サザエさんーカツオ君の一大事

 

カツオ君!泣くことはないよ!サザエさんも気付いて懸命に走ったよ。

 

朝日文庫版35巻〔84頁〕・昭和42年

『麦藁帽子を被った、無精ひげを生やしたオジサンが、口笛を吹きながら、リヤカーを連結した自転車を、機嫌よさそうに漕いでいます。リヤカーには空き瓶、新聞紙の束、本、段ボールなどが積まれています』

『派手なワンピースを着たサザエさんが、右手を高く上げて「クズやさーん」と大声で叫びながら走っています』

『半袖のシャツを着たカツオ君が、四方八方に吹きだす大粒の涙を、右腕で払い落しながら懸命に走っています』

『麦藁帽子を被った、無精ひげのオジサンは、リヤカーから路面に降ろした新聞紙の束を解き、取り出した新聞紙を開いています。新聞紙の間に、花と枝のついた植物が、押しつぶされて、挟まれていました。オジサンは、それをサザエさんとカツオ君に見せて、「しょくぶつさいしゅう・・・アアこれね」と言っています。サザエさんは、息せき切って走って来た胸を、ホッとしたように抑えています。カツオ君は、まだ、涙は出ていますが、泣き止みそうです。オジサンが見せてくれた、新聞紙の間に押しつけられた植物を安堵して見ています』

 

お姉さんは、酷いね!カツオ君が、夏休みの間に、植物採集し、新聞紙の間に挟んで押し花にしていたのに、屑屋さんに売ってしまった。

カツオ君が、

「夏休みの自由研究で、植物採集して、夏休みの間に新聞紙の間に挟んで、やっと押し花にできていたのに、あれれ、その新聞紙を売り払っている」

と、

折角の押し花を、サザエさんがオジサンに売り払い、オジサンが持って行ったのに気付いて、

「姉さん、駄目だよ!おじさんに売った、新聞紙を取り戻して」

サザエさんは、

「そうだ!カツオの夏休みの宿題が挟まっていたのか、これは大変」

と屑屋さんの後を懸命に追っかけました。

 

カツオ君、お姉さんは、懸命に走ったようだよ。オジサンの自転車に追い付いたんだから、相当に一生懸命に走ったようだよ。

ハーハ、ハーハと息せき切っている。

 

カツオくんもかなり懸命に走ったようだね。

そうだよね、夏休みの間の苦労が、危ないところで消滅するところだったんだから。

カツオ君、今日は、何にも悪い事していないのに、また泣かされたね!

 

屑屋のオジサンは、自転車に連結したリヤカーを引いています。

リヤカーに色んな屑物を乗せて運んでいました。

ビール瓶などのビン類も、買ってくれていたようです。1本2~30円で買い取っていたのでしょうか。

こんな光景は、昭和の時代よく見かけていました。

リヤカーに積んで自転車で引いて運ぶ、草臥れたでしょうね。

 

今、便利になりました。軽トラックやミニバンが、少量の荷物を運んでいます。

確か、大村昆さんのコマーシャルで人気の小型の3輪車ダイハツミゼットが、リヤカーに変わり、今では、種々のメーカや車種の軽トラックやミニバンが、走り回っています。

便利になりました。

サザエさんー口数の多いカツオ君(2)

 

また余計なことを言うから、お姉さんにつねられるんだ!

 

朝日文庫版35巻〔3頁〕・昭和42年

『サザエさんの家に、小太りのオバサン達が沢山集まってきました。サザエさんは、オバサン達にお茶を差し上げようと、卓袱台の上に並べた湯呑にお茶を注いでいます。カツオ君がやって来て、「なにごと?と尋ねました。サザエさんは、すまして、「牛肉、ブタ肉ねさげのそうだん会よ」と答えています』

『遅れて、1人の脂肪太り気味のオバサンが、「こんばんは」と言いながら玄関の引き戸を開けて入ってきました。カツオ君が、直ぐに玄関に出ました』

『カツオ君は、人差し指1本を立てて、サザエさんの所の戻って来て、「もう一頭追加!と大きな叫び声で、教えてくれました』

『それを聞いたサザエさんは、カンカンに怒りだし、カツオ君のホッペを掴み、引きづっています。カツオ君は、頬っぺたを引っ張られて痛そうに付いていきました』

 

カツオ君は、また、やったね。口が軽すぎるぞ!

