愛しき薫りを求めて(再会) 1 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「護軍…行かれますか?」

「むろん」

「お世話になりました・・ 崔沆さん
皆さん見ず知らずの私達を受け入れて
下さりほんとうに
ありがとうございました。
みなさんのことは決して忘れません」

「我々が護衛致します。護軍に
鍛えて頂き
心身ともに強くなることができ
蒙古軍になど臆することなく
立ち向かえますゆえ」

「いや…崔沆殿その心根だけで
ありがたい。みなひとつ伝えねば
ならぬことがある、命を無駄にするな
敵わぬ相手と踏んだなら
迷わず逃げよ!されど怪我する仲間を
捨て置くことは決してしてはならぬ
担いで逃げるのだ!よいな!」

「「「おお~~~」」」

天門が開くまで一月(ひとつき)を
切った。江華島から国境まで
敵地を通るため蒙古軍に見つかる
可能性も考えられる。
はやめに出立することにしたのだ。

「恐れながら王様…後世に名を残す
聖君とおなりになることを、某は
望んでやみませぬ、苦しい民に
目を向けてくだされ・・・」

ヨンはそう述べると片膝をつき
頭を垂れる、ウンスもそれに倣い
深く頭を下げていた。

「相分かった。無事にそなたらの
世に戻れることを祈っておるぞ」

「はっ!ありがたきお言葉
虚悦至極に存じ上げ奉ります」

「護軍、これを貴方様のお側におると
言う子孫に渡して下さいませんか?」

オ侍医が手にしたのは、一通の文と
先祖代々オ家に伝わる家宝
守り刀である。

「侍医、しかと預かった必ず
テマンに渡すゆえ安堵なされよ」

「初めて子孫の名を口にして
下されましたな・・・テマンと申す
のですな・・・どう暮らし向きを
立てているのかは聴きますまい
お頼み申し上げます」

侍医は、一瞬遠い目をし
子孫であるテマンに思いを馳せていた。

「しからば我々はこれにて・・・」

「お世話になりました」

桃色の風呂敷包みをヨンが背負い
チュホンに跨がるとウンスを引き上げ
軽く一礼すると、チュホンの横腹を
蹴り駆け出す。

「さようなら~~~」

ウンスは、いつまでも小さな手を
振り続けていた。
見送る武官も情が移り、いつまでも
別れを惜しみ涙する武官が出たほど
であった。

「お前ら!おのこがいつまでも
めそめそするでない!」

そう激を飛ばす崔沆の目の縁も
じんわり赤く染まるのであった。

ヨンが考案した江華島をぐるり囲む
城壁の完成は見届けることは
出来なかったが、人足が額に汗し
石畳を積み上げる横を通り過ぎ
二人は天門へと向かうのである。

「やっと帰れる」

「ああ・・・」

「蒙古兵に見つかるかしら?」

「例え見つかることがあっても
ウンスは必ず護るゆえ」

「うん!信じてる・・・でも
貴方も一緒じゃなきゃいやよ
私一人じゃ生きていけないもの・・」

「俺とて同じ・・・ウンスがおらなば
息もできぬ・・」

二人の言葉を理解したのか
あるいは偶然の成せるわざか
チュホンが「ヒヒーン」っと嘶く。

「なあに…チュホンやきもち?
俺も息もできぬって言ってるみたいよ
でもそうかも・・・貴方を追って
天門を潜ったのよ、どこに繋がるかも
分からない道を迷子にならず
貴方のそばにいたんだからすごい
ことよね・・・よっぽど想いが
強いのよね」

「チュホンは賢い馬ゆえ
俺の匂いをかぎ分け国境に無事着いた
のであろう…されど・・・チュホンにも
ウンスにも冷たくあたってしまった
すまなかった・・・」

「うふふ…そうよね・・チュホン
戻ったら埋めあわせてしてもらわなきゃ
ね~~~、私は美味しい、あ!マンボ
姐さんのクッパが食べたいわ
チュホンはお嫁さんよね」

ウンスはそう呟くと優しく
チュホンの鬣を撫でる。
お嫁さんの言葉にチュホンの長い耳が
ぴくぴく動き鼻穴をひくつかせる。

「流石に、この時期は
ちょっと肌寒いわね風をきって
走るから余計にそう感じるのね」

「寒いか?…」

ヨンはそうぽつりと呟くと
細腰をぎゅっと引き寄せ抱き寄せる。

「うふふ…暖かい・・・ありがとう
別れは寂しいし辛いわ…だって
例えば貴方の世に戻れたら
それが明日のことでも月日は
百年流れているのよ・・・もう~
みんないないわ・・・」

「仕方あるまい・・後悔のない
人生を送ってほしいと願っておる」

「そうよね・・・私達も後悔は
したくないから精一杯生きましょう
そして家族をたくさん作り
笑いの絶えない暖かい家庭作りが
夢なの・・・だって貴方も私も
一人っ子でしょう」

「ならば、子をたくさん生んで
くれるのだな?努力は惜しまぬゆえ」

ヨンはにやりと口の端をあげると
風に靡くさらさらな髪に顔を埋め思う

この薫りを求め俺はこの地に
降り立ったのだと。
天門の地で首を長くし
待っているであろうと思われる
テマンに想いを馳せているのだった。

『テマン、おまえは奴婢ではない
立派な貴族であり身の上を嘆く
ことはせずともよいのだ・・・
待っていろ。戻り次第おまえの族譜
調べさせるゆえ』

ヨンはそう胸に秘め愛馬の横腹を蹴り
先を急ぐのである。

蒙古軍に見つかることなく
無事にたどり着くのか
それはウンスも思うところではあった


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