<その102>続・似て非なるもの | まなブログ

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脈の変化でカラダの声を聴く『脈ナビ』による施術、セミナーをご案内しています。
大阪府堺市で鍼灸院を開業しています。
日々の気づきをつづります。

もっと炎を。




行ってまいりました。

Yさん宅です。

「Yさん」でピンと来られない方は、こちら をどうぞ。



トゥル ルルル~。


「おや、電話ですね。」


コードレスの子機を取る私。

素早くYさんに手渡します。



Yさんはね。

施術中だろうと関係ありません。

しっかり話されます(笑)


「あら、Tくん。」


I神社の神主さん。

Tさんだ。



Yたばこ店はね。

I神社の鳥居のすぐ横。


戦後から店を構え続けて65年。

歴代の宮司さんとも家族ぐるみ。


いつも食料供給を受けているので。

神主さん一同、Yさんにはね。

誰もアタマが上がりません。



しかも、Tさんはね。

一時期、Yさんの所有されるお部屋。

借りておられたんです。

つまり、大家さん。


30代半ばなんだけどね。

しょっちゅうYさんにこき・・・尽くされておられます。



私も過去のセミナーでね。

神社の関連施設をお借りした関係でね。

Tさんとは、顔なじみ。


「Yさん友の会」の幹部です(笑)



「じゃあ、取りに来てちょーだい。」



あら、終わった。

すぐに子機を戻されるYさん。



「Tさん、来られるんですか?」


「そう、フライパンを貸してほしいって。」



I神社は、由緒正しき官幣(かんぺい)大社。

お正月の来客もひっきりなし。


で、お料理自慢の氏子さんがね。

まかないで焼きそばを作ってくれると。


ところが、社務所にはフライパンがない。

で、「天下の台所」へ。



「先生、お願いがあるんですけど。」


「はい?」



Yさん宅のフライパンはね。

長年使いこまれてね。

イイ味が出ています。


で、もらいもののフライパンがね。

新品のまま、廊下に積み上げてると。


その箱を探し出してね。

Tさんに渡してくれと。


そのまま、進呈されるみたい。

さすがYさん。

気風がイイ。



Yさん宅の廊下脇。

お歳暮、お中元、意味不明の段ボール箱。

堆(うずたか)く積み上げられてます。


特に、低層はキケン。

ジュラ紀や白亜紀から放置されてます(笑)

通称『魔界の回廊(ラビリンス)』。



うわ~、どれかわからん。

いつもながらね。

その物量に圧倒されます。



「Yさ~ん」


「は~い」


「どんな箱に入ってるんですか~?」



ラビリンスにはね。

箱の中身を示すためでしょうか。

ガムテープにね。

「かんづめ」「洗剤」とか書いて貼っておられます。



「ああ、『ちんげんさい』って書いてます。」


「は?」


「だから『ち・ん・げ・ん・さ・い』って。」



えっ?

チンゲン菜?

なぜに?


フライパンで炒めようとされてたのか?

確かにYさんは、葉野菜が好物。



「ついでにチンゲン菜の絵も描いてましたよ。」



はっ?

チンゲン菜の絵?

なぜに、そこまで?


よっぽどチンゲン菜を炒めたかったのか?



まあ、いいや。

どこだ、どこだ?

見当たらないなあ~。


フライパンが入っているなら。

30cm×50cmくらいで。

厚さが10cmちょっとかな。


で、チンゲン菜の文字と絵が。



「漢字で書いてますよ~。」



チンゲン菜を漢字で?

「ゲン」ってどんな字だ?

まあ、「チン」は「青」だろね。


う~ん、それらしい特徴の箱が・・・ない。

どこなんだ?



探しているうちにTさんが。


「あっ、あけましておめでとうございます。」



新年の挨拶もそこそこに。

Tさんに事情を話します。



「では、私も一緒に。」



Tさんと二人で。

探索力も倍増。



「チンゲン菜、チンゲン菜・・・。」


「う~ん、ほんと見当たりませんね。」



ダメだ。

見つからない。

降参です。


居間に戻ってね。

イビキをかいてるYさんに。


「Yさん、Yさん。」


「・・・はっ?」



寝ボケて、目が「3」。



「フライパンの箱がね。」


「はあ」


「見当たらないんですけど。」



そんなことないわよ。

ちゃんとありますよ。

仕方がないわね~。


大の男二人がね。

探し物ひとつできないのかと。

重い腰をあげられるYさん。



「すいません。何度も探したつもりなんですが。」



平身低頭。

お詫びするだけ。


魔界の主。

直々にラビリンスへ。



「・・・ほら、ここにあるじゃない。」



はっ?

えっ、それ?


いや、確かにありましたよ。

でも、箱の側面に何も貼ってないし。


しかも、厚みが30cmぐらいあってね。

フライパンにしては、デカすぎるし。



一体、どういうことだ。

はやる気持ちを抑えつつ。


テトリスを崩すように慎重に。

上の箱を脇に降ろします。



・・・ハッ、こ、これは!






『陳建一の中華鍋』



ではないか。



チンゲン菜・・・ちんけんいち。


全然違うし。



そもそも、中華鍋でしょ、これ。

分厚いはずだ。



しかも、絵って。

陳建一じゃないか。


勝ち誇ったようにほくそ笑む彼。

完膚無きまでの敗北感。



「ほら、ちゃんとあるじゃないですか。」


「・・・すいません。」



云いたいことは、のど元まで来てます。

しかし、口に出してはイケません。

素直に謝っておかないと。


帰宅時間がね。

確実に30分は遅くなります。



Tさんと目が合います。

諦観したピュアな眼差し。


すべてを受け容れた寂しげなほほ笑み。

ドナドナで市場に売られる仔牛のように。


荷馬車以上にココロも揺れます。


さすが神さまに仕えるTさん。

できた方です。



そう、Yさんはお試しになられたのです。


経絡ストレッチだなんだと。

意識を手放そうなんて云ってるけど。


ホントに解放されてるのかと。

年頭に私の決意のほどを。



フライパンも中華鍋もね。

似たようなもんです。


セドリックとグロリアみたいなもの。


「良い加減」を愉しみなさいと。

Yさんの教えや深し。




凍てつく夜空。

さんざめくオリオン。


ふとよぎる一抹の不安。



果たして、社務所にあるのだろうか?



中華鍋が使えるような火力が・・・。




-つづく-