しかし、おばさん達は、皆さん太っているね!

まるで、豚のようだね。

遅れてやって来たオバサンは、特に、太っていて、豚肉のようだ。

そんなオバサンを見たら、つい一頭と言いたくなるよね。

 

しかし、ご婦人を動物扱いしたら、それは失礼だぞ。

サザエさんが、牛肉・豚肉と言うものだから、ついついオバサン達が、カツオ君に牛や豚を連想させ、思わず一頭と言ったんだろう!

しかし、本当に失礼だ。

サザエお姉さんが、怒るのは当然だ。

 

値下げの相談会とは何でしょう?

家庭の主婦が、集まって、

「最近、牛肉や豚肉が高騰しているわね!

こんなに高くなったら食べられないわ!

抗議しましょうよ!

と相談し、何処に抗議しに行くのでしょうか?

 

物価高騰に抗議する運動は、今も昔も、行われていたことが判りました。

サザエさんー口数の多いカツオ君

 

良いこともあり、悪いこともある。

 

1.朝日文庫版34巻〔36頁〕・昭和42年

『磯野家では、今日は、みんな揃ってコタツに入り和やかに過ごしています。お母さんが、籠にミカンを入れて持ってきました。みんなは、そのミカンを見て嬉しそうです。カツオ君は、お母さんの顔を【ジロリ】と見ています。お母さんは。口紅を少し赤く塗ってお化粧をしています。それを見たカツオ君が、「50のかおも松の内だね」と言いました』

『言われたお母さんは、手のひらを口元に当て大声で笑いました。コタツに入っていた皆も大笑いです。ワカメちゃんも笑っています』

『ある日、よそのおばちゃんが尋ねてきました。お父さんとお母さんが、お座敷でもてなしています。そこに、カツオ君もいました。カツオ君は、おばちゃんを指さして「50のかおも松の内だね」と言いました。お父さんとお母さんは、驚いたすまなさそうな顔をしています』

『カツオ君は、坊主頭の上に大きな瘤を乗せて、大泣きしています。傍にお盆にお茶碗を乗せて持っているサザエさんがいて、「いっでもみんなが笑うってもんじゃないの!と怖い顔をして叱りつけています』

 

2.朝日文庫版34巻〔122頁〕・昭和42年

『カツオ君が、神妙な顔をして、湯気が立ち上る茶碗をお盆に乗せて運んでいます』

『お座敷の座卓の前に,お婆さんが座っていました。カツオ君は,お婆さんの向かいに座り込んで、大げさに驚いたような様子で、「え!それでハハとおんなじおとし!!とお世辞を言っています』

『カツオ君は、なおも「じっにおわかいなぁ!!とお世辞を言い続けています。お婆さんは、うれしいのか、口をハンカチで隠し,大笑いしています』

『カツオ君が、祝儀袋を持っています。その袋を、サザエさんが,怖い顔をして睨みつけ、ワカメちゃんが羨ましそうに見ています。カツオ君は、困った顔をして「おとしよりをよろこばすのがなんでわるいんだい?と抗議しています』

 

カツオ君はいい子ですが、口が軽いのでしょうか、

そのため、良いこともあるが、悪いこともあるようです。

 

「50のかおも松の内だね」

この言葉の意味は、

「多分、50歳位になったお婆ちゃんでもお正月くらいは、口紅でも塗ってお化粧する。お婆ちゃんでも、口紅を塗れば、幾らか若く見える」

ことだろうと思いました。

 

本当の意味はそうだろうか?

疑問に思う人がいました。

 

それは次のようです。

【「五十の顔も松の内」

サザエさんの四コマ漫画で、カツオがフネに対し「五十の顔も松の内だね」と言ったら、家族にウケたので、磯野家を訪れた年配の女性に対しても、 カツオが「五十の顔も松の内だね」と言ったら、今度は怒られたのは何故ですか?

