サザエさん―傘(31)
100円で買える便利な折り畳み傘。勝って置きましょう。
朝日文庫版32巻〔104頁〕・昭和41年
『激しい雨が降ってきました。傘を持っていなかったマスオさんは。バスを降り、鞄を抱えて懸命に走っています』
『バスを降りて走り出したマスオさんに、少し遅れて、サザエさんが「あなた」と叫びながら傘を持って駆け寄ってきました。マスオさんは、すぐ気付き、「おお」と言いながらサザエさんの方に駈け出しました』
『二人は家に帰りつきました。玄関で、びっしょりと雨に濡れた傘を畳んでいます。そこへカツオ君が出てきました。カツオ君を見た、マスオさんが、「ちょうどばすのていりゅう所で」と言うと、サザエさんが「あえたのよ!」と嬉しそうに言いました。するとカツオ君は、「ばかだな二人とも」ときっぱりと言いました』
『カツオ君は、マスオさんのカバンを開けて、オリタタミ傘を取り出しながら、「けさ折たたみカサいれてたじゃないか!」とあきれたような顔して言い放ちました。マスオさんとサザエさんは、アチャアと頭を押さえています』
朝、出勤の時、今日は雨になるぞと折り畳み傘をカバンに入れる。
便利ですね。100円ショップが現れてから、そこでも100円で折り畳み傘が買えます。世の中は変わりました。折り畳み傘が出始めたのは1950年代半ばということです。しかし、今、100円で帰るのです。
嵐でもなければ、雨になりそうな時、100円の折り畳み傘をリュックに入れて出かけます。雨に濡れた折り畳み傘は、バスや電車の中では他人に迷惑をかける。ビニルの袋もリュックの中です。濡れた傘は、ビニル袋に入れて、他人に迷惑をかけない。最低のマナでしょう。
サラリーマン時代は、確かに、カバンの底に折り畳み傘を横たわせていました。晴れた日々が続くと、折り畳み傘がカバンの底に入っているのを忘れてしまうことがあります。この忘却は、恥ずかしいことでもないでしょう。
しかし、マスオさん・サザエさん夫婦は、忘れてしまうのが速すぎます。そろって健忘症の兆候でもあるのでしょうか?
何しろ、朝出勤の時、カバンに入れた折り畳み傘です。少なくとも約9時間前のことで、健常者であれば、これくらいの時間、物忘れはしません。しかし、忘れたのですか?危ない、健忘症の兆候が現れてきました。