サザエさん―傘(41)

 

傘を開くときは、作動ボタンを押せばパッと開きます。服のボタンではりません。

 

朝日文庫版40巻〔133頁〕・昭和45年

『サザエさんのお父さんとお母さんが、一緒に買い物に出かけました。お父さんは、スーツの上着を右手に持ち、左手に買い物の紙袋をぶら下げています。お母さんは、スーツを着て、左腕に傘の手元を引っ掛けて持ち、両手に包装紙に包んだ2個の箱を重ねて持っています』

『買い物も済ませ家に帰っていると、突然、雨が降り出しました。二人とも空を見上げ、お母さんが、お父さんに「あなたボタンおして」と頼んでいます』

『お父さんは、「どれだい?」と言いながら、お母さんのスーツの背中に一列に並んでいるボタンを見て、指で押そうとしています』

『お母さんは、「いやだカサのボタンよ」と言うと、両手で持っていた2個の箱を左手だけで持つと、自分の左腕にかけていた傘を、右手に持ち、傘のボタンを押して、パッと開きました。お父さんは、ア!ボタンとは、傘のボタンのことか、間違った!と言わんばかりの恥ずかしそうな顔をしています』

 

お父さんは、「ボタンおして」と言われて何を思ったのでしょう。ボタンは、どこにあるかな~? お母さんを見たら、お母さんのスーツの上着の背中に、ボタンが四個も並んでいる。「エート!どれを押せばよいのだろう」と考えました。が、どれかわかりません。これかなと一番上のボタンを軽く押しながら「どれだい」と言ったのです。

 

お母さんは、背中に、1番上のボタンに触れているお父さんの指を感じ、何しているんだろう?お父さんは、と思い、雨は降ってくるし、少し苛立ってきました。両手で持っていた重ねた箱を、左手一本で持つと、右手で傘をシッカリと持ち、傘の作動ボタンをパチッと押しました。傘はパッと開きました。お父さんは赤い顔をしています。気がつかなくて面目ないと思っているのでしょう

カサにもボタンがあるのです。作動ボタンと言うそうです、ボタンを押すだけで、傘はバネの力で勢いよくパチッと開きます。スーツの背中のボタンを押しても、傘は開きません。

サザエさん―傘(40)

 

コウモリ傘で、ゴルフの素振りは人の迷惑になり、危険です。しないで下さい。

 

朝日文庫版40巻〔102頁〕・昭和45年

『駅のホームです。スーツを着た若いサラリーマンが、コウモリ傘を逆さに持ち、傘の?型の手元をゴルフクラブのヘッドに見立てて、スイングをしています。その様子を、顔の大きさに似合っていない小さな眼鏡をかけ、眼鏡は団子ッ鼻に乗ってかけ、鼻の下にチョビヒゲをはやした、柄物のスーツを着た太ったオジサンが、腕を組んでジーッと見ています』

『若いサラリーマンは、思いっきりスイングしています。オジサンは、サラリーマンから目を離さず長いこと見続けています』

『オジサンは、何を思いついたのでしょう、右の拳を、広げた左の手の平にパチンと叩きつけ、パッと明るい表情をしました。小さな眼鏡の奥の目玉もまんまるに開いています』

『太ったオジサンは、傘屋のご主人でした。開いた傘や、いろんな種類の傘が店先に陳列されています。マスオさんが、その店先にやって来て、珍しい傘があると取り上げました。その傘は、傘の手元がゴルフのヘッドに加工されたコウモリ傘でした。マスオさんは、そのコウモリ傘に驚いています』

 

確かに「傘の手元がゴルフのヘッドに加工されたコウモリ傘」をサザエさんに紹介されていたと思っていましたが、ここにありました。

コウモリ傘を逆さに持ち、ゴルフホームのチェックをしている人は見かけましたが、オジサンのように、スイング、いやそれ以上に、フルスイングをしている人を見たことはありません。

しかし、この開発意欲が秀でたと言うか、金儲けにたけたオジサンは、コウモリ傘の手元をクラブヘッドにすれば、ホームでも振り回す者が絶対にいると確信を持ったようです。

そんな人のために、そうだ!新製品を出そう。手元がゴルフヘッド型のコウモリ傘だ!

