取れると思っていた仕事が
取れなかったクマオ。
クマオにしてみれば
どうしても取りたい仕事だったようだが、
「りこちゃん、
負けた~」と連絡がきた。
「そっか~
お疲れ様~」と返した。
だけど
こんな上からの言い方、
とても本人には言えないが
「今のクマオさんには
これぐらいの試練が必要」と
思ったのが私の本心だ。
それに
今年採用したあの事務員は
その専門分野での経験があるから
雇ったんだと言っていたが、
彼女を採用してから
取りたい仕事が取れたという話は
聞いていない。
クマオの仕事のことなど
よく知らない私にしてみれば
クマオに対しても
その事務員に対しても
何なん?と思ってしまっているところが
ある。
少し外出した際に
クマオの車とすれ違った。
お互い後続車がなかったので
ちょっと止まった。
クマオが窓を開けて言った。
「りこちゃん、
あかんかった~」
意外にもとても爽やかな笑顔の
クマオ。
その上、
大切なことがある日には
必ず私からもらったものを
身につけるんだと言ったそのクマオの
言葉通りに、
今日のクマオは私がプレゼントした
ポロシャツを着ていた。
それがちょっと嬉しくて、
そしてその笑顔も相まって、
どうしたんだ私と思うほどに
胸がキュンとした。
「うんうん」
私もそう言って思い切り笑顔で
手を振った。
想いが溢れて
次の信号待ちで
「クマオさん、
愛してるよ」と送った。
そう言いたい気持ちになった。
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もう一人
「愛してるよ」と
言わずにはおれない人がここに。
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