門出 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「ねぇ…そこにいる。」

ウンスの計算では明朝天門が開く。
一年もの間、ひとり百年前で過ごした
ウンスである。

「たくさん歩いたわ
ずいぶん強くなったんだから
もう脚が痛いなんて言わない
わがままも言わない
だから…だから・・・お願い
あの人に会わせてよ。」

生憎の雨の中、ウンスは天門近くの
まだ若いあの木の根元に腰掛け
夜が明けるのをひとり過ごしている。

時空を越えねば
愛しい人には会えないのである
それに伴うであろうリスクは
覚悟の上だ。
どんな試練も受けて立つ
そんな思いでいる。

「あの人と初めてお正月を
迎える事ができるの…?雷様?」

ゴロゴロとなりやまぬ雷に向かい
そう呟く・・・すると「きゃ~~」
と、けたたましいウンスの叫び声を
残し、ウンスの姿が忽然と
消えたのである。


一方こちらは・・・

「腹は空いておらぬか?
ここにあなたの好物を求めて
参った故ともに食わぬか?」

時空を越えた
同じ大樹の根元に腰をおろすヨン
懐から饅頭を二つ取り出すと
ひとつを膝の上にのせはよう戻れと
促すのである・・・。

「ん?…」

大樹の根元からゴロゴロと音が漏れ
ぽっかりと大きな空洞が開く。
身体能力は人一倍優れて
いるためかぴょんっと大きく
飛び跳ね空洞に飲み込まれる
ことはなかったのだが…「きゃ~~」
っと聞き慣れた女人の叫び声が
微かに聞こえるではないか。

「ん?イムジャか?」

ヨンはそう呟き
正面突破が信条であるためか
迷わず空洞へとその身を投げ出した。

灯りもなくさすがの迂達赤隊長も
困惑気味に顔をしかめていると
すとんっとその腕に懐かしい
香りを纏い愛しい人が落ちてくる。

「えっ?暗くて何にも
見えないんだけど…どなた様?」

「イムジャ…俺です」

ウンスの世で言うところの
低音ボイスがウンスを包むと
その瞳からはみるみる涙が
溢れその頬を濡らす。

「泣かないで…」

困ったようにウンスをぎゅっと
抱き締めるのである。

「テジャン?テジャンなのね
会いたかったの…ちゃんと食べてた?
ちゃんと眠っていたの?…でも
どうしてここにいるの?」

「イムジャが恋しく天門の様子が
いつでも見れるようにと近くの
大樹の根元に・・・・」

らしくもなく次から次へと
言葉を綴りあの折の仔細をウンスに
伝える。

「同じよ!同じ~実は私も
百年前の同じ大樹の根元にいたのよ
でね…根元に吸い込まれて
落ちてきたのよ・・・私の計算では
明日天門が開く予定だったんだけど
・・・あ!ごめんなさい
降ろしてちょうだいテジャン?
重いでしょう?」

「嫌です…イムジャを生涯懐に忍ばせ
過ごしたいほどなのです
もう離しませぬ…いいですね」

「うんっ…私のお守りは大変よ
しわしわのお婆さんになっても
愛してくれる?」

「望むところです。
生涯離しませぬ…俺は執念深い故
覚悟してくだされ」

ほしいのを濡らす涙の後を
その大きな手で拭うと目元を緩め
黒曜石の吸い込まれそうな瞳で
じっとウンスをみつめる。

「戻りませぬか…俺たち二人が
いるべき場へ」

「えぇ…高麗へ帰りましょう
テジャンと二人ならどんな困難でも
乗り越えてみせるわ…うふふ」

その言葉に口の端をあげると
ヨンは軽功を身に纏うと
ウンスをその胸に抱えたまま
流れに逆らい歩を進める。

どこへたどり着くのか
まったく分からないままの無謀な
行動ではあったのだが・・・
「テジャン~~テジャン~~」
どこからともなくヨンを呼ぶ声が
聴こえてくる。

「やはりな・・・テマンの声です
あいつは俺のそばを離れませぬ故
声を辿ると高麗へ行けます…
俺の許嫁として堂々と俺のそばに
よろしいですね?」

「はいっ喜んで」

見つめ合い互いに笑みを浮かべて
いると闇の中に淡い日差しが
射し込んでくる。

「あっ?ちょっと明るくなって
きたわよ、出口かしら」

「そのようです…俺たちの新たな門出
となる出口です・・・テマンも
待っております」

「あっ!テジャン!…えっ?
医仙様?えぇ~~~!」

人影を目敏く見つけたテマンが
素っ頓狂な声をあげる。
兄とも親とも慕い戦であろうが
市井見回りであろうが
テジャンのそばを離れる事が
ないテマン。
ヨンが大樹の根元に腰をおろして
いる姿を捉えていたのだが
あと一歩のところで間に合わなかった
のである。

「テマン…待たせたか?」

「いえっ四半刻しか過ぎてません
良かった無事に戻ってきて
くれて…お、俺・・・飛び込もうと
思ったんですが…テジャンを
呼び戻す役目は、このお、俺だけの
にしかできないから
一生懸命叫んでいたんです。
でも医仙様も一緒だから
おどろきました!!」

「医仙殿は俺の許嫁と相成った
おまえの姉上になるぞ」

「ちょっと降ろして…ちゃんと
挨拶したいの」

横抱きにされたままではと
そうお願いすると
眉を潜め、しぶしぶではあったが
ちょこんと降ろしてくれた。

「テマン君久しぶりね元気だった?」

「はい!医仙様…えっと姉上様も
おかわりなくて・・・お、お美しく
テジャンが喜んでいます。
こんなゆるい顔をするテジャンを
見るのは初めてですから~」

「テマン!余計なことを…」

「まぁま怒らないの…うふふ
あ!見てテジャン!朝日よ
新たな門出に幸多かれとお願い
しなきゃ!」

ウンスの指差す山の谷間が
ほんのり朱色に染まりはじめると
ヨンとウンス、そしてテマンは
自然と手を合わせるのである。
これからの二人にと、テマンは
思い、一方…ヨンとウンスは
むろんこれからの二人にと・・・
そして高麗の皆に幸多かれと。



>>>>>>

皆様こんばんは

シンイ年越しイベントのお話です。
くる年も皆様に幸多かれと
ヨンとウンスが手をあわせて
くださいました。
あと一話お昼にアップ致します。
ご挨拶もその時にさせて
頂きますね。


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