 

しかし、こんなコウモリ傘は、危険が多すぎます。ウッドのヘッドであれば、フルスイングされたら、危険です。シャフトとなる中棒も頑丈でなければ折れてしまい、危険です。

このようなコウモり傘を、駅のホームで振り回すのは危険です。

 

危険でないゴルフのグラブヘッドならば、パタ。パタのヘッドならば、いろんな形があり、新たなデザインも考案できる。

多分、利口なオジサンは、ウッドやアイアンのヘッドは、振り回して危険だから売れないだろうと気づくでしょう。

オジサンも、かさの手元を、パタのヘッドにして、ゴルフクラブ仕様のコウモリ傘を売り出すか、あるいは、やめてしまえと思うかどちらかでしょう。

 

ゴルフグラブ仕様のコウモリ傘など、実際に販売されたのでしょうか?実際に見たことはありません。そんな、手元がゴルフクラブ仕様のコウモリ傘など必要はないでしょう。やってはいけない事ですが、普通のコウモリ傘で、ゴルフの素振りくらいはできますから。

サザエさん―傘(39)

 

傘は、隠れ蓑にもなります。

 

朝日文庫版36巻〔130頁〕・昭和42年

『和服の上にレインコートを羽織った、丸顔で、肥満体の奥様が、雨の中、傘をさして歩いています。彼女は、前方からやって来る人が、知っている人だと気づいて、「アラおくさま!」と声をかけています』

『あら奥様と言われた人は、直ぐ近くまで近づきました、その人は、レインコートを着て、バッグを持ち、傘を深くさしています。すれ違いざま、奥様は、その人に「サザエさんじゃありません!」と確かめています』

『と、サザエさんと言われたその人は、ますます傘を深くさして、すれ違いました。その人は、何にも言わず、黙って行ってしまったので、奥様は、怪訝な顔をして振り返っています』

『奥様が、すれ違って、行ってしまった後、その人は、傘を上にあげました。その人は、確かに、サザエさんでした。サザエさんは、傘も中で、ソフトクリームを食べていました。サザエさんは、顔を赤くして、いたずらっぽく舌をぺろりと出しています』

 

甘いものが好きなサザエさんは、雨の中でもソフトクリームが食べたかったのでしょう。

歩きながら食べても、雨の降る暑い日は、傘の下で、行き交う人たちの視線を避けて、おいしいソフトクリームが食べられます。

ところが、目が良いというか、勘が良いというか、そんな人がいるものです。

傘の下でソフトクリームを食べながら歩いていた、サザエさんは、いち早くそんな人を見つけたのです。

アラあの人だ、やばいと思ったのは、サザエさんの方が先でした。

しかし、相手の奥様も、勘がいいもので、サザエさんだと私のことに気付いたようでした。

なぜ気付いたのかしら?私の体型かな、きているコートかな?

築かれたらマズイ、おいしいソフトクリームを食べているのを邪魔されたくない。

こんな時に、傘は大変役立ちます。深くかぶるようにさすと。相手からも、此方が見えず、此方からも、相手が見えなくなるのです。

この際、「はい!サザエです」とは絶対に言えないので、傘を深くかぶり黙ってすれ違いました。

奥様は、確かにサザエだと思ったのでしょう、おかしいなと怪訝な顔をしています。

しかし、おいしいソフトクリームを食べている姿は、絶対に見せたくありません!いい年したレディですから、やはり見つともないのです。

サザエさん―傘(38)

 

傘がほしい時、突風で飛んできた傘を受け止めても「奇跡」ではありません。

 

朝日文庫版35巻〔87頁〕・昭和42年

『マスオさんが、コートの襟を立て、雨の降る中、身をすくめながら、「きょうわすれてくるなんて」と愚痴りながら交差点を歩いています』

『マスオさんは、雨の中を歩きながら「あーカサがほしい」と独り言を言っています』

『アレ!マスオさんが、コウモリ傘を持っています。ハッとした様子で、「きせきだ!!」と驚いています』

『マスオさんの頭の上の陸橋から、オジサンがマスオさんの方に手をさしだして、「オーイおれのがとばされたんだ~~」と叫んでいます。マスオさんは、陸橋で叫んでいるオジサンを見ています。マスオさんが歩いていた交差点には陸橋もあり、傘をさした人たちが歩いています』

 

嫌な雨だな!傘が欲しいと、思いながら雨に濡れて歩いているとき、ふと気づいたら傘を持っている。そんな奇跡が起こりうるでしょうか?

