白鳥の歌”出会い・そして修練の時13。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

私(市澤)「いや~!。驚いたな~。
昨日会って、もう連絡をくれるなんて思ってもみなかったよ。何…!またすぐにでもライヴがあるの?」私は昨夜、横浜で出会った清純な二人組NooNMoooNからの電話についつい大人気なく浮かれてしまった。電話口がNoiくんなのかMyuくんなのかも分からずに…。彼女達の方がよほど冷静だった。「いえいえ、あのその前にお聞きしたいのですけど今、お電話口は市澤陸奥先生ですか?」硬い表情の声だ。私は一応、平常心に立ち返り静かに答えた。「まあ~君達に先生と呼ばれる程ではないけれども市澤陸奥である事は間違いないよ。」「やっぱり…。そうですか!いや、実は私達昨日あれから先生の事何か普通の人とは違うね…なんて思いながら帰って、ネットで頂いた名刺と住所から色々調べさせてもらったんですよ。そうしたらクラシカル・アカデミーで情報がヒットしてさっきの人が実は凄い歌手の方なんだな~と分かったんです。NoonMooonにとって最大、最高の巡り会いだね~なんて言いながら…。でもやっぱりこれは直接確かめるしかないな~何んて思って今日、電話をさせてもらいました。ちょっといいですか?相方と代わりますので…。」「もしもし、昨日はありがとう御座いました。何か私達何にも知らなくてすみませんでした。でも何だか先生…引退されたんですか?」「そう、ちょっと事情があってね…。仕方なく。」私はそう答えそばにいるサヤに病の事がこれ以上伝わらぬ様、配慮しながら彼女達との話に暫し興じた。そして彼女達にこう告げた。「どう!もし良ければ近々私の家に遊びに来なさいよ。色々興味深々な事に接する事が出来るかもしれないし…。っとまあ、私が言うのも可笑しいけれどね。」そしてもう一つ2人には私が渡したその名刺の記載住所、電話番号など全てを決して他人に漏らさぬ様、念を押して頼みこんだ。2人はその件を固く約束してくれ、私の屋敷への招待を心よく受けてくれた。NoonMooonの2人は明後日、昼、私の屋敷の最寄り駅まで来る。それを村田さんにリムジンで迎えにいってもらう。そして我が家へ…。その様に手配する旨、彼女達にも伝えてひとまず電話を切ったのだった。先程話は終わったと言ったがサヤへはまだ、若干だが聞く事が残っていた。又、肝に銘じてもらわなくてはならない事もある。話は最後の詰めである。それで今度こそ終りだ。いや、私の方がそれで終わりにして欲しいと思っているくらいだ。私も妻も今はまだ粗野で世間知らずなこの娘に何でこれ程かた入れしようと思ったのかよく分からないでいるのだが、
恐らくそれは人間社会が織り成す考えられない、想像も出来ない程の誠のドラマの一端を垣間見ている瞬間に立たされているということなのだろう。
本当にまだ数日、サヤとは関わったに過ぎないが私達夫婦は今やもうこの娘なしでの毎日を考える事は出来ないでいる。日々これから起こる一つ一つの出来事をどう乗り越える…!。私にとっても、いや私達夫婦、村田夫婦、そして何よりサヤ本人も含めてこれからの毎日が真剣勝負なのだろう。限られた時間の中で…!。そう考えざるを得ないのだ…。さあ~話の続きだ。私(市澤)「サヤちゃん、もう一度、座り直して…。」
(続く。)
ルチアーナ作