木春菊  [偕老同穴] 123 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「おお~」と歓喜の声が漏れ
あの方が叔母上に手を引かれ
中庭に姿を現す

「チッ」と思わず俺は舌打ちをしていた
だれにも見せたくなかった…
俺だけのウンスを・・・
「見てはならぬ」
そう怒鳴りたくなる

あの方は無論王族ではない
ファルオッを身に纏っているわけでも
ないが、あの衣の色はどこか懐かしい


「ヨン・・・おかしいかしら…」

「・・・・よう似おうておる」

髪は結い上げられ
ヨンの母の形見、翡翠の扇形
五徳の髪飾りが
ひっそり飾られ、だが存在感を十分
醸し出している
薄化粧を施し、春らしく控えめな桜色の
紅をひく
衣はウンスの希望に添い誂えた
ネロッセッ(苔色)チョゴリに白いチマ
そのチマには形見の五徳の髪飾りが
刺繍されていた

「ちょっと地味だったかな?
お母様の髪飾りを生かしたくって
叔母様にお願いしたの」

「そのような事はない
母上もきっと喜んで下さるに違いない」

「叔母様はもっと鮮やかなものに
するつもりでいたのに、悪い事
しちゃった…ヨンの正装も素敵よ…」

緩みそうになる頬を堪え前を向く
そこには笑みを称えた和尚が
袈裟を纏い立ち竦む

「そなたと嫁御の契りを結ぶ日が
来ようとは…拙僧も嬉しく思う
チェ・ヨンよ、よき嫁御を迎えたの
このように、亡き母上の形見を…すまぬ
歳を取ると涙脆くていかぬ・・・」

和尚は静かに涙を拭う

「和尚様、嫡男であるにも関わらず
久しくご無沙汰してしまい
誠に申し訳なく思っております
本日は、某とこの方の契りを和尚様に
結んで頂け、某は何も言う事は
ございませぬ」

そう言ってヨンは頭を垂れ
ウンスもそれに習い頭を垂れる

「王様、では始めて宜しいでしょうか」

「宜しく頼む」


和尚の契りを結ぶ経が厳かに
流れる中、王様の護衛に付くチュンソク
トクマンの瞼が霞んでくる


『大護軍…某は泣いてなどおりませぬ
男…故、されど・・・されど、誠に
おめでとうございます
迂達赤隊長として、某の前に突然現れ
もう幾つの戦を共に戦ってきたでしょう
彼の地のあの丘で、幾夜も過ごされ
肩を揺らしていたのを、某とテマンは
知っております
されど墓場まで持って行く所存
医仙様どうか大護軍をお頼みします
そうであろう…トクマン』

