愛しき薫りを求めて(再会)  2 | シンイ二次小説でんべのブログ

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もうじき高麗の地を抜ける
寂れた宿ではあったが、これより
先は宿に泊まることは不可能だろうと
今宵は宿に泊まることとなった。

「なんだかいまにも崩れてしまいそう
大丈夫かしら」

ウンスは不安気に天井を見つめていた
ふと見れば天井のあちらこちらに
穴が空いている。
壁には戦のあとであろうか
鋭利な刃物で斬ったような跡が
いくつも確認できる。

幸いにして母屋ではなく離れを
借りることができた為
戸口を開ければチュホンの姿も
すぐそこにある。
だが夕餉だけはウンスの胃袋を
満足させたようであった。

「山の幸を上手に工夫して
作っているのね…」

「ここは敵地に違いゆえ
ひっそり営んでおるのであろう」

「そうよね、あ!キム・スンギョって
言ったかしらあの太めの人
見つからないといいけどそれと
ヤンにも会いたいな~
もう二度と会えないんだもの」

「あやつ!許さぬ!ウンスに
あのような真似を、貴女に触れて
よいのは、俺だけゆえ」

そして、二人は熱い夜を過ごし
チュホンはきっとやれやれと
長い首を振っていたに違いない。

翌朝蒙古の地へと脚を踏み入れた。


「おい!あの女人!」

ウンスをキムに渡したごろつきに
街道で見つかってしまった。
だがヨンはそのごろつきを知らない
ウンスも気づいてはいなかった。

「ねえ~ヤン君の家ってこの辺じゃ
なかったかしら?」

「ああ、記憶があの長屋で
戻ったのだ、忘れるはずがなかろう
あの長屋に違いない」

見れば粗末な長屋が数件ならび
子らが元気にはしゃいでいた。
ウンスはその中からヤンを見つけ
大きな声をあげ手を振る。

「あ!ヤンよ!ヤ~~~ン」

「ああ~ずっと前にあった人~」

「ヨン、チュホンを止めて
挨拶しなきゃ」

ヤンがこちらに向かい駆けてくる
ウンスもチュホンからおろして
もらい両手を広げ待っていた。

ウンスの前に大きな背中がひょいと
割り込みヤンを抱き上げる。

「もう~ヨンってば!相手は子供
なんだから、そんなことしなくても
いいじゃない!まったく~」

「・・・いや、そうではなく・・
幼い子は加減を知らぬゆえ
勢いよく飛び付き、ウンスが怪我でも
したらと・・・」

ウンスがぷぅ~と頬を膨らませると
ヨンはヤンを抱き上げたまま
しどろもどろに言い訳を繰り返す。

「わぁ~~たかい~~、ずっとむこう
までみえるよ~~」

「そうね・・・高いでしょう
うふふ、ヤン?オモニは?」

言ってる間にヤンの母が驚き
こちらに駆け寄ってくる。

「おや、あんた達…そっか開くのか?」

「はい。だから一目別れが言いたくて
道すがらだったし
寄らせて貰いました」

「そっか・・・無事にお戻りよ
これから先はあいつの縄張りだから
気をつけていくんだよ」

「はい、ありがとうございます
この人強いから大丈夫です!
へなちょこなんか指先一本で
片付けてくれますから」

「アハハッ…指先一本かい?それは
見ものだね~キムはほんとうに
目障りなんだよ、期待しているよ」

ヤンの母親チセは、豪快に笑い
あれやこれやとキムの愚痴を
こぼしていた…四半刻ほど立ち話を
していたのだが、さすがのウンスも
疲れてきたのか別れを口にする

「それじゃ…私達行きますね
チセさん、お元気で・・もう会えない
けど・・・」

「おや…あたしとしたことが・・・
お茶も出さずごめんよ・・くれぐれも
気をつけていくんだよ」

「はい…ヤン元気でね・・・」

ウンスはヤンの目線まで腰を屈め
その頭を優しく撫でると
こくりと頷くヤン。

そしてチュホンに跨がり
別れを告げたのであった。
もう二度と会うことは叶わないが
どうか戦に巻き込まれることなく
生き延びてほしいと、ウンスは
胸のうちで願っていたのである。


「ウンス…手綱を頼めるか?」

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