そうです。そんなことは、奇跡でもなんでもありません。おおげさに驚かないでください。傘をさして歩道橋を歩いていた人が、最近よく起こっているような、突風に傘を飛ばされただけです。飛ばされた傘は、マスオさんの手の中に飛んできて、マスオさんは、無意識に傘の柄を握っていたのです。奇跡でもなんでもなく、自然現象が生み出す当たり前の出来事です。

マスオさんも、お大袈裟ですね。ただ飛んできた傘を持って「奇跡だ」と叫んでいる。奇跡とは、「常識では理解できないような出来事、超自然現象」を言うそうです。また、マスオさん、あなたは、ただ陸橋の下を歩いていただけです。自然現象の突風が吹いてきて、橋の上を歩いている人が、しっかりと持っていなかった傘が吹き飛ばされ、マスオさんの方に飛んできたのを、上手に掴んだだけです。重ねて言います「奇跡ではありません」。上手く受け止めたあなたが偉いのです。あなたが受け止めた傘は、上から叫んでいる人に早く返してあげましょう。上の人も傘がなく濡れて困っています。

サザエさん―傘(37)

 

壊れたコウモリ傘でも、開いたほうが良い時があります。

 

朝日文庫版35巻〔48頁〕・昭和42年

『雨が降っています。コウモリ傘を持ったサザエさんのお父さんが、和服にコートを羽織った、豊満な奥様の傘に入れてもらって、歩いています。お父さんが、「すみません」とお礼を言うと、奥様は、すました顔をして、「イーエ」と言っています』

『そんなお父さんを、すれ違う女性や男性がジロジロと見ています、すれ違う人たちの注目を浴びて、畳んだままのコウモリ傘を手に持って、奥さんの傘の中で恥ずかしくなった、お父さんの顔は、真っ赤になっています』

『お父さんは、畳んだままのコウモリ傘を持って、恥ずかしくて悲しそうな顔をして、奥様の傘の中に入って歩いています。更に、すれ違う自転車の乗った、レインコートで雨を防いでいるクリーニング店の若者や。セ―ラ服を着た女学生などが、振り返って、お父さんを見ています』

『お父さんは、奥様の傘の中に入ったまま、コウモリ傘を半開きにして、引きずるように持っています。お父さんが半開きにしている傘は、骨が折れ、大きく破れています。お父さんは、自分の持っている傘が、骨が折れ、破れた、傘として役に立たないので、奥様の傘の中に入っていることを、すれ違う人達に見せています』

 

お父さんはコウモリ傘を持っています。雨が降ってきたのに、傘を手に持って雨に濡れていると、見知らぬ豊満で裕福そうに見えるご婦人が、「入りませんか」と入れてくれました。お父さんは、鼻の下を長くして、喜んで入れて貰いました。

 

しかし、他人は、チョビヒゲの冴えない中年の男性が、豊満で裕福そうな奥様の傘の中に、傘を持っているのに開かずに入っているのが、奇妙にしか見えないのです。そうですよ!お父さん、女性と一つの傘に相合傘よろしく、歩いていても、豊満で裕福そうな奥様では、お父さんでは、似合わないのです。

だから、すれ違う人たちが皆振り返って見るのです。

 

鈍感なお父さんでも、あまりにもジロジロ見られると、気付きますよね。

お父さん、傘を持っているのに、どうして傘をささないのですか?粋な奥様と一つの傘の中の方が良いのですか?

