自称霊感持ちの山田くん(仮名) が
面白い話を持って来た
かぶら島の洞穴で
深夜 女の笑い声がする
読経が聞こえる
そんな噂がある
みんなで確かめに行こう と
僕達はすぐに乗り気になり
早速今夜、決行だ
となった
ひと晩過ごせるだけの
水や食糧を準備して
原付に打ち跨って出発した
島 と言っても
海岸に突き出た小さな岩山だ
潮が引くとなんとか渡れるが
満ち潮になれば
陸とは完全に切り離される
僕達は干潮になる時間に合わせて
夕方に到着した
少しづつ渡れそうな岩が
寄せては返す波間から顔を出し始めた
もう渡れるぞ?
しかし、全員ちょっと躊躇した
渡ってしまえば
明日の朝まで 何が起ころうと
脱出は不可能だ
でも、ここまで来て
今更逃げ帰る訳にはいかない
ええいままよ
とばかり僕が先陣を切った
滑らんか?
などと言いながら
全員渡って来た
全員で浜辺を振り返り
明日まで帰れんぞ
と腹を括った
暫くして潮も満ち始め
僕達は本当に帰れなくなった
だが、いざ渡ってしまえば
食べ物もあるし
キャンプのようでワクワクしてくる
釣り道具を持って来た鈴木くん(仮名)は
釣れたら焼いて食おう
と 竿と仕掛けの準備をする
エラいぞ鈴木くん!
頑張って大物を釣っとけ!
残りの僕達は
噂の出所の洞穴を探検した
アレ?こんなモン?
確かに洞穴だが、奥行きは5メートル程
中は広いし
恐ろしげな感じはまるでない
ちょっと拍子抜けした
それでも僕達は
もし噂通りの何かが聞こえるなら
間近で体験しようと
洞穴の入り口に陣取って
小さめに焚き火を起こし
インスタントコーヒーなど飲みながら
優雅なひと時を演出した
すぐに日も暮れ
辺りは闇に包まれる
かと思いきや
月が出ている
だから結構明るかった
周囲も良く見えた
快晴の夜空に
眩しい程の明るい月が浮かぶ
星はほとんど見えない
海も穏やかに凪いでいる
海面にキラキラと弾かれる
月明かりが綺麗だ
真っ直ぐ僕達に向かって伸びている
僕達は洞穴に背を向け
そんな景色を眺めながら
人生について語り合った
あの女子高の誰が可愛いとか
誰それの姉ちゃんがスゲー美人だとか
僕は焚き火の火が弱くなったので
拾って来た流木を取ろうと
一瞬後ろを振り返った
その刹那
ほかの4人がアッと叫んだ
手が出た…
崖から手が出た
みんな呆然としている
びっくりし過ぎて半笑いのヤツもいる
僕は見損ねた
思わず立ち上がって崖を覗きに行った
何も無かった
4〜5メートル下の岩場に
波が打ち寄せるだけだ
お前よう行けるね
と呆れられた
何を見たのか、みんなに聞き取りをする
総合すると
白い腕が真っ直ぐ三本
崖の向こうからスイッと出て来て
また崖の向こうに消えて行った
バレーボールのブロックのようだった
ヒジくらいまで出た
と言うことらしい
その スイッと と言う部分を
佐藤くん(仮名) はやたらと強調した
そこで僕はおかしくないか
と思った
月夜の空に手をかざしてみろ
夜空にシルエットになって
手は真っ黒に見えるはずだ
白い手なんてありえない
そう言うとみんな確かめ始めた
おおっ本当や スッゲ
バカは変なところに感心する
僕達は
あの腕がこの世の者ではない
と確信した
小さな島だ
当然、渡った時に
みんなでぐるりと探検した
僕達以外人は居ないのは確認済みだ
おのれぇ 僕も見たかったのに…
おいッもう一回出ろッ
カメラを構えて崖に向かって怒鳴った
もう一回コールをみんなでやった
誰も怖いとは思っていないようだった
しかし
もうソレが現れる事はなかった
恐らく
遊びに来た騒がしい悪ガキ共に
しゃーない…
なんか見せときゃ納得するだろ
という
幽霊側の配慮だったに違いない
鈴木くんは5センチ程の
小魚を釣ったが
岩場に放ったらかして
フナムシに喰われて骨になっていた
やがて朝を迎え
噂の内容とは違ったが
不思議な現象が起きた事に満足し
やべぇ学校に遅刻するやん
と原チャを飛ばして帰った
後日
みんなでその時の写真を見ながら
盛り上がった
だがおかしい
何度数えても4人しかいない
あの日、確かに5人で行った
僕、山田くん、佐藤くん、鈴木くん
そしてもう1人…もう1人確かにいた
でも、それが誰だったのか
誰も覚えていなかった
よく知っている仲間
それは間違いない
一緒に居て違和感もなかった
そもそも
始めから一緒だったのか
途中から合流したのか
それすらあやふやだった
顔も名前も思い出せない
交わした会話もだ
アイツじゃなかったか?
う〜ん いやアイツだったような?
それぞれが思い当たる友達に
直接確かめたが
答えは全員 NOだった
集団ヒステリーと言うやつか?
はたまた夢でも見たか?
しかし写真もある
僕達は一体誰と
心霊スポットに行ったのか?
謎のままなのだ
こんな事あり得るのか?
全く意味が分からなかった
以来
面白半分で心霊スポットには
行かないよう心掛けた