そのアンサーはつぎのようでした。

正岡子規の詠んだ句に因んだジョークですね。

口紅や四十の顔も松の内

要はもうおばさんのくせにといったニュアンスで「四十の女でも正月(松の内)には口紅など化粧をちゃんとするんだな」といった意味の句であり年配の女性を馬鹿にした言葉です。家族に言うのならジョークですみますが客人に言うのはあまりにも失礼な悪口なのです。】

 

こんなことですから、躾に厳しいお姉さまのサザエさんは、カツオ君の頭を、ゲンコツで、きつく叩きました。

相当きつかったようです。

カツオ君の頭の上には、Mサイズのミカンが乗っているような瘤ができていますから!

 

カツオ君の口の軽さは、こんな結果になるだけではないようです。

時折、嬉しいこともあるものだから、軽口をたたむことが止められないのでしょう。

 

この日は、カツオ君は、お婆さんが若いとお世辞を言っています。

カツオ君の前にいるお婆さんは、口の周りに大きな皺があるようですから、もう若くはないでしょう。

もう年だと気にしているお婆さんに、

【じつにおわかいな!!

などと感嘆の声を発するものだから、お婆ちゃんも嬉しいでしょう。

 

しかし、カツオ君の褒め方はなんだか変ですね!

「え?それで母とおんなじお歳!!

「じつにお若いな!!

これで良いんですかね?

何だか変です!

 

「ええ?それで母より10歳も年上」

「実にお若いですね」

と言うのならわかりますが!

あるいは、

「え?それで母とおんなじお歳!!

「母より10歳は若く見えます。じつにお若いな!!

ならわかりますが。

やはり何だか変です!

 

しかし、どうあれ、カツオ君が褒め上手だったのでしょう、お婆ちゃんは、嬉しくなって、カツオ君にお小遣をあげたようです。

 

サザエお姉さんには、きつく叱られたのでしょう!

カツオ君は

『お年寄りを喜ばせて何故悪い』

と口答えしています。

 

お姉さんは、今日は、暴力を振るわなかったようです。

おばあちゃんを、お小遣いを呉れるほど、喜ばせていますから、きつい顔して睨みつけるだけで済ましてくれました。

 

サザエさん―面白い落ち(141)

 

カツオ君、イタズラは止めよう。お父さんが可哀そうだ。

 

朝日文庫版33巻〔139頁〕・昭和41年

『カツオ君が留守番をしていると、お客さんが来て、包み紙で包んだ一升瓶をカツオ君に預けると、「ではおかえりになったらよろしく」と言って、玄関の引き戸をピシャリと閉めて帰って行きました。お客さんが出ていくと、カツオ君は、すぐに一升瓶の包み紙を少しだけ開いて中を見てみました。一升瓶を確認して、「おしょう油か・・」と言っています』

『お父さんは、帰ってきました。部屋に入ると、包み紙に「酒」と書いたのし紙が貼り付けてある一升瓶を目撃しました。お父さんは、ニッコリしハッとすると、「や!サケがきてるぞ!!と嬉しそうです』

『暫くするとマスオさんが帰ってきました。お父さんは、【首を絞め、毛をむしり取った一羽の鶏】をぶら下げて、「なんたるぐうぜんともだちにトリもらったんだ」とマスオさんの方に突き出しました。マスオさんは、すぐに反応し、買い物籠を手にすると、「ひとっぱしり、ネギとトウフを買ってきます!と家を飛び出していきました』

『台所で、エプロン掛けしたお父さんとおかあさんが、忙しそうに料理を始めました。お父さんがマスオさんに「そろそろおカンのよういたのむ!と包丁を握り、まな板の上に置いた、マスオさんが買ってきたネギを切りながら頼んでいます。台所の襖の陰にカツオ君が身をかくし「告白すべきかシラを切りとおすか・・・・」と身震いし悩んでいます』

 

カツオ君が、頂き物に「酒」と書いたから、お父さん達は皆そう思っているよ!

