さっきのカウンター。
跳ね返され、シュートにもいけなかった攻撃だったが、ミスなく慌てることもなくスムーズにクロスまでいけていた。
小さなことだが、今の讃岐には「自分たちの最適なスピードで攻撃ができた」という点では非常に重要なシーンだったと思う。
そして、そのシーンは再びこの直後に現れる。
セカンドボールを回収した宗近慧から、下りてきたVO前川大河を経由してボールは左SB深港壮一郎へ。
ここに岐阜のSH河波櫻士が激しくプレスをかけてきたが、なんとか振り払い宗近慧とパス交換。
ムネチはゆっくりドリブルで持ち上がり、何かをみつけたかのように優しく届けるような浮き球のパス。
その先に川西翔太がいて、ふわっと飛び上がり胸トラップで丁寧に落とす。
これを拾った吉田源太郎は辺りを見渡すようにぐるりと反転したかと思うと鋭くターンして動き出す!
抑えにいこうとする岐阜勢を嘲笑うかのように鋭い縦パスを川西翔太に刺す!
川西翔太はこれを受け、ダイレクトには返さずワンテンポずらして「ポン。」と置くようなヒールパス。
直進する吉田源太郎のコースにピタリと合わせた!
斬りつけるドリブルサイボーグ!
「いけぇーーー!やったれ げんたろー!!」
讃岐サイドのボルテージが上がっていく。
すると…
「えっ………!?」
吉田源太郎が…
スルーパスを放つ!?
絶妙なボールタッチでトラップしたのは冨永虹七!
そして美しい軌道で放たれたコントロールショットがネットを揺らたぁーーーっ!!
讃岐が再び追いつく!!
湧き上がる讃岐のゴール裏とは対照的にニコリともせず淡々とポジションに戻るレジェンドキラー!
今季もまた讃岐のレジェンドたちが刻んだ記録を塗り替え、消し去っていくニーナの旅が始まった!
これが米山体制となって初めての3得点。
昨季が僅か29得点だから、1試合で10%超の得点を奪ったことになる(笑)。
そしてこのゴールこそ、「相手にとって意外でこちらにとって狙い通りのゴール」の一つではないだろうか。
また、川西翔太の胸トラップから吉田源太郎がドリブルで動き出してスピードアップしたこの攻撃は自分たちでプレースピードを制御できていた。
大袈裟かもしれないが、今の讃岐が提供できる最高級の攻撃&ゴールだったのかもしれない。
このゴールが完成したことに少し衝撃を感じた。
一方で昨季はリーグ2番目に失点の少なかった岐阜はまさかの3失点。
上野体制2年目のなかで、3失点以上を喫したのは38試合で僅かに1試合だった(第32節のH奈良戦で3失点)。
その後、互いに背後を取り合うカウンターの応酬のような展開が続くなか、讃岐は冨永虹七が河波櫻士からファウルを受けてFKを獲得。
いい位置でのFKを前川大河が蹴る。
飛び込んだのは冨永虹七ーーーっ!!
またもレジェンドキラーが記録を消し去る!?
クラブ史上初の3度目の複数得点かあ!?
しかしニーナ得意のヘディングシュートは僅かに枠の外。
あああぁぁぁ…
ザワつきが止まらない長良川競技場。
ここで上野監督は嫌な流れを変えるべくカードを切る。
【岐阜②】
16 西谷亮 → 6 北龍磨
11 藤岡浩介 → 24 粟飯原尚平
まずVOをボール奪取能力の高い北に変更。
さらにエース藤岡浩介に代えてパワー系のFW粟飯原尚平を送り込む決断を下す。
その直後、岐阜は粟飯原が岩本和希からファウルを受けてFKを獲得。文仁柱、庄司悦大、荒木大吾らが左サイドをうまく繋いで縫うように前進する。
荒木が浮き球のパスを出すと山内寛史がフリック、粟飯原からダイレクトパスを受けて流れてきていたVOの北龍磨が左サイドを突破する!
北がマイナス気味のパスを出すと、受け取ったのは美濃のフッキ!
粟飯原尚平のシュートっ!!
死角になっていた今村勇介は反応しきれず撃ち抜かれてしまう…
恐るべし上野采配、ズバリ。
うー…痛恨の失点。
しかし!二度あることは三度ある!
こんなんで諦めるかよ、この野郎!!
讃岐も交代枠を使用。
【讃岐②】
18 冨永虹七 → 19 赤星魁麻
13 前川大河 → 7 江口直生
さらに89分という時間帯で選手交代。
中盤でチームをしっかり支えた岩本和希を下げて森勇人を投入。これは賭けに出る意思表示か!?
【讃岐③】
15 岩本和希 → 8 森勇人
試合はアディショナルタイムに突入。
残り時間は後4分!
92分あたり、自陣の深い位置でFKを得た讃岐。
気を抜かず守りを固めてほしいという警戒の非常ベル代わりか、上野監督は奮闘してきた文仁柱を下げて萩野滉大を送り込む。
【岐阜③】
22 文仁柱 → 23 萩野滉大
今村勇介が自慢のキック力を活かして相手陣内へと蹴り込む。
勢いよく弾き出されたボールを赤星魁麻と岐阜の選手たちが競り合う。
こぼれたボールを奪ったのは吉田源太郎!
彼の右側にスペースがある…!
そこを使ってドリブルで仕掛けていくドリブルサイボーグ!
そして渾身のシュートを放った!
ゴール裏から見るその弾道は速く、鋭く、スライス回転でゴールマウスの右上を襲う!
ぬあぁぁぁ…
僅かに上、無情にもバーを越えていった。
試合が終わる。
激しい撃ち合いを制し、長良川は歓喜に沸くのかと思いきや、安堵の空気に包まれていた。
(やっと振り切った…)
そんな想いであったか。
米山体制初の3得点は良かったが、一方で同体制ワーストタイの4失点も記録している。
そして何より…
3試合で勝ち点2という現実を突きつけられた。
米山体制で初めて試合数より勝ち点が下回ったのだ。
今はまだ12位に位置してはいるが、このペースは残留ペースを下回っているという現実。
もうまごついていられない。
積み上げたもので成果を出すタームへと進んでもらいたい!