音楽館のネタを書きながらあの日の試合を思い出していました。
2018年。まだ讃岐がJ2にいた頃の話。
この年、移籍の目玉となったのが佐々木匠という若者でした。
地元クラブのベガルタ仙台でデビューすると、そのオフにはオランダのユトレヒトからオファーが届いた逸材。
その後、徳島ヴォルティスに武者修行を経て讃岐に加入することになったのです。
軽やかなボールタッチから繰り出されるドリブルやパス、そして広い視野。当初はその実力に半信半疑だった讃岐のサポーターたちはたった一度のトレーニングマッチで彼の虜になりました。
美しく軽やかなプレーに、
(まるで牛若丸のようだ…)
と感じました。
ただ、牛若丸はあまりにも使い古された形容だし、まだ甘さも垣間見える匠クンのイメージとは若干ギャップがありました。
そこで源義経の幼名「遮那王」にあやかって、このブログでは「蒼の遮那王」と名づけて応援していました。
なんとなく、
「鞍馬山の天狗が武芸を仕込んだ」
という逸話に北野さんが重なる気もしてましたしね(笑)。
北野さんに鍛えられながら、匠クンはガンガン試合に出てチカラをつけていきました。
奇しくもJ初ゴールは愛媛FC戦でした。
その後、チームを牽引する存在になっていった匠クン。この年讃岐の総得点は28でしたが、そのうち13ゴールに匠クンが関与しています(4ゴール9アシスト)。
そんな遮那王の台頭と反比例するようにチームは低迷していました。
本当に長く、そして苦しい一年でした。
2017年オフに大量に選手が引き抜きや退団に遭いチームの構築に時間がかかっていた印象。
そして後に明らかになったことですが、当時監督を務めていた北野さんは癌を患いながらリーグを闘っていました。
そのような状態でチームマネジメントが充分に行えるはずもなく、チームは混乱を来たして不協和音が聞こえるようになっていました。
そんななか迎えた2018年10月31日。
水曜日開催の公式戦。天候不順で中止となった第35節を組み込んだ強行スケジュール。
讃岐は引き分け以下で自動残留の可能性が消滅してしまう状況でした。
満身創痍の讃岐は主力の木島徹也や永田亮太をはじめ多くの選手を怪我で欠く非常事態。
さらにこの試合で荒堀謙次まで故障で失うことに…
絶体絶命の大ピンチ。それでも讃岐は必死にゴールを守りながら反撃の刻を待っていました。
そこで先制のゴールを決めたのが佐々木匠でした。
一目散にサポーターの元へと駆け寄ってくれた匠クンを観て、
「奇跡が起こるのかも…!」
そう期待感が高まりました。
しかし讃岐は試合終盤に痛恨の失点。
この瞬間、ピカスタから音が消えました。
負けてはいない。
しかし勝たなくてはいけない試合。
讃岐はこの時点で残り3試合をすべて勝っても自動降格圏から抜け出すことができず、J3リーグの結果次第でクビが繋がるかどうか…という状況に陥りました。
サポーターは最後の力を振り絞るように挨拶にくる選手たちにチャントを奏でて励まし、讃岐のことを深く愛してくれた渡邉大剛はこの結果に泣き崩れたと言います。
この試合で全勢力を使い果たしたように讃岐は残り3試合を全敗してJ3へと降格しました。
佐々木匠選手は武者修行先をレノファ山口に変え、活躍した後ベガルタへと復帰します。
しかしベガルタでは充分に出場機会を得ることができませんでした。
東北の地から阿波を経て屋島で暴れ、そして壇ノ浦で舞った遮那王。
しかし故郷での凱旋を許されなかった。
まるで遮那王の足跡を辿るかのような数奇な運命。
そして匠クンが「第2の故郷」と慕う讃岐からオファーは遂に届きませんでした。
そして2022年7月17日、遂に讃岐は佐々木匠と対峙することになったのです…。
何と数奇な運命か…
☆三---………
蒼の遮那王は想像だにしていなかったシチュエーションでピカスタに帰ってきた。
J3の公式戦で、
我々と対峙するカタチで、
そしてあの愛媛FCの一員となって帰ってきたのだ。
もうあの頃を知るメンバーは重松健太郎と佐々木渉だけになってしまった。
しかし我々はそうじゃない。
スタメン発表の際、佐々木匠の名前がアナウンスされると万雷の拍手が鳴り響いた。
ちなみに重松健太郎のコールの際には愛媛サイドから拍手をいただいた。
今節のマッチアップはこちら。
"帰ってきた"のは蒼の遮那王だけではなかった。
岩本和希が2021年の第21節長野戦以来、約9ヶ月ぶりの電撃復帰!!
実は先週のトレーニング風景に「おや?」と思わせる写真があった。
(ちょっと復帰が早まるかも…)
という期待はあったが、まさか今節復帰とは…ともかく彼の復帰が早まったのは朗報。
しかし一方で不安なことも。
川﨑一輝の名前が消えていた。
まさか…
そしてどうやら布陣は3-5-2の様子。
遂に4年ぶりの北四国戦…いや、讃岐vs蒼の遮那王が始まった。
<つづく>
※読みやすさを考慮して、選手名は敬称略としました。ご了承ください。
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