造形感によって醸し出され久々それに私もつくづく感動した次第だ。派手さや何か大きく必要以上にアピールして見せる様な事はオピッツのピアノからは感じ取れない。そこには、ひたすらモーツァルトの音楽に寄り添いその格別で神聖な【美】を讃えようとする彼の芸術家としての崇高な想いが見て取れる。昨今こう言う演奏の出来るピアニスト・演奏家がめっきり少なくなった。嘆かわしいと同時に益々オピッツの存在感が私には輝く至宝の様に感じられてならない。オピッツにはまだまだ健在で大いなる活躍を祈念してやまないとの思いがつのった事も付け加えておこう。とにかく素晴らしいモーツァルトであった。続いてはマリナーの指揮で聴くブラームスの交響曲第四番、91歳にして今だその矍鑠たる孤高のタクトは現在である。全楽章を通して決して窮屈で特異な熱血ぶりを指し示す様な今風のダイナミズムからは全く趣きを異にするマリナーの音楽作りは機能性を高めた今日のN響を自在にコントロールして形式と後期ロマン派の音楽的秩序を頑なな迄に順守するビルトオジティーがまさに感じ取れた。しかしそれは単純な懐古趣味などではない。音楽の流れそのものは極めて柔軟でもあるのだ。発想の自由度をしっかりと計算しつつブラームスの創作の軸である古典主義との高度な芸術的融合、これをマリナーは寸分違わず音楽の中に表出し尽くすのである。これも又、巨匠の成せる【神技】なのであろう。あっと言う間の2時間あまり【クラシックかく有るべし!】
今回のクラシック音楽館はそんな【芸術的規範】を我々に提起してくれた様な番組であった。◎をつけても足りぬ程の充実した内容で感服しきりであった。
(ルチアーナ筆。)
☆コンサートプラスでは
先頃他界した
ピエール・ブーレーズの
来日時のN響との共演が
オンエアーされたが
これを見て
やはり彼が20世紀後半の
音楽芸術の大いなる
牽引者であった事が
一目瞭然である事を
認識した。
優れた芸術界の巨星が
去った事、改めて
深い悲しみを
禁じ得ない。