「サチ。サチーっ。」
しかし、浜辺に降り立ったリュウの前には、
さっきまで見えていたはずのサチの姿はどこにもなかった。
ただ、砂にまみれたサチのべべが波にさらわれ、
それを追うように、
光の玉も月夜の海に消えていったと。
「これにて、(浮草漫遊記)完結でござる。」
「おおっ、おっ。」
キクの嗚咽が聞こえた。
「サチ。サチーっ。」
しかし、浜辺に降り立ったリュウの前には、
さっきまで見えていたはずのサチの姿はどこにもなかった。
ただ、砂にまみれたサチのべべが波にさらわれ、
それを追うように、
光の玉も月夜の海に消えていったと。
「これにて、(浮草漫遊記)完結でござる。」
「おおっ、おっ。」
キクの嗚咽が聞こえた。
「な、何とおっしゃいます、キクどの。」
「順覧は僧の名を借りた邪悪な物怪だったのです。」
「キクどの。まだ迷うておられるのかっ。」
「お聞きなされサブどの。
二百年前、私が川に足をすくわれたのも、
順覧が助けたのも皆、仕組まれたこと。」
「……。」
「気を失うた私を陵辱し孕ませたのです。」
「ま、まさかっ。」
「順覧の物怪の末裔は、迷える女子の魂をたぶらかし、
その霊に子を生ませることで生き長らえてきました。」
「そして、その時のお子が…。
サブどの、あなたさまです。」
「な、何と。嘘じゃと言ってくだはりませ。」
「あのままでは、お子だけ取り上げられ私の魂は闇の中。
私は順覧にだまされたふりをして、
この黄泉(よみ)の入口に誘い出し、
順覧を捕らえ、あなたさまを人に預けたのです。」
「おらは夢を見ているにちげぇねぇ。」
「サブどの。しっかりとお聞きなさいませ。
あなたさまが、順覧を地獄の谷に落とさねばなりません。
あなたさまの手で、この結末をつけねばならないのですぞ。」
「おらに、父上である物怪を殺せとな。
それも母上の霊に命ぜられて。
何という残酷な…。」
つづく

