クリエイターの宿命 | むすび

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天巫泰之



昭和の時代の漫画家さんたちは、たくさんの連載を抱えていましたが、よくあれだけの素晴らしい作品を生み出したものだと思います。ただ、漫画を描くことがどれだけ過酷なことなのだと思うのは、短命な方が多いと思えるからです。

それは漫画家さんだけでなく、詩人の方、小説家の方、クリエイターの方々は短命な方は多いようなイメージがあります。

ここ数年は、連載をかけもちしている漫画家さんはいるのかよくわかりませんが、寿命を縮めてほしくはないので、休載でも受け入れてほしいと思います。

漫画家

手塚治虫さん、享年60歳
石ノ森章太郎さん、享年60歳
藤子・F・不二雄先生さん、享年62歳
ちばあきおさん、享年41歳
鳥山明さん、享年68歳

小説家

太宰治さん、享年38歳
芥川龍之介さん、享年35歳
樋口一葉さん、、享年24歳
有島武郎さん、享年45歳
芥川龍之介さん、享年35歳
詩人

中原中也さん、享年24歳
金子 みすゞ、享年26歳
山田かまちさん、享年17歳


詩人なのかどうかはわかりませんが、私は高校生の頃、文庫本で、高野悦子さんの書籍、「二十歳の原点」シリーズを3冊読みました。
1969年に、二十歳で自死されて、その後に高野悦子さんのお身内の方が、高野悦子さんの日記、ノートをそのまま本にしたものらしいです。

女性の心の揺れ動き、考えが日記ならではの生々しさで迫ってきて、忘れられない本です。
彼女の本の3冊目の最後に掲載されていた彼女の命の詩(うた)を紹介します。
クリエイターの人たち、私も含めてですが、感性豊かで、傷つきやすい人間です。
でも、「生きていて欲しい」心からそう願います。
私も最後まであがき続けて生き抜いていきます。

高野悦子さんの詩『旅に出よう』


テントとシュラフの入ったザックをしょい
ポケットには一箱の煙草と笛をもち
旅に出よう

出発の日は雨がよい
霧のようにやわらかい春の雨の日がよい
萌え出でた若芽がしっかりとぬれながら

そして富士の山にあるという
原始林の中にゆこう
ゆっくりとあせることなく

大きな杉の古木にきたら
一層暗いその根本に腰をおろして休もう
そして独占の機械工場で作られた一箱の煙草を取り出して
暗い古樹の下で一本の煙草を喫おう

近代社会の臭いのする その煙を
古木よ おまえは何と感じるか

原始林の中にあるという湖をさがそう
そしてその岸辺にたたずんで
一本の煙草を喫おう
煙をすべて吐き出して
ザックのかたわらで静かに休もう

原始林を暗やみが包みこむ頃になったら
湖に小舟をうかべよう

衣服を脱ぎすて
すべらかな肌をやみにつつみ
左手に笛をもって
湖の水面を暗闇の中に漂いながら
笛をふこう

小舟の幽かなるうつろいのさざめきの中
中天より涼風を肌に流させながら
静かに眠ろう

そしてただ笛を深い湖底に沈ませよう

(了)

私の弟、JUNKの作詞作曲と歌と演奏
私のバックコーラスとリードギター
『ベイビドンクライ』