Ψ(さい)のつづり -42ページ目
さまよい
さすらっていた
何十年も
田舎へあこがれが
自分の中で
美化されすぎて
小さすぎる世界に
絶望もした
大好きだった場所から離れ
大好きになった場所からも離れ
とりたてて
好きでも
嫌いでもない場所に落ち着き
同じ店
同じ道
同じ顔触れ
半径二キロ以内で
一生を過ごす人たちのように
何度も
何度も
反芻した
繰り返すほどに
安心と
安定と
なれ合いに
牛のまだら模様のように
すこしずつ
すこしずつ
染まり始め
心も
身体も
朽ちはじめていた
このまま
飛び上がるほどの幸せもない代わりに
すごく嫌なこともなく
平穏な歳月を
過ごしていくんだろうということを
受け入れるほどに
心が朽ちていくと
身体が
空氣を取り込めなく
なっていった
そのことに
氣づいたとき
自分の心と身体を一番大切にする
と決めた
そんな当たり前のことを
氣付くのにずいぶんと時間がかかった
そのためには
いらないものを
すべて手放す
ひとつひとつ
捨て去る
その作業は
はじめには全く想像できないほど
すさまじく
感情の揺れも伴い
いまだ
続いているけれど
そして
完璧に片付いた
という瞬間は
まだまだ先かもしれないけれど
振り向いたら
もう
あのときの
朽ちかけの
わたしは
いなかった
いまの
わたしは
わたしを
愛していて
そのことに
心が震えるほどの
幸せを感じ
ここに
います
愛と感謝が
おのずと
溢れだし
世界に
ミルクのように
広がっていき
天の川銀河まで
流れて
ひとつになる

いつもは
涸れていて
石ころだらけの
殺風景な川
橋もかかっているけれど
ごつごつ道をものともしない
ジムニーなら
川底まで
下りていける
水はないから
それでも
地下には
雪解け水を
秘めていて
あるとき
じわりじわり
滲み出したかと思うと
次第に
こんこんと
湧き出し
くっきりとした
蛇の尾の川になる
清廉な水は
飛び上がるほど
冷たく
氷のようでいて
そのまま飲めるほど
美しい
もっと
近づきたいけれど
何も寄せ付けない
凛とした
自立

この暑さをものともせず
とんぼは
元氣に
すいすい
およぐ
空を
およぐ
その
透明の
はねで
あなたの
おめめをよくよくみたら
ぜったいに
宇宙のお方だと
確信しました
もしくは
宇宙のお方に
派遣された
斥候
そのおおきなおめめは
宇宙への
通信機
その向こうでは
だれか
崇高なお方が
人間たちが
ちゃんとしているか
チェックしているのでは
お口はもぐもぐ
何やら食べている様子なのは
見せかけで
宇宙への報告を
しているのでは
夏から秋にかけて
あなたたちが
たくさんうまれて
およぎ回り
たくさんの
報告が
天に届き
よいこはよいが
わるいこは
冬から春への
年越しを
許さんぞう
なんて
なっていたら
こまるので
だれがみていなくても
うそ
ずる
なまけは
ご法度よ
なんて
想像が
たくましく
なるような姿を
あなたはしていますね
とんぼとんぼ
あなたは
どこへ
いくのやら

300メートル台の
小さな小さな
山に登る
山に登るといっても
登山ではなく
地べたそのものの標高が
300メートルはあるから
こんもりとした
丘の
神社の階段を
あがっていくだけ
そこに至る国道周辺の景色は
一変して
15年の
歳月と
家々の代替わりを
彷彿とさせ
曲がる細道を
通りすぎそうになる
記憶とあまり違わない山だが
神社になっていた
訪れる人がいないのは
以前のまま
蚊の格好の餌食になりながら
のぼっていくと
お参りができるようになっていた
以前うちの犬がここを走り回って
お世話になりました
ありがとうございました
以前から神社だったのでしょうか
そうだったら
大変な失礼をいたしました
お許しください
きつねにつままれる
とは
まさに
このこと
なのかもしれないと
思いながら
当時は
おそらにいた
同行者に
きいても
知る由もない

別れの予感を
まといながら
懸命に
日々を
生きる
片手に余るほど
大きな無花果に
かじりつき
コガネムシのように
その甘さを味わう
どこから
どうやって
その甘さを
蓄えたの
わたしも
あなたのように
内面を
素敵に
充実させたい
そしてあるとき
パンパンになった
わたしから
輝きが
あふれだし
世界を
甘い
栄養たっぷりの
愛で
包み込む

