あるけど、ない。
「シカ注意」からのドライブ。
林間道路を抜け、江別市に。
ナビでは、次の三差路を左に。
えっちゃん、もちろん、ナビは見ない。
え「これ・・・左よね。」
M「左ですね。」
ハンドルを切りながら、指示器を。
えっちゃん、遅くない?
「えっ、そんなこと、ないでしょ。」
さすが自称安全運転&負けず嫌い。
まあ、いいか。
もうすぐえっちゃんの「庭」だし。
立命館が見えると、厚別区は、すぐそこ。
「はい、ここを左に曲がれば。」
えっちゃんのホームタウン。
厚別区なのね。
交差点を左折・・・しながら、突然。
「あっ、これこれ。」
両手は、ハンドルに。
目で左を見ろと。
えっ。
何なに?
建物もないし。
看板があるだけ。
えっ、この看板?
「残雪です。」
は?
「厚別の残雪です。」
・・・。
たしかに。
厚別区に入ったね。
だから、ただの残雪ではありません。
正真正銘「厚別の残雪」。
ニセコのパウダースノウもびっくり。
しっかり泥混じりのマーブルスノウ。
空港からここまで40km。
あらゆるところで、残雪を。
しかし、えっちゃんはサマーディ。
厚別産でなければ、残雪にあらず。
視界に入れど、見えていない。
「ある」けど「ない」。
厚別で初めてスイッチが。
空港で宣言したとおり。
「厚別の残雪」を私のために。
はい、えっちゃん。
しかと、この目に。
「じゃあ、お昼はこちらで。」
おっ、念願の『トリトン』。
北海道では有名な回転ずし屋さん。
「いらっしゃいませ~。」
あら、満席。
まだ12時前だけど。
さすが人気店。
「何名様ですか?」
3名です。
「では、こちらのタッチパネルを押してお待ちください。」
えっちゃん、お願いします。
「えっと、タッチするのね、タッチを。」
いかにもテキトー。
「あら、動かないわ。」
「押しても何もならないの。」
どうしましたか?
「タッチしたけど、何も起こらなくて。」
えっちゃん、どこ押しました?
「ここ」
それ、数字の「1」ですね。
「ええ」
私たちの人数は?
「3人です。」
じゃあ、「1」の下にね。
「+」と「ー」がありませんか?
「ありますね。」
その「+」を2回押してもらっていいですか?
「+を・・・2回・・・あっ。」
「3」になりましたね。
「はい、なりました。」
じゃあ、右下の「OK」を。
「はい・・・OKと。」
ほら、紙が出てきたでしょ。
受付番号とともに。
「あら、やだ。」
「やだ」じゃないですよ、「やだ」じゃ。
えっちゃん、ほんとに「タッチ」しただけでしょ。
画面の表示内容、見ないと。
岩崎良美もびっくりのタッチ、タッチ、ここにタッチ。
「〇番で受付のお客様~。」
おっ、来た来た。
「カウンター席にお願いしまーす。」
はい、ここね。
「じゃあ、お茶入れますね。」
私とMさんの湯呑みにも。
茶さじで、粉末を。
さすがえっちゃん。
お願いしまーす。
しかーし。
えっちゃんは、サマーディ。
いまを生きる人。
「あら、ニシンが入荷してるわ。」
いまが旬ですか?
「そう、この時期のニシンは、脂がのって・・・。」
お茶からニシンに、サマーディ。
熱く語るえっちゃん。
けど、手だけは動いている。
宇多田ヒカルもびっくりの”It’s automatic"。
「はい、どうぞ。」
あっ、どうも。
Mさん、飲んでみて。
どう?
「濃いです。」
だろうね。
ニシンを熱く語りながら。
手が勝手に動いてたからね。
さて、頂こうか。
M「割りばしって、どこですか?」
割りばし・・・あっ、ここ、ここ。
え「えっ、私の割りばしは?」
あれ?
お箸の入った紙袋がないね。
えっちゃんのお箸は・・・。
次の瞬間、衝撃の事実が。
えっちゃん、そこ見て。
もう紙袋から出して、
お箸割って、箸置きに。
それ、誰がやったの?
「あら、やだ。」
それ、おでこにメガネのせたまま、
「メガネ、どこ?」って探してる人と同じ。
えっちゃんは、サマーディ。
いまを生きる人。
ニシンを熱く語るうち。
自分でお箸を割ったこと、
きれいに忘れてる。
大黒摩季もびっくりの「ニシンだけ見つめてる」。
何という集中力。
何という切り替えの早さ。
ニワトリでさえ、
三歩歩くまでは覚えてるというのに。
しかーし。
お寿司は、大満足。
いやー、おいしかった。
やっぱり北海道。
海鮮のレベルが違う。
回転ずしで、これですか。
じゃあ、いよいよえっちゃん宅に。
「その前に、スーパーに寄ります。」
はいはい。
「えつこメシ」の食材ですね。
「かご持ち」として、おともします。
「あっ、さらに、その前に。」
どこ、行くの?
・・・そこでも、またサマーディ。
空港から、えっちゃん宅。
わずか90分のドライブ。
なのに第4話にして、まだ着かない。