映画「赤い風車」を観る。 | 井蛙之見(せいあのけん)

井蛙之見(せいあのけん)

毎日、いい音楽を聴いて、好きな本を読み、ロードバイクで戯び
楽しく話し、酒色に耽り(!)、妄想を語り、ぐっすり眠る。
素晴らしきかな人生!
井の中の蛙 大海を知らず 
されど、空の蒼さを知る
(五十路のオッサン、ロードバイクにハマる。)

昔から、ロートレックという画家が好きだった。

この古い映画のことも、ずいぶん昔からそのテーマ曲を

レコードで聴いていて親しみがあった。

 

ロートレックが事故によってああいった姿になり(近親交配のせいだとされる)

絶望と大きなコンプレックスを抱え、また他人には侮蔑的な態度をとられつづけるが

絵が売れて成功者になったもののアルコール中毒症になり堕ちていき

結果、36歳の若さで亡くなる人生はなんとも哀れにみえた。

彼は、皮肉屋でアル中だけではなく乱れた生活で性病患者でもあった。

夢と喧騒のデカダンの中で「天国と地獄」、どちらの世界も覗き見た。

芸術家はこういった性格破綻が必須条件なのだろうか。

何か特別な才能が有ればこういった大きな呵責を与えられる。

 

ストーリーとしては、一応は成功物語なのだが、いささか私の感想では

伝記からして「初めて惚れたあるオンナに対して純粋さ、一途さ」を

きれいに描きすぎているようにみえてどうにもむず痒い。

彼は名声は得たが退廃的な生活と乱痴気騒ぎの末に一生を終えた。

むしろ、その方がしっくりくる。

 

作中で盛り場ではなく故郷に帰り自然を相手にした絵を描くことを勧められる。

そこで友人のゴッホのことが語られる。

彼の麦畑を指して、自分にはああいった「自然を相手にした絵は描けない」と言っていた。

しかし、そのゴッホもやはり酒に溺れた性格破綻者というより精神疾患者だった。

天才はその大きすぎる才能ゆえに常人には理解されない。

「成功」とはいったい何なのだろうか。