 

ほとんどのすれ違う人たちに振り向かれ、恥ずかしくなったお父さんは、傘を開かない理由を言いました。

駅に着いたら、かなりの雨だ。駅を出て傘を開いたら、骨が折れ、大きく破れ、傘として役に立なかったんだ。仕方なく畳んだまま手に持って歩いていたら、その奥様が親切に「入りませんか」と入れてくれたんだ。でも、奥様があまりにも豊満で裕福そうな人だったので、私のような冴えない男とは、似わなさ過ぎたんだね!すれ違う人たち皆が振り返ってみるんだ。これはまずいと思ったので、持っていた傘を開いたまま手に持つことにしたんだ。これで、すれ違う皆さんは、私の傘が骨が折れ、破れて傘として、役に立たないから、奥様の傘に入れてもらっているのだと理解してくれるだろう。私は決して、喜んで奥様の傘の中に入っているわけではありません。

 

傘を、開いてみたら、骨が折れ、破れていて、役に立たないということが、先日ありました。出かける前、天気予報を見ていたら、雨が降り出すので、折り畳み傘を持って出られたら良いと言っていました。出かけるとき、雨傘入れに、折り畳み傘があったので、雨に濡れた時のためビニル袋に入れ、リュックに入れて出かけました、バスを降りた時、かなりの雨が降ってきました。「やはり降ってきたか、でも大丈夫」、とリュックから折り畳み傘を取り出し、開きました。ところがその折り畳み傘は、骨がバラバラに折れ、開きませんでした。仕方なく濡れて行きました。役に立たなかった折り畳み傘は、帰りにスーパのゴミ箱に捨てました。

あと一つ、傘についてのつまらぬ話、雨が今にも降り出しそうな日、バスを降り。区役所の裏口から館内に入りました。その入口に傘入れの箱が置いてあり、その中に数本の傘が入れてありました。そして、「使ってもいい、しかし、用済み後、必ず返却してください」との注意書きがありました。それを見て、今にも降り出しそうな気配でしたので、これ幸いとビニル傘を持ちました。館内を通り過ぎ、表口から出ました。そこから見る空は、晴れかかっていました。持ってきたビニル傘が邪魔になるな、と思ったら、親切なことに、表口にも傘入れの箱が置いてあり、裏口の傘入れ箱と同じ注意書きがありました。借りたものは返さないと駄目だ、先ほど裏口で借りたビニル傘は、表口で直ぐに返しました。
借りたのは、区役所内を通過する、ちょっとの時間でした。

サザエさん―傘(36)

 

強い雨では、タクシーが横付けできない玄関から門までの距離が、例え短くても、大事な衣服は雨に濡れて困ります。

 

朝日文庫版34巻〔70頁〕・昭和42年

『カツオ君が、ロータイプ机で勉強していると、ワカメちゃんが、コウモリ傘を持って現れました。カツオ君はワカメちゃんに、「おかあさんたちタクシーでかえってくるんだよ」と教えてやっています。ワカメちゃんは、何かを考えている様子で、カツオ君の顔をジーつと見ています』

『かなりの強い雨が、斜めに降っています。ワカメちゃんは、コウモリ傘を手に持ち、子供用傘をさして、いそのの表札がある自宅の門の傍に立っています』

『強い雨の中、タクシーが走ってきて、門の前に止まりました。ワカメちゃんは、すぐに、近づき、コウモリ傘を突き出しています』

『お母さんとお父さんが、タクシーを降りてきました。先に降りた紋付の和服を着たお母さんは、すぐにワカメちゃんのところに駆け寄り、ワカメちゃんが開いて持っていたコウモリ傘を受け取り、「さすがおんなのこねきがきくわ!」と褒めています。モーニングを着たお父さんも、ニコニコ顔でお土産の風呂敷包みを手に、お母さんと一緒にコウモリ傘の中に入りました』

 

カツオ君に比べ、ワカメちゃんの方が利口で思いやりがあります。

カツオ君!今日、お父さんとお母さんは、結婚式に出席するので、それぞれ、モーニングと紋付の和服を着て出て行ったじゃないか!!

