苦労を惜しまず、献身的に人間の命を救った動物は
犬やイルカだけではない。
1975年フィリピンのマニラ沖で
ある船が難破し沈没した。
その時に海に流された女性は
大きなカメが自分に
手を差し伸べようとするかのように
泳いでくるのを見て仰天した。
彼女がもがきながらも
なんとかカメの背に乗ると
カメは普段決してとらない行動にでた
ウミガメはほとんどの時間を海中で過ごすが
彼女を乗せたカメは丸二日間
何も食べずに水面を泳ぎ続けたのである。
おかげで女性は死なずにすんだ。
このカメは、人間は海のなかでは
生きられないということを知っていたのだろう。
それに彼女の命をどうしても
助けたかったに違いない。
ようやく救助隊が現れた時
「目撃者は、女性が無事助けられるまで
彼女が石油缶の上に乗っていると思っていた。
その”ドラム缶”はその場で二回、円を描いて消えた」という。

ドラム缶に間違われる事は
カメにとってさほど
驚く事ではなかったのかもしれない。
なぜなら、アメリカでは
長いあいだ法律上動物とは
見とれられていなかったからだ。
人は、少しでも枠から外れているものは
なかなか認められない。
動物が、私たちが知るたぐいの知性を
示さないというだけで
その動物を愚かだと決めつけるのは
本当に愚かな行為だと思う。
-動物を愚かだと決めるのは、人間のうぬぼれであり
まったくの見当違いである。
人間はおのれの知覚の鈍さゆえに
動物の賢さを理解できないのだ。-
マーク・トゥエイン