ばれたら、エライことになるぞ!

 

お父さんとマスオさんは、お酒が好きなようだね!

お酒とくれば素早い行動だ。

マスオさんは、直ぐに、豆腐とネギを買いに行った。鶏肉と豆腐とネギが入った鍋物ができるぞ。

これで、美味しく酒が飲める!

 

しかし、お酒じゃなく、カツオ君がいたずらした醤油と判ると、みんながっかりするぞ。

特に、お父さんは、相当怒るぞ!

早く、僕のイタズラですと、告白しないと、殴られるかもしれないぞ!

早く、マスお兄さんにも告白すべきだ、

そうすれば、またマスオさんがなんとかしてくれるよ!

お父さんと違って、「カツオ!酒買ってこい」とは言わないと思うよ、

多分、ネギとトウフを買って来た時のように、買い物籠を持って、酒屋さんに買いに行くと思うよ。

 

昔、戦後の貧しい時代、庭がある家では、鶏小屋を拵え、ニワトリを買っている家が多かったようです。

 

小さい頃、自分の家でもニワトリを飼っていました。

中学生の頃、器用だったので、少し大きめの鶏小屋を作ってニワトリを飼っていました。

小さいヒヨコを買ってきて、飼って大きくし、大きくなって何時までも飼っているわけではありません。

 

大きくなると、大人が無情にも首を捻り、息の根を止め、ぶら下げて羽をむしり、血を流して、調理していました。

 

友達に家でも、ニワトリを飼っていました。

或る日、遊びに行った時、処分することになり、首を絞め息の根を止めると、毛をむしり取りました。

ニワトリが、ほぼ裸になったら息を吹き返し、裸で逃げるのを、友達の家族が追いかけ回していた姿を思い出しました。

 

サザエさんの父さんが、「なんたるぐうぜんともだちにトリもらったんだ」と持って帰ったニワトリも、羽毛をむしり取られた裸の、首がだらりと伸びたニワトリでした。

 

カツオ君のお父さんは、酒と書いた一升瓶を見て、偶然貰ったニワトリもあり、マスオさんと、美味しく食べ、お酒を飲めると思ったのに、お醤油じゃそれは出来ません。

直ぐに、お酒じゃないお醤油ですと告白し、お父さんに謝り、マスオさんに助けてもらおう。

マスオさんは、お酒を買いに、ひとっ走りしてくれるよ。

サザエさん―意外な落ち(5)

 

ウェディングドレスは、若かりし乙女の頃の思い出です。幾つになっても、女にとって関係ないものではありません。

 

朝日文庫版33巻〔72頁〕・昭和43年

『サザエさんは、タラちゃんとマスオさんと一緒に、デパートの貴金属売り場にいます。サザエさんは、指輪やネックレスなどを陳列しているショウケースの前に座り込んで、シミジミと眺めています』

『サザエさんは、何時までも眺めて、その場を離れようとしません。遂に、マスオさんは、「オイもういくよ」と言うとその場を離れました』

『マスオさんは、タラちゃんを抱っこして、ウェディングドレスを着たマネキンが、幾つも立っている売り場に来ていました。まだ、貴金属売り場にいるサザエさんの方を見て、マスオさんは悲しげな顔をして「女ってどうしてああカンケイないものまでつくづくとみるんだろう!」と思わず声高に言ってしまいました』

 

貴金属は、矢張り女性にとって魅力的な物。しかし、マスオさんにとっては、それほど関心はないようです。

だから、買い物を早く済ませ帰ろうと思っているのに、サザエさんは、何時までも、眺めている。

遂に、堪忍袋の緒が切れて

「サザエ、もうやめてくれないか!いくら眺めても、買えないのだから、もう帰るぞ!

と、爆発するのでしょうか?

 

マスオさん、怒らない!怒らない!

ほらごらんなさい、ごそごそと動き出した者がいるぞ!