お母さんたちには、大事な和服と洋服だ、雨に濡れたら後が大変だ。

 

磯野家は、門から玄関までかなりの距離があるとおもっているのだろう。

しかし、タクシーが門の中まで入ってきて、玄関に横付けできるほどのお屋敷ではないことぐらいカツオ君は良くわかっている筈だ。

この強い雨では、例え、タクシーで走る距離ではなくても、シッカリと濡れてしまう距離なんだよ。

 

ワカメちゃんは、偉い、そこのところが、良く分かっているので、タクシーで帰ってくるお母さんたちを、タクシーが横付けできる磯野家の門の前まで、コウモリ傘を持ってお出迎えしたんだ。カツオ君は、そんなことも理解できない気の利かない息子だったんだね。お母さん、がっかりしているぞ!

サザエさん―傘(35)

 

コウモリ傘の手元は、釣針のような形をしています。その取り扱いには十分気をつけましょう。

 

朝日文庫版33巻〔85頁〕・昭和41年

『雨の日。サザエさんがコウモリ傘をさして、街を歩いていると、スーツを着た、知り合いの中年の奥様が、とある商店の軒下テントの下で、困った顔をして雨宿りしていました』

『サザエさんは、すぐ気付き、そばに近づいて行きました。そして、コウモリ傘の手元が、奥さんのスカートに近づくほど突き出し、「どうぞおはいりくださいまし」と言いました。奥さんは、「ごしんせつに」と深々と頭を下げお礼を言っています』

『二人は、サザエさんの傘に仲良く入り、楽しそうに話しながら歩きました』

『よそのオジサンが、「ああいうのをしんせつがあだになっているってやっだな」とヒトリゴトを言っています。オジサンが見た二人の後ろ姿は、サザエさんが持っているコウモリ傘の手元が、奥さんのスカートに引っかかり、スカートを大きく持ち上げ、スカートはめくれあがり、奥さんのパンティがまる見えです。

二人は気付かずに仲良く歩いています』

 

コウモリ傘の手元は、多くは、クエッションマークに似た形です。

というより魚の釣針のような形で、この形には、物が引っ掛かります。

サザエさんは、親切だけど注意力がないというのでしょうか?

中年の奥様であっても、少しばかりミニのスカートを釣り上げて、中のパンティが見えています。

しかし、中年の奥さんのパンティを見せてくれても、喜ぶ男性はそれほどいません、と思います。

サザエさんが、若い女性か、妙齢のご婦人に親しい女性がいて、同じことをやって見てください、喜ぶ男性は。かなりいるかもしれません。

そうなれば、よそのおじさんのように、「ああいうのをしんせつがあだになっているってやっだな」と言ってのけるのではなく、「良い眺めだ良くやったくれた」と褒めてくれるかもしれません。

 

コウモリ傘の手元は、釣針のような形をしています。その取り扱いには十分気をつけましょう。

今日は、ただそれだけでした。

サザエさん―傘(34)

 

雨が降ってきても、「タバコ買いにきたついで」のお出迎えは、良いようでも問題です。

 

朝日文庫版33巻〔19頁〕・昭和41年

『暑い夏の日、ランニングシャツ姿のサザエさんのお父さんが、窓の外でパラパラと雨が降り出した音を聞いて、窓を開けました。お父さんは、雨が降り出したのを確認すると、「ふってきた!」と言いながら、外出しているお母さんのことを思いやっています』

『雨はかなり降ってきました。お父さんは、バス停の近くの商店の軒下に雨宿りしながら、お母さんの婦人用傘と自分のコウモリ傘を手に持って、バスを待っています。バス停には、お父さんのほか、3人のご婦人達が、それぞれ2本の傘を持って、バスを待っています』

『バスが来て、お母さんが降りてきました。お母さんは、お父さんに気がつくと、「すみません!ずいぶんまったでしょう」とお父さんをねぎらいました。お父さんは、ずいぶん待ったらしく、憮然としています。お父さんと、一緒にバスを待っていた、出迎えのご婦人たちは、もうとっくに帰ってしまっていました』

『お父さんは、婦人用傘をお母さんに渡すと、「なにたったいまタバコ買いにきたついでだ」と負け惜しみを言うと、さっさと、傘をさし、左手を浴衣の袖に突っ込み、粋な姿で帰っていきます。お母さんは、お父さんから受け取った、婦人用傘をさして、「へんなところでみえをはるんだからおとうさんは」と音さんに聞こえないよな小声で言いながら後をついて行きました』

