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3日目の最後に訪れたのが深センで電子機器の製造を行うJENESIS。社長の藤岡さんは製造現場からの叩きあげで、十数年深センで製造業に携わり、最終的に自分の会社を起業しました。黎明期からCEREVO製品の製造をし、昨年オープンしたDMM.make AKIBAのメンターを務めたり、独自でハードウェアスタートアップの支援をしたりと、業界内での知名度・存在感が増している会社です。
■工場の生産ライン見学!
オフィスは深セン中心街から地下鉄で20分くらいの場所にあり、入居しているビルの同一フロアで組み立てラインを構築していました。タブレット端末の組立を行っていた生産ラインを見学させてもらいました。日本向けの製品を扱っているため、品質管理は日本と同じレベルで行われていました。部屋は清潔で、生産ラインにホコリが入らないように見学者は帽子、制服を着用で、部屋の中は静電対策で加湿器で加湿され、エージングを行う部屋や環境試験用の恒温槽もあり、振動試験機も稼働していました。検品も抜き取りでなく全数チェックをおこなっているとのことです。
生産ラインの見学後、社長の藤岡さんからお話を伺いました。
最近、知名度上昇中のJENESISですが、ここまでの道のりの平坦ではなかったとのこと。創業初期は自前の工場を持っていなかったため他の工場に間借りしていたらしいのですが、急ぎの受注などをこなす必要があるときに融通が効かせられなかったり、尖閣諸島問題の時には日本向けの製品の生産は断られるようになったりとかなり苦労をされたそうです。そこで自前の工場を持ち、自社の社員を雇用するようにしたとのこと。仕事も最初は組立のみの受託だけでしたが、現在はODM(設計~製造まで含めた他社ブランド製品)開発)まで受けられるようになりました。手がけた製品が自社ブランドから他社ブランドのものまで、壁際の棚に所せましと並べられており、その数の多さが豊富な経験とこれまでの道のりの長さを語っているようでした。
■中国・深センでの製造業について
中国人は国民性として工場労働にあまり向いておらず、日本人でもそうであるように、若い人は美容室やホテルのような華やかな場所で仕事がしたいと思っている。だから、テクノセンターでも聞いたように労働者をあつめて、定着させるのは難しいようだ。春節になれば、よくも悪くも人間関係がリセットされる。田舎で結婚する人もいれば、都会暮らしが嫌になって戻ってこない人もいるし、別の都市に行くことにする人もいるとのこと。
中国の役人の汚職が日本でも話題になることがありますが、事業を行う上で役所との付き合いがあります。監査に来た役人のチェックには、日本企業だから厳しめにチェックされているのではないかと思うこともあるそうです。他の多くの工場も導入していない設備の不備を指摘されて、担当の役人から見積りの高めな設備業者を"ご紹介"されたり。
中国の工場も、日本の仕事はあまり受けたがらないそうです。日本のメーカーが中国人に煙たがれる理由として、要求が厳しく品質に対してなかなかOKを出さないだけでなく、ゴールを作らず何度でもやり直しさせるからということです。そして、その態度が偉そうだということもあります。これについては、僕もメーカーにいた時の経験として頷ける部分があるし、反省しなくてはいけないところでした。外注先の部品メーカーに無理を言ったこともあったな、、、と後に受託開発をするようになって気づきました。
もちろん品質が十分でないというのはあると思いますが、製造業のヒエラルキーの頂点にいるメーカーほど外注や下請け先メーカーに対して、傲慢な部分があると思います。大手のメーカーにいれば複数の部品メーカーから商品の提案や営業をうけるのが自然で、それら部品メーカーの方は客である大手メーカに下手に出て対応します。日本のメーカーの多くはその状態に慣れきってしまっているため、態度が横柄になりがちです。
これは、どんな価格のサービスに対しても高品質が当たり前だと思っている日本人の悪癖とも言えるかもしれません。藤岡さんが言っていた、袖の下を要求する中国の役人よりも要求が厳しすぎる日本の量販店のほうがよっぽどヤクザだ!、というのは一番笑ったポイントでしたが、仕事を受けてくれている(サービスを提供してくれている)相手への感謝というのは忘れてはいけないですね。
■ハードウェアスタートアップについて
JENESISはハードウェアスタートアップの支援を標榜しています。その内容はアイデアをホワイトボードに書くというところから製造までとのことです。ただし、やはり本当にアイデアだけではなく、ブレッドボード剥き出しでもいいから動くプロトタイプまで作成してきてくれれると話は早いらしいです。CAD、ガーバーデーター、部品表を提出すればそれなりの精度で見積もりも可能。実装する機能やコストダウンになど設計・製造・調達などの相談も受けてくれて、CEREVOの場合は製品の筐体を樹脂から板金に変更してコストダウンしたとのこと。ロットは1000個~の生産を請け負っており、単価が1000円、2000円と低くても1000個以上であれば基本的には仕事を受けるとのこと。そのかわり、もし大きく成長しそうであれば、その時もJENESISに発注をくれればよいということです。
製品開発について、スタートアップが製品そのものだけで勝負するのは難しい。サービスを含めた部分で勝負する必要があると言っていました。ハードウェアの機能を決めているのはほとんどSoCだと言えます。大企業のようにカスタマイズしたSoCを開発するような資本力・技術力のないスタートアップは、安い汎用品を使用するしかありません。そうすると当然、ハードウェアでできることを他社と差別化することが難しくなります。そこで、サービスやコンテンツを含めたソフトウェアで差別化を図らなければなりません。
IoTが盛り上がっているのも、ハードウェア開発、サービスの開発の両方のハードルが下がったからです。実際に製品をリリースしている多くのハードウェアスタートアップも、ハードウェア以上にソフトウェアやサービスの開発にリソースを投入しています。CEREVOも初期は社員はサーバーサイドのエンジニアしかおらず、最初の製品にはサーバー側の構築によりお金が必要だったらしいし、バンド型の玩具のMoffも、ハードウェア自体よりセンシングしたデータの処理やアプリの開発のほうがより重要だったと言っていました。
最初からハードウェアありきで商品開発するのではなく、何かをセンシングしたり、物理的フィードバックすることによって問題解決できるからハードウェアも開発するのというのがベターなんだと思いました。
■まとめ
■まとめ
JENESISが行っている支援はハードウェアスタートアップにとって本当に助けになるものだと思いました。特に日本向けの製品の開発を考えている人にとっては、これまで多くの日本向け製品を手掛けてきた実績からも安心して仕事を依頼できるのではないかと思います。非常にお忙しい中、様々な話題について話をしてくれたJENESIS藤岡さん、ありがとうございました。
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