 

落ちは次のようです。

『ウェディングドレスを着たマネキンが沢山並んでいる売り場の間から。背も曲がり、着物を着た老婆とワンピースを着た二人の老婆が、杖をついて「サまいりましょう」と言いながら、恥かしそうにゴソゴソと出て行きました。マスオさんは、顔を赤くして恐縮しています』

 

2人の老婆達が、ウェディングドレスを眺め、遠い昔を思い出すように何かを楽しく語り合っていたのだと思います。

それなのに、マスオさんの余計な

「女ってどうしてああカンケイないものまでつくづくとみるんだろう!

が、老婆たちを、酷く傷つけ、老婆たちは、あの男が自分達のことを言っていると誤解してしまい、その場にいたたまれず、恥かしそうに立ち去ったのです。

サザエさん―意外な落ち(4)

 

サザエさんのお父さんは、釣もやるようです。

 

朝日文庫版33巻〔73頁〕・昭和43年

『サザエさんのお父さんが、釣竿ケースを肩に担ぎ、クーラボックスを肩から下げ、洒落た釣用帽子を被り、颯爽と家の門を出て行きます。お母さんとサザエさんが、見送りに出ています。お母さんが、「フネからおちないでね」と言い、サザエさんが、「救急車ではこばれたりしちゃいやよ!」と言っています。お父さんは、「だいじょうぶ」と意気込んでいます』

『救急車が、猛スピードで走っています』

『救急車は、サザエさん家の前で止まりました。救助隊員が救急車のバックドアーを開け、担架に横になったお父さんを運び出しました。慌てて出て来た、サザエさんのお母さんとサザエさんは、お父さんの姿を見て驚いています』

 

どうしたのでしょう?

2人が心配していたとおり、フネから落ちて、救急車で運ばれてきたようです。

大変なことになりました。

しかし、フネから落ちたのではなく、別の理由で救急車で運ばれて来ました。

 

落ちは、次のようでした。

『救助隊員、いや、救急車の運転手さんが60cmもあろうあと思われる巨大な鯛の尻尾を持ってぶら下げ、二人に見せ、「気の小さなかたでね、思わぬエモノをつりあげ、人事不省(じんじふせい)になられたんでネ」と呆れたように説明しています』

 

と言うことでした。

 

巨大な鯛、それは、選挙で当選した時のお祝で、当選者が得意になってぶら下げるもののようです。

 

60cmくらいはあろうかという鯛は、昔、見たことがあります。

妹の結婚式でした。

かなりの迫力でした。

こんな巨大な鯛を、つり上げたら、大変だったでしょう。

 

サザエさんのお父さんは、釣り上げて見て、余りの大きさに、驚いてそのまま卒倒したのでしょうか?

 

気が小さくなくても、卒倒するほど驚いたと思います。

人事不省とは、面白い表現です。

倒れて昏睡したのでは、救急車で運ばないといけません。

困った人です。

 

お父さんは、気がついてどうするか楽しみですね!

多分自慢するだろうな。

「船に乗って、可なり沖まで出たんだ。船頭さんがアミを撒き、この辺が釣れそうだと言うから、早速、糸を投げ入れたよ!なかなか引かない。待ちくたびれて眠くなっていたら、グググッーと来た。それ来たぞと、リールを巻こうとしたが、びくともしない。逆に強く引かれて、フネから落ちそうになったよ。俺が大騒ぎしたものだから、船頭さんが慌てて駆けつけて、俺の釣竿を奪うと、懸命に魚と戦ってくれた。オジサン網を取ってくれと言われて、傍にあった網網を取ってやった。ところが船頭さんは、違う違うそれじゃ駄目だ、あそこの大きな網を持ってきてくれと言うから、急いで大きな網を持ってきて渡した。船頭さんは、暫く魚と闘っていた。その大きな網のなかに入れた鯛を取りあげて見せた時、俺は、その巨大さに驚いて人事不省になった。救急車で運ばれて面目ない」

 

サザエさんーカツオ君

 

煽てに乗るような僕じゃない。

 

朝日文庫版34巻〔22頁〕・昭和42年

『サザエさんとお母さんがコタツを挟んで、お話し中です。富豪の家に御手伝いに通っているサザエさんが,お母さんに、「ひるまひとりでたいへんでしょう」と尋ねています。お母さんは、打ち消すように「ところがカツオがおだてがきくたちでね!!と答えています』