 

お父さんは、昨日の雨では、頼まれた洗濯物を取り込まず、お母さんをバス停まで迎えに行きました。その結果、洗濯物を濡らし、お母さんを怒らせてしまいました。

今日も、お母さんが外出し、雨が降ってきました。

もちろん、優しいお父さんは、傘を持ってバス停までお迎えに行きます。

ところが、他の出迎えの人達が、次々と帰ってしかっても、まだお母さんが乗ったバスは来ません。

相当の時間待った後、バスはやっと来て、お母さんも降りて来ました。

お母さんは、気を使って

「すみません!ずいぶんまったでしょう」

と言いました。

そうなんです、ずいぶん待ったんです。

「ずいぶんまつたよ」

と言えば良いのです。

「構わないよ、洗濯物は濡らしたけど、お前は濡らしたらいけないので、何時までも待つよ」

と内心かなり腹が立っていても、意地を張るのです。

 

しかし、お父さん粋ですね!こんなに長い時間待ったのに

「なにたったいまタバコ買いにきたついでだ」

と仰った。

しかし、お母さんには、お父さんの怒りが判っています。

だから、お父さんには聞こえないように

「へんなところでみえをはるんだからおとうさんは」

と言ったのです。

 

でも、お父さんに聞こえるように言った方が良かったかもしれません。

そうすれば

「雨が降ってきたら洗濯物取り入れてね」

と頼まれれば、言われたことは確実にやるため、出迎えをしなくても洗濯物の取り込みはやるようになるしょう。

 

「タバコ買いにきたついで」のお出迎えは問題です。

かなり長時間待たされることがあります。

 

サザエさん―傘(33)

 

お父さんは「本当に頼りにならない亭主だわ、もう耄碌しているのだろうか」とお母さんに余計な心配をさせるのでした

 

朝日文庫版33巻〔19頁〕・昭和41年

『暑い夏の日、サザエさんのお父さんが、扇風機を回し、その風を受けて、俯けに横になり読書をしていると、パラパラと雨音が聞こえてきました。その雨音を聞いて、お父さんは、両手を突っ張り、上半身を起こして外を見ました。雨が降り始めていました。雨が降り始めたのを確認したお父さんは、「ふりだした!」と気になることあったようです』

『お父さんは、女物の雨傘を手にし、コウモリ傘をさして、真剣な顔をして、あわてて、門から飛び出していきました』

『お父さんは、走っています。前方に、近所の奥さんの傘に入れてもらって、お母さんが近づいてきました。お父さんは、手に持っている女物の傘を突き出して、恐らく、傘を持ってきたよ~と叫んでいるようです』

『お母さんは、雨の中、干してあった沢山の洗濯物を、「これだからおとこにるすばんはたのめない」とぷりぷりと怒って取り入れています。お父さんは、ああそうだったと言わんばかりに、廊下に立ったまま、忙しそうに洗濯物を取り入れているお母さんを見ています』

 

外から「雨が降ってきましたよ~」と大きな声で叫ぶのが聞こえます。その時、ハッと気がつきました。テレビを見ていた私が、外を見ると、隣の奥さんが、縁側まで回って来てくれて、叫んでいたのです。

そう云えば、「洗濯物干しているけど、雨が降るかもしれないから注意しててね!」と頼まれていたのです。すっかり忘れていました。

おかげで、洗濯物は、ほとんど濡れないうちに取り入れることができました。

感謝です。

 

サザエさんのお父さんも、同じように、お母さんが出掛けるとき、「雨が降りそうですから、降ってきたら取り入れてね!」と頼まれていたのだと思います。

しかし、雨が降ってきて、気になったのは、家にいないお母さんのこと、洗濯物の取り入れは、すっかり忘れてしまったお父さんでした。

雨を見たとたん、お母さんが雨に濡れる、洗濯物のことは忘れてしまっている愛妻家のお父さんですから、「お母さんは、間もなく駅に着くころだ、急いで行けばまだ間に合うぞ」とお母さんの傘を持って家を飛び出したのです。

