大阪初日へ行きました。感動して何度も大泣きしました。日本人だけの手による日本オリジナルの秀作が生まれた事も感慨深くて何だか嬉しかったです。 


 主筋は落語の道を極める男性二人と二人を愛した女性の物語。原作は漫画。脚本演出は小池先生。歌もダンスも満載で、私が和が好きな事もあり、和装で洋楽を踊るのも好きでした。 子役、ベテラン、アンサンブルの方々も全員が良く歌い踊っておられたと思いました。


 物語が切なくて、落語家の満州での慰問公演の話や、第二次世界大戦後の混乱期の日本など、日本の戦前戦後の話をある程度、きちんと描いている事にも驚きました。この辺りはもっと前宣伝しても良かったのにと思いました。これまで小池先生が日本の歴史を扱った舞台はあまり記憶になく、これからは日本が舞台の作品も積極的にお願いしたいと思いました。


 私はアルカンシェルでも大泣きして、最近は舞台へのハードルが低いので、今回も幕開きと終幕の華やかさ、宝塚で最近ご無沙汰な一幕ラストの総出のドラマチックな大場面を見ただけで心躍りました。多彩な楽曲(作曲は最近、小池先生と良く組んでいる小澤時史氏)、和洋折衷のカッコいい群舞も沢山あって魅了されました。

 演出では特に二幕、絶望の淵に立った山崎育三郎さんと明日海りおさんが結ばれるデュエットの場面の静かで激しい刹那に引き込まれました。ここは二人の歌も音楽も装置も衣装も照明も全てが凄絶で、やはり、小池演出が肌に合うと思いました。今年の宝塚は小池先生の登板がないのが残念な限りです。 


 出演者は東京公演後なので出来上がってました。観客にリピーターも多くて熱狂的なファンも見かけましたが、伴奏がはじまるや否や拍手を先導するような爆竹拍手もあったのは少々困りました。


 助六の山崎育三郎さん。破天荒で人間味あふれる愛されキャラの落語家。伝統から離れ、型にはまらず、本能的に客を惹きつける、少し猥雑な話術。後半の悲劇も狂おしく演じて、やはり歌が巧くて泣かされました。


 菊比古の古川雄大さん。美しく繊細で内向的で静かな情熱と哀愁をたたえる孤高の落語家。 端正で艶と品のある芸風。幼い頃に捨てられ、助六との友情やみよ吉との恋愛などに苦しみながらも懸命に生きる姿に感動しました。 


 そして、みよ吉の明日海りおさん。妖艶でミステリアスな元芸者の華のある女性。菊比古を一途に愛し、献身的でありながらも次第に狂おしい執着に変化、でも、共感性もあり、迎える悲痛なラスト。明日海の歌声が何度も沁みて、彼女が歌うたびに涙が込み上げました。私は彼女の歌声が今も好きみたいです。 


 最近は、日本のオリジナル作品と謳いつつ演出や作曲などに外国人を招く作品が増えていて、日本のミュージカル界はどうなるのだろうと思う事も多いので、久々にこの手の大作でスタッフの一覧が日本人だけという光景を見て感無量でもありました。


 尚、観劇後にプログラムを買いましたが、フェスティバルホールの売り子さんは少々高飛車。音大生のバイト?。長蛇の列で、やっと自分の番が来たのに、あっちへ進めと憮然とした顔で命令。ここで買えないのかと返すと不満げ気に応対。ありがとうとの一言もなし。やはりホスピタリティーは宝塚のほうが何倍も上ですね。