『丁度、そこへ前掛けをしたカツオ君が、湯気の立っている淹れたての2杯のお茶をお盆に乗せて、しおらしい顔をして運んできました。カツオ君は、「お茶でもどうですか」と言うと、お母さんが「マアきがきくこと」とニッコリと答え、サザエさんは、そんなカツオ君に驚いています』

『コタツの上に2杯の茶碗を置くと、タラちゃんがやって来てサザエさんの背中に甘えて飛び付きました。カツオ君は、すかさず「ママはおつかれよいらっしゃい」とおいでおいでをしています』

『カツオ君は、座り込んでタラちゃんを抱っこすると、タラちゃんの口に哺乳瓶を含ませ、「いっこうにおやくにたちませんで」とサザエさんに向かって言いながら、ミルクを呑ませています。サザエさんは、唖然とした様子で、お母さんはニッコリと微笑んでいます』

 

カツオ君!そこまでやることはないと思うよ。

なになに、お代は戴くって!

何だ、そんな魂胆か!

 

お母さんが言うには、カツオ君は煽てがきく質だそうです。

カツオ君は、お母さんに、きっと、こう言われているんだろう。

『サザエは、お金持ちの家に御手伝いに通っているから、カツオはお利口だからタラちゃんの面倒を見てくれるよね』

 

お母さんは、サザエさんにこう言う、

「カツオは、直ぐ煽てに乗る性質だから、お姉さんが困っているのだからと、手助けをして頂戴と言えば、すぐ言うことを聞く、タラちゃんの面倒も良く見るよ」

カツオは、良い子だから、お母さんのおだてに乗って、サザエさんがいない時は、タラちゃんの面倒を見ると言うのです。

 

しかし、カツオ君は、お母さんの煽てに乗ってタラちゃんの面倒を見ているようには思えません。

 

自ら冷静に状況を見極めて行動しているようなそんな気がします!

カツオ君は、内心、きっとこう言っているのでしょう。

『お姉ちゃん、タラちゃんのことは、お母さんに面倒をみさせていないよ。ボクが、万事、ちゃんと面倒見ているよ。その代りお駄賃は少しだけ高いよ!

そして、

「お姉さんが、アルバイトしている間は、お小遣いが稼げる」

と思っているようです。

サザエさん―面白い落ち(140)

 

言い間違いも、頭が悪いためと叱られるカツオ君。そんなことどうでも良い、早く金出せ!

 

朝日文庫版33巻〔49頁〕・昭和41年

『天井からぶら下がっている電灯が灯った部屋で、サザエさんのお父さんは、床についていました。すると、カツオ君が、「おとうさんたいへんだ はくちゅうごうとうだ」と叫びながら、部屋の中に駆け込んできました。お父さんは、ガバと、跳ね起き、ビツクリ仰天しました』

『お父さんは、夜になって寝ているのに、カツオ君が「はくちゅう」と言ったのが間違いだと気づき、「はくちゅうってひるのことだぞ」と注意しました。カツオくんも、間違ったこと言ったと気付いたようで、「そうか・・・・・」と頭を引掻いています』

『お父さんは、カツオ君に説教を始めました。「いま夜中じゃないか、よーくかんがえてものをいわなくちゃ」。うるさいふたりに起こされたお母さんも、傍に座り込み、「テストだって、そそっかしからお点がわるいのよ」と余計なことを言い始めました。2人に小言を言われているカツオ君は、泣き出しそうな顔をしています』

『部屋の襖の傍に、もう一人、男がいました。その男は、無精ひげを生やし、頬かぶりをして、出刃庖丁を畳に突き刺し、恐ろしい顔をしています。そして、こう言っています。「ヤイヤイそっちのはなし、あとにしてもらいてえ!!と息巻いています。お父さんとお母さんは、その怖そうな髭面の男に、畳みに手を突き、深々と頭を下げて「どどうもしつれいしました」と謝っています。カツオくんも恐縮しています』

 

カツオ君、君は悪くないと思うよ。

恐ろしい強盗が来たんだよね。

夜中か白昼かは問題じゃない

恐ろしく怖そうな強盗が、出刃包丁を持ってやってきたのだ!