洗濯物の取り入れのことは、すっかり飛んでいますから、洗濯物は、物干し竿にぶら下がったまま、夏の雨で水浴びをしています。

そんなことは、お母さんは許せません。

「私のことはどうでも良いのよ、お友達と一緒だから、彼女の傘に入れるわ。私がお願いした通り、迎えに来るより、洗濯物を取り入れるべきなのよ」

と叱りつけたでしょう。

頼りにならないご亭主でした。

お母さんは、雨にぬれて洗濯物を大急ぎで取り入れ、濡れた洗濯物を、又濯ぎ物干し竿に通して干さねばなりません。大変な仕事が、また出来ました。

「本当に頼りにならない亭主だわ、もう耄碌しているのだろうか」とお母さんに余計な心配をさせるお父さんでした。

しかし、洗濯物が干してなかったなら、お母さんは、「お父さん本当にありがとう」と言って感謝した筈です。

お父さんは、そう思っていたのですね。残念でした。

サザエさん―傘(32)

 お父さんも、思わず飛び上がり、暴走タクシーを避けることができました。

 朝日文庫版32巻〔129頁〕・昭和41年

『雨の降る日、サザエさんのお父さんが、道の片側に柳の木があり、その反対側に電信柱のある道に歩いてきました。枝が垂れ下がっている柳の木の下に、青ガエルがいます。青カエルは、垂れ下っている柳の枝を下からジッと見ています。サザエさんのお父さんは、それを見て、カエルが枝に飛びつくのではないかと、傘を挿して立ち止まり、カエルを眺めていますす』

『青カエルは、思ったように柳の枝に、なかなか飛びつきません。それでもお父さんは、青ガエルは柳の枝に飛びつくもおと思いこみ、長いこと、身動きもせず眺めています』

『青ガエルが、飛び上がりそうな気配を見せました。お父さんの表情が少し変わりました。いよいよだぞとでも思ったようです。しかし飛び上がりません』

『その狭い道にタクシーが走って来ました。お父さんと青ガエルとの間に突っ込んできます。お父さんは、走ってくるタクシーを避けるため、思わず、傘を投げ出して、傍の電信柱に飛びつきました。お父さんは、立っていたところから、飛び上がり、電信柱を抱えるように、飛びつきました。タクシーはトロ水を跳ね飛ばし走り去りました。カエルは、冷静に電信柱にしがみついているお父さんを眺めています』

 

サザエさんのお父さんも大変暇のようです。浴衣を着て、雨の中、コウモリ傘をさして散歩でもしていたんでしょう。

ブラブラと歩いていたら、柳の木の下に青ガエルがいるのを見つけたんですね。どうせ暇つぶしだ。ふと、古の小野道風の逸話を思い出し、そこにいたカエルも垂れ下ってくる柳の枝を見つければ、その柳の枝に飛びつくに違いないと、無邪気な発想から、「このカエルもきっとあの柳の枝に飛びつくぞ」と根気強く眺めていたようです。

青カエルが、なかなか飛びつかず、そこへ飛び込んできたのはタクシーでした。

 

「カエルが柳の枝に飛びつくのを見ていたら、タクシーに飛ばされた」というような馬鹿な事故は話のタネにもなりません。

お父さんは、咄嗟に「俺が飛び上がって、タクシーを避けねばならん」と思い、傍らの電信柱を目がけて飛び上がり、電信柱を抱え込むように飛びつきました。

青ガエルは、その瞬間もサザエさんのお父さんを見ていましたから、「なんだこのオッサン!大きな木の枝に飛びつくのは、俺より上手だぜ」と思ったでしょう。

ちなみに、柳の枝にカエルが飛びつくという逸話は、道風が書道でスランプに陥り、悩んでいた時に柳に何度も飛びつくカエルを見て、届くわけがないのに馬鹿なことをすると思っていたら、強い風が吹いてきて枝が垂れ下がり飛びつくのに成功し、馬鹿は自分であった自分はこのカエルほどの努力もしていないと悟り、以来、努力を重ねて書道の大家になったという逸話だそうです。(jijisuki63さんの投稿を参照)