ふとチュンソクがトクマンを
見遣ると、鼻水をすすり
幾筋もの涙を流していた

『馬鹿な奴だ泣く奴があるか!』

そう怒鳴りたい気持ちをぐっと堪え
ため息を溢す


「永久(とわ)の契りを結ぶ経ゆえ二人は
幾年(いくとせ)も離れる事はない・・
これを二人にしんぜよう」

[形影一如]と刻まれた守り刀を
二人に手渡す

「けいえいいちにょと読む…影は付かず
離れず寄り添って行くであろう
そのような夫婦(めおと)となり
添い遂げる事を拙僧は望んでおる」


二人は懐深く守り刀をしまい込み
深く一礼する

「これより二人は夫婦(めおと)と
相成った、大護軍、医仙殿
余は、心から祝いを申す」

「はっ!ありがたきお言葉痛みいり
ます」

「大護軍、わしからも祝いを述べさせて
くれぬか、王様構いませぬか」

王様が黙って頷くのを見届け
ヨンとウンスはカン・ヨンジュに
向き直る

「カン殿」

「武官と文官と立場は違えど、この国を
思う心は同じ筈…そなたの腕と
医仙殿の素晴らしい医術が有る限り
この地は安泰と思うておる
本日は誠にめでたい…」

「カンさん、ありがとうございます
二人力を合わせどんな棘の道でも
越えて行きます」

そう言ってウンスは微笑み
軽く頭を下げる

「大護軍、例のあれはどうする?」

「王様・・・例のあれとは・・・?」

「ヨン…どうしよう」

ウンスはヨンの耳元でごそごそと呟く

「・・・!!ゴホッ王様…お戯れを」

ヨンの口からおかしな空気が漏れ
瞬時に朱色に染まる

「余は戯れなど言わぬ!」



俺は腹を据えた
ちらりと叔母上を見遣ると
ありがたい事に
背を向けてくれた『助かる』

ウンスの肩を抱くと瞳を静かに瞑る
愛しい人、たった今永久の契りを
結んだ俺だけの女人

俺も眼を瞑りそっと口づけをする
ほんの一瞬の出来事で俺の---は
主張し始める、『まだだ』

互いに瞼が開くと恥ずかしそうに俯く


「大護軍、義姉様、真おめでとう
妾はほんに嬉しゅうてならん…」

王妃様はにこやかに微笑まれると
隣に掛ける王様がその手をそっと握る


「さあ…行くがよい!屋敷で皆が待って
おろう…あの輿は余からの贈り物だ」

大門の方から屋根のない輿が
運ばれてくる

「アンジェ・・間に合ったのか」

「あたりまえだ、御者は俺が努める
迂達赤は王様のそばを離れることは
叶わぬからな、護衛は禁軍が受け持つ」

そう言ってアンジェはにやりと片頬を
上げる


王様、王妃様に一礼し
二人は輿に乗り込み王宮を後にする


「ヨン…凄っごく恥ずかしいんだけど
屋根がないから丸見えなんだもの」

「王様のお戯れにも程がある」

街道では

晴れの日の二人を拝み
ご利益にあずかろうと老若男女問わず
人で溢れ返っていた
禁軍の兵が馬車を囲むように
護衛している為近づく事はなんとか
阻止しているが…

「オープンカーならぬオープン馬車ね」

「あ、ごめん…」

「二人の折りには構わぬ、意味は伝わる
昨夜は遅かったゆえゆるりと話は
出来なんだ…泣いてなどおらなんだか」

「・・・ん?教えない…」

「夫婦であろう…隠し事は好かぬ」

そう言ってヨンはウンスの顔を覗き込む  

「・・寂しくて心細くて寝不足が
続いていたの・・・でもね…ヨン顔を
見た途端安心して今朝は寝過ごしたの
あ!ヨン明日からの暇をどうしよう
私、行きたい所有るんだけど
勿論一緒に行ってくれるでしょう?」

「ん?暇を賜ったのか」

「えっ?聞いてないの
十日暇を頂いたのよ、勿論ヨンと二人よ
おかしいわね…王様お忘れに
成ったのかしら?」

二人は顔を見合せ首を傾げる
アンジェの肩が小刻みに揺れたのは
気のせいだろうか…



「なあ~チュホンお前背が高くて
羨ましいよ…俺、まだお二人の晴れ姿
見てないんだ… 迂達赤違うから
中庭にも行けなかったんだ
こうして後ろ姿だけだよ、私兵だよ
俺は!」

輿のだいぶ後ろを、テマンがチュホンの
手綱を引き、とぼとぼと歩きながら
愚痴を溢すと、ぎろりとチュホンが
どんぐり眼をテマンに向ける

そして話を理解したのか
頭を背に回す仕草を見せた

「え!乗って良いのか…本当か?
落とすつもり違うよな、チュホン」

再びぎろりと睨まれる

「ごめん、冗談だよ!お前も
疲れているのに、悪いな~」

テマンは満面の笑みを浮かべチュホンに
跨がる

「見えるよチュホン!!ごめんよ
重たいか、大護軍が笑っているぞ
お前も嬉しいよな…」

チュホンの眼が潤んで見える
そう思っていたテマンだが…
ぽたりとチュホンの背に生暖かい
滴が落ちる

「・・・チュ、チュホン…お、俺が
泣いてる・・・」


「アンジェすまぬが、俺の馬とテマンを
横に並べても構わぬか…」

「どうしたの?」

「チュホンとテマンが・・・」


アンジェが部下に命じ
チュホンが並走する

「アンジェ暫し止めてくれ」

そう言うとヨン馬車から降りると
ウンスに手を貸し共にチュホンに近く

「すまぬ、テマン!!お前にいの一番に
この姿を見せるべきであった
俺の配慮が足りなかった…屋敷に
戻ればと思っておったのだ、許せ」

「いいんです、俺なんか・・後でも」

「そう言う訳にはいかぬ、俺の大切な
私兵だ!家族だ!」

「大護軍----」

テマンはチュホンの上で
顔をくしゃくしゃしながら泣き崩れた

まだ若いテマンが父であり兄と慕う
ヨンの晴れの姿が本当に嬉しかったのだ
チュホンも然り・・・


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