長い事讃岐の試合は観てきたが、ちょっと珍しいタイプの試合内容だった。
至るところで一騎討ちのシーンが繰り広げられる、まるで戦国時代を題材にしたドラマの戦のシーンを見るような闘いだった。
鹿児島は比較的いい試合の入りをしていたように思う。
ちょっと意外だったのは讃岐の最終ラインの背後を狙うようなボールを多用していたこと。
どちらかというと讃岐が選択しそうな攻め方だった。
いつもなら鹿児島はサイドからボールを動かしていく。
右からだと周りとの連携を活かしながら右サイドハーフの五領淳樹がペナルティエリアへの侵入を図る。
左サイドから動かす際には薩川淳貴が軸となる。得意のクロスを軸にドリブル突破やスルーパスなど多彩な攻撃を見せてくる。
もちろんそうしたシーンはこの試合でもいくつか見られた。しかし「これは鹿児島らしい攻撃」と呼べるほど強調されたものではなかったように思う。
それは讃岐の闘い方に影響があったのかもしれない。
讃岐は鹿児島の要所を抑え込みにかかる。
2トップに起用された鳥飼椋平と森本ヒマンは最終ラインに下りてくるボランチの木村祐志とセンターバックでDFリーダーの広瀬健太から有効なパスを出させないようコースを消しながらプレスをかけていく。
鹿児島のストロングポイントについてはマンマーク気味に対応。
右サイドハーフの五領淳樹には森勇人が、左サイドバックの薩川淳貴には川﨑一輝が積極的に寄せていく。
特に現地でのコメントにもあったように、
「（vs薩川淳貴は）試合前からバチバチでいくつもりだった」（川﨑一輝）
と、その執拗な対応のせいで、
「明確に5バックにしたわけではないんですが、相手もサイドバックの選手が非常に攻撃的に来るチームで、それを見て川﨑選手がポジションをひとつ落として対応する形になっていました。選手たちが自然と対応してくれていたので、そのまま見ていました」（試合後の米山監督）
一見5バックかと錯覚するほど、一輝は さっつーを追いかけていた。
また、ちょっと不思議な感じがしたのは「合わせ鏡」でも見ているように互いに同じようなシーンが交互に訪れたこと。
これは単なる偶然だと思うが、こんなこともちょっと珍しい。
11分、CB戸根一誓から山本駿亮への縦パスをカットした金井貢史。
こぼれ球を森本ヒマンが回収し左に開いた鳥飼椋平へ展開。トリからいいスルーパス！
これに森勇人が抜け出しそうになっていたがオフサイドの判定。
この直後に最終ラインから繋いだ鹿児島は下りてきた五領淳樹からの縦パスを受けた鈴木翔大が後方に流す。
これを受けた星広太がアーリークロス、抜け出したのは薩川淳貴だったが、これもオフサイドの判定だった。
25分にはこぼれ球を拾った川﨑一輝が思い切ってロングシュートを狙ってみたが枠の外。
対して鹿児島は五領淳樹が森勇人に倒されて深い位置からのフリーキックを獲得。
木村祐志がボールを蹴ると長谷川隼がヘッドでクリア。
しかしこのこぼれ球に後方から突進してくる影がある…！
薩川淳貴だぁぁぁ～！！
薩川渾身のミドル砲は大きく枠を外してしまう。
そんな合わせ鏡の攻防の中、突如として試合が動く。
鹿児島は最終ラインからの"兵站"を断たれてしまったからか、右サイドバックの星広太が中に絞ってボランチ的な役割…いわゆる「偽サイドバック」的な動きで組み立てようとする。
この動きに対して讃岐は星広太のいるサイドから攻勢を強める。
このあたりの攻防は見応えがあった。
讃岐は左サイドバック臼井貫太のスルーパスに森本ヒマンが反応！
ヒマンが抜け出す………！？
速い！！
しかし対応にあたった広瀬健太もJ3屈指のセンターバック。しぶとくヒマンに絡みつき、ヒマンのグラウンダーのクロスをカットしてみせた。
それでも讃岐はこのプレーでコーナーキックを獲得する。
左からのコーナーを江口直生が蹴る。
…ニアサイドだ！
この位置にいた金井貢史が受けてペナルティエリア内で浮き球のパスを放つ。
これを山本駿亮が懸命にヘッドで掻き出すが、川﨑一輝がヘッドで押し返す。
このボールを森本ヒマンがヘッドで後方に戻すと、
森勇人が優しく丁寧に、
「ささ、どうぞ」
と親切心の塊のようなパスを川崎一輝に落としてみせた。
ワントラップした讃岐の貴公子、その右足の聖剣デュランダル一閃！！
ゴ………
ゴ………
ゴラッソだあああぁぁぁーーーっ！！
やったやったーーーっ！！
先制は讃岐！
全身全霊川﨑一輝、讃岐の未来を変える快進撃の扉開くスーペルゴラッソ！！
ゴラッソ王子の面目躍如！！
何もかも変わり始めるーっ！！
鳥取戦で2ゴール決めながら奏でられなかったGet Goal チャントが鳴り響く！！
まるで3倍増しの大音量！！
これぞメロディーフラッグだ！！
このゴールの後くらいから、讃岐は攻撃に変化が見られた。
相手のプレスをいなしつつボールを繋ぎ、スペースをみつけてはスルーパスを発射していく。
これに2トップの森本ヒマンと鳥飼椋平が反応し、鹿児島の最終ラインを破壊しにいく。
ヒマンは持ち前の身体の強さだけでなく、あの巨体からは想像しづらいスピードでブチ抜こうとする。
トリは身体の使い方が上手く、相手にプレスに屈しない。こちらもスピードは備えている。
何とか鹿児島は抗戦してみせたが、ヒマンに最終ラインは押し下げられ、トリをうまく捕まえきれず。
讃岐の変化に翻弄されていた。
＜つづく＞
※読みやすさを考慮して、選手名は敬称略としました。ご了承ください。
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