木春菊  [偕老同穴] 証 6 | シンイ二次小説でんべのブログ

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テマンは昨夜と同じく
枇杷や野いちごを摘んで戻ってきた

「大護軍…峠を越えないと市井もなく
すみません…」

「ウンス、まともな宿も手配出来ず
すまぬ、明日は宿を取る故、堪えて
くれぬか?」

「うんん…ヨンとテマン君がいれば
それでいい、だから気にしないで」

そう呟くと落ち着いたのか
ウンスは微笑んで見せた

枇杷の皮を剥き、ウンスの口の中に
放り込むと、更に満面の笑みを浮かべた

「それでね、あのつむじ風記憶があるの
五歳、六歳の頃、誘拐されかけた時
があってね…その時もお祖父さんの所に
いて、祠の前で一人で遊んでいたら
車に押し込められそうになって・・」

幼い頃の辛い記憶が、鮮明に甦り
がたがたと震えだすウンス

「案ずる事はない、俺がそばにおる故」

そう言うと、ヨンはウンスを抱き上げ
胡座の中に、ストンと座らせ
背から温もりが伝わるように
抱き締めていた


「ありがと、落ち着いた…でね…」

「ウンス、辛いなら話さずともよい」

「うんん、聞いて欲しいの
でね、子供だったから泣き叫ぶじゃない
アッパ、オンマって…その時祠から
あのつむじ風が舞って、引き込まれ
そうになったんだけど、アッパが
駆け付けてくれて
私は大丈夫だったけど、誘拐犯は…
つむじ風が収まったら消えていたの」

「・・ならば・・」

「まだ続きがあるの、私が中学生
くらいの時、お祖父さんは
亡くなったんだけど、その時祠の謂れを
初めてアッパが話してくれた
あの祠には、守り神が住み着いている
らしいの…
アッパも子供の頃、同じ目にあって
やっぱりつむじ風に、助けられた事が
あったんだって…話通じてるかな?」

ウンスは話終えると頚を傾げ
不安気に背後のヨンを見つめていた


「・・・通じておる、ならば
俺を、その誘拐犯とやらと思うたので
あろう…違いはないが・・」

ヨンは遠い目をし、寂しそうに
ぽつりと呟いていた

「そんなことない!今がこんなに
幸せなのよ、神様にだって邪魔する
権利はないわ!」

「そうであろうか・・・」

「そうよ、そうに決まってるわ
あったまくる!今度あのつむじ風が
舞ったら斬り刻んでやるわ!」

「ふっ…」

「奥方様、俺も手伝います!大護軍を
苦しめるつむじ風など、俺も許せません
あの時の俺はまだ若く、突然現れた
奥方様に、驚き戸惑いましたけど
今なら分かります、運命だったと」

「ほら、テマン君も言ってるじゃない
だから…ねぇ、一人で苦しまないで」

「・・・・」

「俺、寝床の支度をしてきます」

そう言ってテマンは気を利かせ
馬から荷を下ろしに消えて行く

「ヨン…」

ウンスは半腰の体勢で、ヨンに向き合い
唇を合わせる
だが、すぐに主導権は奪われ
激しく貪りような口づけと変わる

逃がすものかと、腰をしっかり
片手で押さえ、口内を舌で弄り
ウンスの舌を妖しく誘う

「はあ~ヨン…今日は無理だから…」

ウンスは息をすることもままならず
それを察したヨンが、漸く唇を離して
くれた…

「すまぬ・・・だがすべてが欲しいのも
事実…されど俺とて外でそのような
真似はせぬ」

「うん、分かってる…ふふふ」

見つめ合い微笑む二人…
テマンがわざとらしく
大声でヨンの名を叫び近づいてくる

「大護軍、あちらに寝床を
こさえました」

「行きましょう…ヨン」

「ああ…」


二人は立ち上がりテマンに案内され
寝床に向かう

そこには筵が敷かれ
焚き火の炎が揺れている

「背が痛いであろう?
俺が寝台になる故、ウンスは俺の上で
眠ればよい…」

「それは無理よ、ヨンが潰れちゃうわ」

「ふっ…俺はそれほど柔ではない」

ヨンはそう呟くと
筵の上に身体を投げ出し横になった

ウンスは申し訳なさそうに
ヨンの上に横になる
近くにあったウンスの外套をふわりと
掛けてやると、片手でウンスが落ちぬ
ように、しっかりその胸に抱く

「大丈夫?重くない…」

「ウンスの重さなど、何も感じぬ」

「そう…ありがと」

こうしてウンスは、ヨンの温もりに
抱かれ瞼を下ろした

テマンは近くの木に登り
二人には、背を向け寝ずの番をしたので
ある



一方日がまだあるうちの都での事

二度目となるサムとの待ち合わせに
心ここにあらずの、チュンソクがいる

「トクマン、チョモ俺は市中見回りに
赴く故、後を頼んだぞ」

「見回りなら俺もお供します
護軍一人で行くおつもりですか?」

「大護軍がおらぬのだ、留守の間に
市井に異変があれば困るゆえ
俺の目で、確かめ報告せぬばならぬ
故に一人でよい!」

いかにもごじつけと取れる
言葉を残し、チュンソクは兵舎の門を
くぐり市井へと脚を向ける


「チョモ!護軍変だぞ…見回りなら
一人では行かないよな?」

「そうだよな…」

「だろう…それに俺たちは、殿居明けと
言う事も忘れてないか?あれは
何かある!ちょっと行って見ないか?」

「止めておけよ、トクマンお前は
婚儀の折りの失態を忘れたのか?
見つかれば、死ぬまで練兵場を走らされ
るぞ」



「チュンソク様…お待たせして
申し訳ありませぬ」

「サ、サム殿…」

桜の花弁を彷彿させる淡い桜色の
チマチョゴリを纏い微かに
頬を染めながら、パン・サムは
チュンソクに声を掛ける

「チュンソクさま?」

見とれていた…某としたことが・・・

「すみませぬ、突然の文、ご迷惑では
ありませんでしたか?」

「いいえ、嬉しく思いました
チュンソク様から、もう一度お会い
したいと、文を頂けるとは
思いもよらず…」

恥ずかしそうに頬を染め
袖口で口元を隠し微笑むサム


「いた…!あの後ろ姿、護軍に違いない
女人と一緒?いつの間に…」

飯屋の陰に隠れながら
二人を見つけたトクマンとチョモ
あの堅物の護軍が女人と…と
驚きを隠せないでいるのだった

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