仮面の中のアリア”。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

映画「仮面の中のアリア」を
ご存じだろうか?。
実は何を隠そう、この映画は
私が昨年このブログ内で
書き綴った小説「白鳥の歌」の
発想を得るに至る過程で
最も影響を受けた作品なので
ある。この作品は
ベルギー生まれの
世界的バリトン歌手、
ホセ・ヴァン・ダムが主人公の
Jを演じ、(Jはこの映画の中でも
オペラ歌手と言う設定)
ヨーロピアンビスタと言う画角の
スクリーンに淡く半透明な風景と
柔らかい色調を網羅した格調高い
芸術的映像を展開、心に染み入る
運命と慈愛の物語を
最高の歌と演技で我々の前に
披歴してくれた切なくも、
限りなく美しい物語なのである。
【限りない尊敬を集め今や絶頂期に
あるオペラ歌手Jはある日
突然リサイタルの終演直前に唐突に
今日を持って現役を引退、二度と
公の場で歌う事はないと宣言する。
勿論、世間は騒然となり諸々の
臆測を呼ぶのだが実は彼は
この時既に人知れぬ死の病に
侵されており余命幾ばくもない
死の淵に立たされていたのである。
彼はそれを世間に対して
ひた隠しにし、その後最後の
役目として若い男女二人の歌い手を
残された命と駆け引きをする様な
毎日の中、育て上げて行く
のである。日々厳しく…。
そして、かつてJとライバル関係に
あった富豪が自らの主催で開く
コンペティションへJの弟子二人を
招待参加させる様、要請してきた
のを受け、これに二人を
参加させる。馬車に乗っての
長旅の果て、会場へとJは二人を
送り届けるとそのまま降車する
事もなく、勿論
そのコンペティションの結果を
聞く事もなく帰車の人となるので
ある。コンペティションでは
富豪自身が育てた優秀な
歌い手が時の勢いに任せて
優勝候補の筆頭と目されていた。
しかもそれは富豪が若き頃Jとの
歌合戦で負けた事への意趣返しの
目論見でもあったのだ。
Jの弟子と富豪の弟子は
互いに大変類似する声であった
事から、聴き手に最後まで
どちらが歌っているのか、
分からぬ様、同じ仮面を身に付け
一つのアリアをワンフレーズづつ
歌い綴って行く。歌による決闘だ。
ひとしきり曲が進み、
クライマックス、最高音に
差し掛かったその時、片方の声が
波状したのだ。何度繰り返しても
歌えない。負けを悟り
彼はそのまま退場する。
次の瞬間だ。もう片方が
見事そのフレーズを歌い切った。
それてかぶっていた仮面を
一瞬にして脱ぐい去る…!っと
そこにはJの弟子である青年の
晴れやかな姿が、浮かびあがる
のだった。完全なる勝利。富豪は
またしてもJの軍門に下る事と
なったのである。喜び会う
Jの弟子二人。その頃時を一にして
自宅のソファーに身を委ねていた
Jのその手にあったティーカップは
彼の手から崩れる様に放たれ
同時にJは永遠の旅路へと
神の思し召しにより旅立つので
あった。】
映画「仮面の中のアリア」は私の
つたないながらも精魂込めた
小説「白鳥の歌」の原点である。
メジャーな作品とは必ずしも
言い難いが、この作品の
映像美は実に見事である。
どうか機会を得てご鑑賞願いたい。
さて、私はこれからの日々
今、筆を止めている
「愛のセレナーデ」
&「ミューズの声」の継続構想を
行っていく。リサイタルの為の
練習。レッスン生の指導。年度末
から新年度当初にかけて
やる事が目白押しだが
何とか頑張らねば…!。
そんな事を考えながら今回は
これにて筆を置かせて頂く。
(ルチアーナ筆。)