(ルチアーナ筆。)
完璧などと言う事は歌唱芸術に取って軽々に発してはいけない言葉なのかも知れない。しかし私は昨今ヨナス・カウフマンの歌う諸々のジャンル・レパートリーを聴いていて度々そう言いたくなる思いに駆られるのである。私も長らくレパートリーの中心に置いていたプッチーニ然りヴェルディ然り、私はあまり関わりたくないがやはりドイツの歌手である以上重要なレパートリーとしてのワーグナー、フランスオペラの名作「ウェルテル」、「ファウスト」。レクイエムのソリストから第九まで【何んでもござれ!】のその歌いっぷり…!尋常ではない驚異の歌声。そしてその全てが文句の付けようのない見事な出来映えなのであるから、これを持ってやはり完璧と言わざるを得ない。容姿端麗にしてその歌声は絶妙にコントロールされ、重厚で気品に満ちた響きと表現力のバランスは今まさに世界最高水準にある空前の名唱を生み出す。三大テノールの全盛期が過ぎて久しいが、今世界のオペラ界は偏にヨナス・カウフマンに委ねられていると言っても過言ではあるまい。それ程までに彼の歌声は素晴らしい。中低音の響きはバリトンなみの厚みと柔軟性を併せ持ち、その高音はこれこそまさにテノールとして面目躍如たる華々しい輝きに溢れている。【極限の美声】とはこれを指す!。パヴァロッティ亡き後天はカウフマンによって再び孤高の歌唱芸術を我々に与えてくれたのかと思うばかりだ。有り余るほど多岐に渡る名唱はYouTubeの中にも今溢れている。まさにこれこそ本物の【歌】である。カウフマンを聴かずして【歌】が上手いの下手だのとくだらぬ事を論じても意味はない。【パーフェクトボイス】の持ち主ヨナス・カウフマン!。【神が与えし奇跡の声】を駆使してこの世の【美】を体現して見せるヨナス・カウフマン。私はこの名歌手の全盛期の只中に生き同じく呼吸をしていると言うだけで幸運であると思えてならない。それ程までに彼の存在そのものが素晴らしいのだ!。彼の話をすると如何しても言葉に熱を帯びる。お許しを願いたい!。