【柔道部物語:東京で一番強い女子部員】
都内の武道系大学の柔道部を卒業した後、7年程九州方面へ転勤し、東京に戻って来た時のお話です。
卒業後、まともに柔道を続けていなかったのですが、補欠の補欠である自分でもなんとかなると甘い考えもあり、遊びがてら稽古に参加しました。
監督は、学生時代と変わっていませんが、後輩がコーチとして、学生に指導していました。後輩は1年生の時からレギュラーで、業団に籍を置く傍ら、コーチとしています。
土曜日の夕方、キャプテンとマネージャーに許可をもらい、稽古に参加する事にしました。
学生時代は、あれ程稽古などしたくなかったのですが、自分から道場へ行くとは、変な気持ちです。
キャプテンから紹介された後、一緒に準備体操をしていると、後輩のコーチが道場にやってきて、めずらしいお客に気が付き、声をかけてきました。
大学生は、大変強くてスタミナもあり、歯も立ちませんでした。少し休んでいると、新しい学生がやって来て、引き続き稽古を行い、さらに自分の体力の無さを実感してしまいました。
現役学生の強さを実感していると、小柄な女子部員がやって来て、稽古する事になりました。(学生時代には、女子部員はいませんでした)
男子部員には、歯が立ちませんでしたが、女子部員となら、という甘い考えが、一瞬のうちに打ち砕かれることになろうとは、夢にも思いませんでした。
組んだ瞬間、もの凄い力で襟と袖を取られ、バランスを崩したところに、足をすくわれ、何とか持ち直したところ、懐に入り込まれた瞬間、天井が視界に入り、背中に衝撃が走り投げられたことに気が付きました。
立ち上がり再び組むと、左右に揺さぶられて、耐えていた所に、大外刈りで投げられ、時間終了まで手も足も出ない程、コテンパンに投げ続けられて、先輩の面目丸つぶれです。
息も絶え絶え状態で、礼をして休んでいると、監督がにやにやしながら、やって来ました。
どうやら、稽古をしていた女子部員は、東京で一番強く、女子では稽古には、ならず男子と稽古している様で、監督から自分と稽古してくるように、指示されて稽古してくれた様です。
その後、監督からの指示で、他の女子部員と寝技をし、目茶苦茶に抑え込まれ、終了後に道着を見てみると、胸に日の丸が刺繍されており、日本表候補の一人でした。
当時の女子柔道部は、全国でも1位2位の強豪で、私が逆立ちしてもかなう相手では、無かったようです。
しばらく、週末に大学の道場へ稽古に通っていましたが、仕事が忙しくなり自然と行かなくなってしまった30年程前の懐かしい思い出です。