雪組「ポーの一族」の新人公演を観ました。挨拶込みで二時間たっぷりありました。舞台上も客席もテンションが高く、主演の華世さんをはじめ出演者一人ひとりの芝居が緻密でした。更に「歌ウマを揃えたの?」と思ったほど歌のレベルも高く、大作のため何役も兼ねる演者も多くてチームワークの良さが感じました。やはり、出演者の実力を引き出すためには作品力が大切と改めて痛感しました。


演出は熊倉飛鳥先生。一本物の新人公演はどこを残し、どこを短縮するのか、脚本や演出の変更も楽しみの一つですが、花組初演(演出・田渕先生)はプロローグからほぼすぐにホテル・ブラックプールへ飛びましたが、今回は「婚約式」が入り、序盤から妖しい「ポーの一族」の世界観を堪能できました。ゴンドラもあり、エピローグのギムナジウムまで見せ場を巧くつないだ構成だったと思います。


ただ、その一方で、エドガー関係の省略が多かったのは気になりました。例えば一幕では老ハンナとの出会いが舞台袖の小芝居になり、村人の襲撃で大老ポーから血を与えられる場面も現代人4名の説明の後ろで数人が演じる寸劇に。♪「ゆうるりと~」から花売りを襲う場面も全カットされ、♪「愛のない世界」も数小節のみに短縮されました。二幕ではアランへの吸血に失敗した後、一族の絆を確かめ合う場面も丸ごとカットされていました。 元々出番が多いので仕方ないものの、ここは大切な場面なのに…と驚きました。


 一方、アラン関係には大きなカットがなく、後半はアランが主役のようにも感じられ、「少し違うのでは?」という思いも頭をもたげました。しかし、最後はきちんとエドガーの物語に帰結しました。この脚本上の瑕疵を補ったのは何といっても華世さんの巧演だったと思います。素晴らしかったです。周囲も丁寧な助演揃いでした。


主演の華世さんは最初の登場時にオーラがありました。演技は型を踏まえながらも彼女なりの細かな工夫が随所に見られて惚れ惚れしました。特に私は初演時から本公演で♪「僕は自由だ」の歌詞のところでエドガーが笑みを浮かべるのが好きではないのですが、華世さんはこの場面で笑顔を見せずでした。そして、アランを迎えに行った場面では大粒の涙を流し、ここをクライマックスにエドガーの内面がそのまま溢れ出たように感じられました。私も感動して涙が止まらずでした。小顔長脚のカッコ可愛い雰囲気も良かったです。


アランの律希さんは共感性の高い演技で、歌も声もよく通り感嘆しました。ゴンドラで泣いていました。素なのか役作りなのか分かりませんが感極まった様子で、こちらも貰い泣きしてしまいました。男爵の霧乃さんも歌が巧く、特に銀橋での独唱が心に響きました。男爵夫妻が消滅する場面の感動は大老ポーの夢翔さんの歌声の力も大きかったと思います。ブラヴァッキーの華純さんの怪演も公演を大いに盛り上げていて楽しめました。


シーラの白綺さんは「何をおっしゃってるの」を気高く決めて文句なし。クリフォードの苑利さんとマイクの水月さんは若々しく、ジェインの星沢さんの絶叫も的確でした。マーゴットの音綺さんは切なく、老ハンナの瑞季さんには女性的な慈愛が感じられ、マルグリッドの紗香さんは発声が美しく、支配人の風立さんの華やかなソロも印象に残りました。メリーベルの澄花さんは組配属直後の研2だそうですが、先ずは化粧の勉強からお願いしたいです。


 カーテンコールでは達成感に満ちた出演者の笑顔が並び、客席からは万雷の拍手が起こりました。やはり、大劇場での新人公演も配信すればいいのにと思います。スカステでの抜粋放送も楽しみです……と言いたいところですが、節約のため私は解約済みなので観られませんが💦今回も長文で失礼しました。