そんな時、今は、白昼かな!夜中かな!などと考える余裕はないよネ!

 

強盗さんも、そんなことは問題じゃない!

「俺は強盗だ!早くカネを出せ」

と言っていると思います。

 

そんな時、父と母が、

「息子は、頭がよくない、よく物事を考えないから、成績が悪い」

などと言い争っている。

 俺は

「カネを出せ」

と言っているんだ。

『お前達の息子は、物をよく考えない、アホのバカたれでもどうでもよいんだ!早く金を出せ。くどくどと、俺の前で、お前の息子が、物をよく考えないから成績が悪いなどと、俺に聞かせてくれなくてもよい。その話は、俺にカネを出した後、じゅっくりとやってくれ』

 

遂には

「はやく金を出せ、この出刃庖丁が見えぬか」

と脅してくるでしょう。

強盗の剣幕に、お父さんとお母さんは、

「申し訳ありません」

と謝っています。

その方がいいです。危険です。

白昼強盗と侮辱された、夜に現れた本格的強盗は、侮辱されたと怒っています。
畳に突き刺している出刃包丁を、何時、手にするか判りません。

サザエさんに見る昭和(35)

 

通勤バスでは、今は見られない風景でした。

 

朝日文庫版33巻〔25頁〕・昭和41年

『バス停に通勤バスがやってきました。小太りのサラリーマンらしき男が大き目のカバンを小脇にかかえバス停に向かって走ってきました。バスが止まりました、ドアーが開き、車掌の制服制帽、切符販売専用のバックを肩にぶら下げた女性が現われ、走ってくる男を見ています』

『車掌さんは、息せき切って走ってくる男を見ると、ドアーをピシャリと閉め。オーライと発車の指示をしました。男は両手を挿し延ばしていますが、乗せてもらえませんでした』

『後部座席に座って、一部始終を見ていたサザエさんのお父さんは、キリリと怒った顔をして、車掌さんに向かって、「キミあんまりじゃないか」と思わず大きな声で注意しました。突然注意された車掌さんは、ホッペをふくらませて不満そうです。乗せてもらえなかった男は、バス停の表示板に立って手を大きく振っています』

『車掌さんは、サザエさんのお父さんから、プンと顔をそらすと、「ふうふのケンカにくちをはさまないでよ」と、反発してきました』

 

まだ、昭和41年頃は、通勤バスなどには、女の車掌さんが乗っていて、車内でキップを販売していましたよね。

女の車掌さんは、通常、紺色の制服制帽で、キップと金銭が入った専用のバックを肩からぶら下げていました。

乗り込んで、カネを手にして、【○○まで】と言うと、まるで大きな巾着のようなバックの口を大きく開くと、中からキップの綴りを取り出し、一枚切り取ると、ハサミでチョキチョキと印を入れてくれました。

 

綺麗な美人の車掌さんもいました。

そんな車掌さんに惹かれてバスに乗るのが楽しみな若者もいたでしょう。

若者は、アタックして上手くいけば、夫婦になる。

そんな、人妻車掌さんも確かにいた筈です。

 

サザエさんのお父さんは、それに気がつかなかったようです。

やっと、バスに追い付いて乗ろうとした男を、無情にも乗せてやらない車掌さんを見て、サザエさんのお父さんの正義感は、爆発しました。

車掌さんを叱りつけ、乗ろうとした男が旦那で夫婦喧嘩中だと知ったのです

しかし、その車掌さんが夫婦喧嘩しているのならば、乗せてやらないと言うこともあるでしょう。

意見したお父さんは、余計なお節介をしたことなります。

 

こんなことは、今の通勤バスでは起こりえません。

今、通勤バスは、殆どがワンマンバスです。

待っていると、バスが来て、扉が自動で開き、乗り込むと、料金箱があり、その箱に乗車料金を投げ込むと、お釣りがある時は出てきます。

つい最近では、磁気カードを料金箱の上にかざすだけです。

 

