バカリズムさん脚本の映画「ウェディング・ハイ」(2022)を観た。
この人の脚本作品は「地獄の花園」(2021)「侵入者たちの晩餐」(2024)
に続いて3作目となる。
最初の「地獄の花園」は脚本もさることながら、女装ではなく女性役として
遠藤憲一さん、勝村政信さん、松尾諭さん、丸山智己さんを起用したのは秀逸だった。
逆に言えば、「よく受けたなぁ」というところだが、面白い映画だった。
「ウエディング・ハイ」は感心するくらい、「結婚式に対する優しい男側の気持ち」を
代弁している。私は経験はないが、何かの間違いで、同じ状況になったら、
「絶対そう思うに違いない」&「そういう行動をとりそう」というものがすごく出ている。
結婚式など「男側にとっては」どうでもいい、というのが本音だが、女からすれば
一世一代「どんな〇△□(自己規制)でもヒロインになれる晴れ舞台」なのだから、
目一杯張り切ることになる。
特に、秀逸だったのは「選ぶ地獄」の下り。
「誰を式に呼ぶ」「どの範囲まで呼ぶ」「お色直しは」「引き出物は」「〇〇の色はどうしよう」「料理は?」「誰にスピーチを頼むか?」「誰に余興を頼むか」
バランスやらなんやらを考慮しつつ計画を立てる。
それこそ、男がひとつでも興味のない素振りをしたり、協力的でなかった場合
そのまま破局につながりかねない、おそろしい選択である。
「あー、メンドゥくさい」
物語はスピーチやビデオを作る人たち個人のエピソードが入り、思い入れが伝えられる。
驚くほど「不遇な境遇」な彼らが頑張りすぎちゃったせいで「時間押し」というクライシス
が発生する。
乾杯の音頭でも「シロウトなのに」対抗して受け狙いして悶々としている新婦の上司がいる。
「お前は芸人か!」と突っ込みたくなるがこの人もエピソード付き。
これにより、親御さんや友人たちの余興のやり方や料理の出し方、お色直し、キャンドル
サービスの進行が瞬時に見直され、その通りに何一つ予定を削ることなく「巻き」に
成功する。仕切り役の手腕が光る。
最後は両親への「手紙」と来賓客の見送りという結婚式のエンディングの様子を描く。
はじめは乗り気でなかった新郎も「結婚式をやってよかった」とこの式を仕切る役の
中越さん(篠原涼子さん)に伝え、大団円!・・・という処だが、そこにはいろいろと
裏で起きていたドタバタの様子と仕掛けがある。
この式の間起きていた出来事が別視点でとらえられ、「元カレ」と闖入者のやりとりやら、
この式に至るまでのいろんな伏線が見事に回収されていく。
この手法は「侵入者たちの晩餐」でも見られた。(こちらの方がより細かい)
中越さん自身が、2年前に自分の結婚式を取り仕切ってくれた人の仕事に感激して、
同じ職場で働くのだが、自身のその後の「結婚生活」が決して順風満帆とはいかない、
という現状も明かされる。
「元カレ」が関係者と「間違えられて」渡された引き出物が新郎新婦の名前が入った
パンツでナント「元カノ」以上に今、欲しい物だったとは・・・。