2017年のオフは讃岐にとって、嵐のオフとなりました。
讃岐を離れたのは馬場賢治だけではありませんでした。
讃岐の心臓のような活躍を見せていた仲間隼斗。
北朝鮮代表の李栄直。
DFとして2017年に大ブレイクしたアラン。
こうした主力がごっそり抜けていく。
さらに讃岐の未来を担うと思われた砂森和也、松原修平もチームを去りました。
ちなみにスナくんは'18シーズンでJ3アシスト王になり、修平くんは群馬で正守護神となって、この年の活躍を認められてそのオフにJ1湘南へ「個人昇格」していきます。
さらにこれまでの讃岐を支えてきた木島良輔、山本翔平、大沢朋也、綱田大志、エブソンらが契約満了。
讃岐は現在・過去・未来の重要人物を失い、まさに地獄のようなオフでした。
重松健太郎、荒堀謙次、そして育成レンタルで"仙台の至宝"佐々木匠を獲得したものの、その他はJで全く実績のない若者ばかり。
彼ら若手の成長、そして残ってくれた主力選手がフル稼働しなければ残留すら難しい、そう感じていました。
そんななか、馬場ちゃんはブログでこんなこと語っていました。
「どうにか来年('18シーズン)はチームの主力になって活躍してほしいと、僕の想いを託したやつもいます」
それからしばらく経って、馬場ちゃんのつけていた11番をプロ4年目の森川裕基がつけると発表されました。
ここまで3シーズンで出場は僅か23試合。
失礼ながら、11番を背負うにはあまりにも役不足と見えました。
'18シーズンが開幕すると、讃岐は第2節で早々にシーズン初勝利をスコア。
しかし、そこから3連敗。
第5節では、これまで経験したことのない6失点を食らいました。
そんな最悪のシチュエーションで迎えた第6節。
ホームに大分トリニータを迎える。
遂に馬場賢治との直接対決。
全力で闘うことをモットーとする漢は容赦ありませんでした。
こぼれ球に素早く反応し、決勝弾を叩き込む。
讃岐は大分トリニータ…というより、感覚的には馬場賢治に敗れ去った。
試合後、挨拶に来てくれた馬場ちゃんだったが、わだかまりを隠せない讃岐サポの多くは冷ややかな反応。
拍手もまばらでした。
あたしも拍手と呼べないレベルの拍手(手を2、3回叩いただけ)しかできずにいました。
その後も低空飛行を続けてしまった讃岐は残留争いの主人公となり、一方の馬場ちゃんは大分の主力としてゴールを量産。出番も目に見えて増えて、チームも優勝を争う位置につけていきます。
苦境の讃岐でしたが、夏の補強で会心のファインプレーを見せました。
大分で出場機会を失っていた竹内彬を期限付き移籍で獲得すると発表したのです。
当時、大分でキャプテンを務めていた選手。
そして讃岐が欲しくて欲しくて、それでも手が出せなかった経験値と技術に富んだセンターバックの獲得でした。
チームを去る竹内キャプテンの後任が馬場ちゃんでした。
これは想像に過ぎませんが、互いの「引き継ぎ」は相当に濃いものだったに違いありません。
しかし讃岐は不調のままでした。
6試合連続無得点の地獄という、これまた最悪のシチュエーションで再び大分と対峙することになりました。
優勝での昇格に燃える大分と讃岐の差は歴然。
瞬く間に大分攻撃陣が讃岐へと襲い掛かりました。
その急先鋒こそ馬場賢治その人。
何度も何度も讃岐を救ってきた右のアウトサイドキックが讃岐のゴールネットを揺らしました。
ところが…
馬場ちゃんは喜ぶどころか、むしろ悲しげな表情を浮かべて祝福に駆けつけるチームメイトをいなしていました。
この試合の後でブログを更新した馬場ちゃんは苦しい胸の内を書き綴っています。
結局試合0-5の大敗。
大分はJ1へ。
讃岐はJ3へ。
加速度を増していくのでした…。
大分戦で実に7試合連続無得点。
讃岐に漂う降格の空気。
その危機のなかでモンテディオ山形との試合を迎えます。
やはり先制を許し、得点も入らず敗色濃厚。
そんななか、讃岐をATで救ったのは あの男でした。
後に、モリはこの試合後に馬場ちゃんから激励の連絡があったことを明かしています。
また…大分の選手のストーリーだったか、馬場ちゃんが映っていたことがありました。
讃岐の試合を観ていた馬場ちゃんは声をかけられると、
「讃岐、頑張ってくれ!マジで!頑張れ…!」
そんなことを言ってました。
その傍らの選手からは
「いっつも観てますもんね~」
とも。
見捨てられた訳じゃなかったのか…
あれから約1年近く経って、ようやくそのことに気づかされました。
そして迎えた第40節。
讃岐はここまで、永田亮太、木島徹也といった主力を怪我で失い、またこの試合で荒堀謙次も負傷交代。エースの原一樹もコンディションが上がらず、チームの中心にいた佐々木匠は出場はしていたものの手にも両膝にもガチガチのテーピング。満身創痍でした。
そんな状況で立ち上がったのが またしても11番を引き継いだモリでした。
縦横無尽にピッチを駆け回り、積極果敢にゴールを狙う。
その姿は、これまでの優柔不断で消極的なモリとはまるで別人でした。
しかし…
撃てども撃てどもゴールは決まらず。
痛恨のドロー。
讃岐はこの闘いで全精力を使い果たし、降格することになりました。
一方の馬場賢治は見事にキャリアハイの12ゴールでJ1昇格に大いに貢献してみせました。
有言実行、お見事でした。
闘いの場をJ3に移した讃岐ですが、そこで躍動したのは11番を受け継いだ森川裕基。そして馬場賢治の想いも背負って讃岐に来てキャプテンを務めている竹内彬でした。
この2シーズン、2人の奮闘ぶりは目を見張るものがありました。
想いは伝播する。
そう感じました。
馬場賢治という選手は、勝利を見せようとしていた訳でも、テクニックを見せようとしていた訳でもなかったんじゃないかと思うんです。
彼は自分の生き様を見せようと走っていたんだと思います。
その生き様の先に、積み上げてきた技術だったり、結果だったりがあっただけなんだ、と。
そんな馬場ちゃんが引退すると発表しました。
その報を聞いた時はさすがに驚きはしましたが、コメントを読んで腑に落ちました。
「馬場賢治選手 現役引退のお知らせ」
プレーしたいって全く燃えてこない
その言葉にすべて集約されているように思います。
第2の人生はどんな一歩を踏み出すのか。
まだ我々は、馬場ちゃんがどの方向に歩き出すのかを知りません。
でもまた"熱量"を以て道を切り拓いていくんだろうなと思います。全力プレーは彼のモットーですから。
讃岐を応援するようになって、
最も華麗なプレーを見せてくれた選手。
最も楽しい想いを提供してくれた選手。
![image](https://stat.ameba.jp/user_images/20171025/21/3c-skgs/55/aa/j/o0480026714056225677.jpg?caw=800)
そして…最も嫌った時期のあった選手。
でも、その優しさに気づかされた選手。
![image](https://stat.ameba.jp/user_images/20171025/21/3c-skgs/ff/6c/j/o0480036014056225690.jpg?caw=800)
ありがとう!The Artist!馬場賢治!!
※読みやすさを考慮して、選手名は敬称略としました。ご了承ください。
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