降りるときは、ボタンを押して、「止まってから席をお立ちください」と書いてある通りにして、行き先で降りることができます。

 

今、通勤バスには、女の車掌さんはいません。昭和の時代とは変わってしまいました。

いろいろな思い出が蘇ってきます。

サザエさんの素直な落ち(35)

 

頭の天辺に髪の毛が一本しか残っていないお父さんは、お母さんの髪の毛が、味噌汁のなかに入っていると、ヒガミでいます。お父さんは、頭の天辺に残った一本の髪の毛は抜け落ちないように大事にしていますので、そのヒガミようは大変なものだったのでしょう。

 

朝日文庫版33巻〔70頁〕・昭和41年

『丸い小さな卓袱台でサザエさんのお父さんが食事をしています、食卓の上には、父さんの分だけ、ご飯のお茶碗、味噌汁のお椀、お皿、湯呑みが乗っています。お父さんは、1人で食事中に、味噌汁のお椀の中に何かを見つけ、箸で摘まんで持ち上げています。箸に摘まんでいるのは一本の髪の毛でした。お父さんは、箸で摘まんでいる髪の毛を、お母さんに見せて、「おツユにかみの毛がはいってました!!と叱っています。お父さんの傍にやって来た、お母さんは、畳に膝まづいて深々と頭を下げ、「あいすみません きをつけます」と謝っています』

『お母さんは、台所に行くと洗い物を始めました。食器を洗いながら、「ヒガミだわよ、かみの毛というとにかどたてるの」といいながら愚痴をこぼしています。丁度、その時、お盆に、茶碗とお椀と湯呑を乗せて持ってきた、お父さんは「どうして?と言っています』

『お母さんは、皿を洗いながら「うすいからじゃないアハハハハ」と高笑いしました。それを聞いたお父さんは、カンカンに怒って、お盆を流しの台の上に荒々しく置きました』

『お父さんは、プンプンと怒り、部屋を出ていきました。お父さんに厭味を聞かれたことに気付いたお母さんは、「マア!!このごろおとうさんのこえカツオとそっくりなのと言っています。何時の間にか傍にいたカツオ君は、素知らぬ顔をして、お父さんを見ています』

 

お母さん駄目じゃありませんか!

そんなことをしたり、言ったりしたら、お父さんは、大きく傷つくでしょう。

お父さんは、もう既に頭の天辺には一本の髪の毛しか残っていません。それは大事にしているのです。

お母さんのフサフサの髪の毛を、これ見よがしに、おミソ汁の中に一本落としただけでも、

「この髪の毛は勿体ない。俺は、天辺に残った髪の毛を大事にしていると言うのに」

と思うでしょう。

 

そこで、ついつい、ヒガミっぽく

「おツユにかみの毛がはいってました!!

と言ったのでしょう。

本当は、ただそれだけなのに、お母さんに、

「ヒガミだわ」

などと言われた。その上、

「かみの毛のことを、とやかく言われるとにかどをたてるの」

などと重ねて言っている。

 

それは、お父さんは、怒るでしょう。

だから

「どうして」

とその訳を聞きたいのです。

それに答えるように、お母さんが、言った

「うすいからじゃないアハハハハ」

とはなんですか!

 

お父さんが、最も気にしていることをズバリと言ってしまった。

お母さんは、カツオ君が

「どうして」

と言ったように聞こえたので、思いっきり、

「うすいからじゃないアハハハハ」

とやってしまったのですね。

 

子供は大きくなります。

男の子は、丁度、カツオ君くらいに成長してくると、声変わりをし、大人の声に変わるのです。

お母さんは、

「カツオの声は、最近、お父さんの声に似てきたわ」

などと思っていたのに、ついうっかり、お父さんの声を、カツオ君の声と聞き違えたのでしょう。

 

逆に、声変わりして行く息子さんの声を、お父さんの声と勘違いすることもあり、不都合なことが起こるかもしれません。注意しましょう!