鈴をつけた

 

白い犬は

 

おおかみの子孫

 

山をかけまわり

 

へびやカエルや

 

ネズミを

 

狩る本能も

 

しっかり宿し

 

躍動するが

 

食べることは

 

しない

 

動く獲物に

 

血が沸き立つのみ

 

本来は

 

夜行性だが

 

すでに長い長い

 

人間との生活で

 

それは薄れつつある

 

しかし

 

満月の夜には

 

血が騒ぐ

 

月に向かって

 

吠える

 

遠く

 

空へ

 

哀愁漂う

 

その吠え声は

 

鎖につながれた

 

自分を

 

憐れむのか

 

ふわふわな

 

ぬいぐるみ犬が

 

もてはやされて

 

ほろびつつある

 

野性味あふれる

 

自分の種を

 

嘆くのか

 

その一方で

 

滅びたおおかみを

 

蘇らせる

 

背徳を

 

あざけるのか

 

 

 

はっとするほど

 

星が美しく瞬く夜

 

こうもりたちが

 

何かに

 

憑かれたように

 

あちらこちらを

 

飛びまわる

 

自由自在に

 

それでいて

 

飛びにくそうに

 

あまり氣持ち良さそうではない

 

その飛び方をみていたら

 

大地が揺れる

 

はじめは感じないくらい

 

かすかに

 

だんだんと

 

大地をノックをするように

 

大胆に

 

ヴァンパイアたちは

 

歓びの

 

ダンスを踊る

 

獲物は

 

そこかしこにいる

 

少しずつ

 

長くなり始めた

 

夜に乾杯

 

 

 

 

五臓六腑に

 

力が

 

みなぎる

 

前へ

 

前へ

 

上へ

 

上へ

 

傷ついた

 

バナナのように

 

黒くなった

 

部分は

 

きれいに

 

こそげ落として

 

アシナガバチのように

 

力を抜いて

 

抜け目なく

 

あたりをうかがい

 

いらないものは

 

すべて

 

捨て去り

 

新世界へ

 

飛び立つ

 

 

 

 

さまよい

 

さすらっていた

 

何十年も

 

田舎へあこがれが

 

自分の中で

 

美化されすぎて

 

小さすぎる世界に

 

絶望もした

 

大好きだった場所から離れ

 

大好きになった場所からも離れ

 

とりたてて

 

好きでも

 

嫌いでもない場所に落ち着き

 

同じ店

 

同じ道

 

同じ顔触れ

 

半径二キロ以内で

 

一生を過ごす人たちのように

 

何度も

 

何度も

 

反芻した

 

繰り返すほどに

 

安心と

 

安定と

 

なれ合いに

 

牛のまだら模様のように

 

すこしずつ

 

すこしずつ

 

染まり始め

 

心も

 

身体も

 

朽ちはじめていた

 

このまま

 

飛び上がるほどの幸せもない代わりに

 

すごく嫌なこともなく

 

平穏な歳月を

 

過ごしていくんだろうということを

 

受け入れるほどに

 

心が朽ちていくと

 

身体が

 

空氣を取り込めなく

 

なっていった

 

そのことに

 

氣づいたとき

 

自分の心と身体を一番大切にする

 

と決めた

 

そんな当たり前のことを

 

氣付くのにずいぶんと時間がかかった

 

そのためには

 

いらないものを

 

すべて手放す

 

ひとつひとつ

 

捨て去る

 

その作業は

 

はじめには全く想像できないほど

 

すさまじく

 

感情の揺れも伴い

 

いまだ

 

続いているけれど

 

そして

 

完璧に片付いた

 

という瞬間は

 

まだまだ先かもしれないけれど

 

振り向いたら

 

もう

 

あのときの

 

朽ちかけの

 

わたしは

 

いなかった

 

いまの

 

わたしは

 

わたしを

 

愛していて

 

そのことに

 

心が震えるほどの

 

幸せを感じ

 

ここに

 

います

 

愛と感謝が

 

おのずと

 

溢れだし

 

世界に

 

ミルクのように

 

広がっていき

 

天の川銀河まで

 

流れて

 

ひとつになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもは

 

涸れていて

 

石ころだらけの

 

殺風景な川

 

橋もかかっているけれど

 

ごつごつ道をものともしない

 

ジムニーなら

 

川底まで

 

下りていける

 

水はないから

 

それでも

 

地下には

 

雪解け水を

 

秘めていて

 

あるとき

 

じわりじわり

 

滲み出したかと思うと

 

次第に

 

こんこんと

 

湧き出し

 

くっきりとした

 

蛇の尾の川になる

 

清廉な水は

 

飛び上がるほど

 

冷たく

 

氷のようでいて

 

そのまま飲めるほど

 

美しい

 

もっと

 

近づきたいけれど

 

何も寄せ付けない

 

凛とした

 

自立