サザエさん―雑(6-老人ホーム)

 

国に買収された土地が買い戻せるとしても、2円60銭/坪では格安過ぎる。

 

朝日文庫版42巻〔111頁〕・昭和46年

『老人ホームがあります。その門の前に、中年の男性とその奥さんの中年の女性とその息子の中学生の3人が乗った自家用車が、走ってきました』

『3人は車から飛び出すと、老人ホームと書いた表札が掛かっている門の中に、、走って入って行きました』

『中年の男性は、ハゲ頭の丹前を着たお爺さんを背負って「ホイホイホイホイ」と掛け声をかけながら、自家用車に向かって走って出てきました。奥さんの中年の女性は、「おじいちゃま」と大事そうに声をかけながら走っています。息子の中学生は、ボストンバッグと傘を持って走っています』

『老人ホームの門のところには、おじいさんおばあさんたちがいます。そこにサザエさんもいます。サザエさんが、おじいさんおばあさんたちに「旧地主さん!!」と尋ねています。おじいさんおばあさんたちは、羨ましそうに「ええ政府が2円60銭で返すというクチ」と答えています』

 

この落ちもわかりません。調べてみました。ありました。

「原文のまま、次の通りでした。

◆P111、2円60銭について調べてみた 

1971月にあったこと
政府は、農地法施行令の一部改正をこの日の閣議で決めた。
農地法施行令で国が強制買収した土地で未処分のものを坪あたり260銭で買い戻すことができるというもの。格安である。ただ旧地主という条件があるため、老人ホームへ入れていた父親を息子が飛んで迎えに来るわけ。」

こんなことがあったようです。◆

詳しくは、次のような落ちのようです。

息子夫婦が父親を老人ホームに入れていた。お父さんは、不動産を持ち地主である。この時期、政府が閣議で農地法施行令の一部を改正した、『国が強制買収した土地で未処分であれば、坪あたり2円60銭で買い戻せるという改正』だったらしい。

そこで、老人ホームに放り込んでしまっていた地主である父親を、老人ホームから連れ出して、地主として、自宅に住まわせ、国に買収され、まだ未処分であった不動産を2円60銭/坪で買い戻そうという魂胆のようです。

このおじいさんの土地ですから、家にいて買い戻しの手続きなどをやるのでしょう。

息子が背負っていた親父さんは、1000坪の土地は、持っているような風格をしていますから、いくら戻ってくるのでしょう?

2.6円×1000坪=2600円

エツ!僅か2600円、確かに格安で買い戻されるのですね。

それでも、お父さんを家に戻ってもらうのでしょうか?

そのまま、老人ホームにいた方が幸せでは?

 

サザエさん―雑(5-スリップ事故)

 

女性のドライバーの皆さんスリップ事故には十分注意してください。事故は思わぬときに起こります。

 

朝日文庫版42巻〔86頁〕・昭和46年

『サザエさんは、半袖のワンピースを着て、ハンドバックを持ち、颯爽と街の中を歩いていました。すると、後ろから、声をかけながら、女性が近づいてきました。振り向くと、スーツを着た小太りの女性が、「あのースリップが出てますよ」と教えてくれました』

『サザエさんは、顔を赤くして、洋服を着た沢山のマネキンがショウケースに並んでいる、大きな洋装店の中に入って行きました。教えてもらった、出ているスリップを直すため、トイレをお借りするつもりです』

『公園の花壇の石垣に、両腕を組んでぷんぷんに怒っているマスオさんが座っています。そこへ、サザエさんが、ハンドバックを揺らして、「スリップ事故にあったのヨ」と駆けつけてきました』

『それを聞いて、サザエさんが、自動車の「スリップ事故」にあったと思ってしまったマスオさんは、スーツの襟口を立てて、顔を青ざめ、身震いしながら、「よかったなー~~ぶじで」と言っています。サザエさんは、すっきりした晴れ晴れした顔をしています。その時期、交通安全運動週間で電信柱に、立て看板が掛けられていました』

 

自動車のタイヤのスリップは、本当に怖いですよ。雨の降る日でした。交差点の直前、間に合うと思った、前方の黄信号が、パツと赤信号に変わりました。これはいかんとブレーキを思い切り踏んだところ、車は、まっすぐ止まりませんでした。横向きになり、そのまま進行方向に滑って行きました。対向車が目の前で急ブレーキをかけ止まってくれました。

危うくスリップ事故を逃れることができました。

マスオさんは、そんなスリップ事故の経験があったのでしょう。

サザエさんが、「スリップ事故にあったのよ」と駆けつけながら言った、「スリップ事故」に対する反応が、ただ事ではありません。

サザエさんが、スリップ事故にあっても元気だ駆けつけたのですから、「よかったなー~~ぶじで」と心の底から思ったでしょう。

 

しかし、サザエさんが、

「本当はね!スリップ事故は、自動車がスリップした事故じゃないの!私の着ている下着のスリップが、襟口からはみ出して、覗いていてみっともない事故だったのよ!服屋さんのトイレで事故対策は、済ましてきたわ!」

と言うのを聞いて、男らしく

「馬鹿野郎、心配掛けやがって」

と言った筈は、ないですよね!

多分

「なんだ、タイヤのスリップじゃなく、下着のスリップか~、驚いたよ」

と優しく言ったに違いありません。

 

サザエさん―雑(4-三島由紀夫の冠婚葬祭)

 

落ちがわかりません?

 

朝日文庫版41巻〔133頁〕・昭和46年

『サザエさんが、電車の座席に座って友達とペチャクチャとお喋りしています。サザさんの横に、アップに結った髪の老婆が座っていて、二人のお喋りに興味深そうに耳を欹てています』

『老婆は、電車を降りて、「ずいぶんベストセラーらしい」「マゴのプレゼントはこれにきめた」などと独り言を、言いながら嬉しそうに歩いています』

『老婆は、本屋さんの前にいます。本屋のご主人に、「ちょいと三島由紀夫の書いた「冠婚葬祭」って本ちょうだい」と注文しています。ご主人は怪訝そうな顔をして老婆を見ています』

『本屋のご主人は、大きな口を開けカンラカンラと大笑いしています。老婆は恥ずかしそうに「どっかききちがえたらしい」と帰って行きました』

 

おばあさんは、何をどう聞き違えたのでしょう、この落ちが判りません。

調べてみましたが、三島由紀夫著の「冠婚葬祭」と言う著書は存在していないようでした。

書店のご主人も、おばあさんに「三島由紀夫著の「冠婚葬祭」を頂戴」と言われて、そんな本がなければ「ありません」と言えば、それで済む筈です。それなのに、大きな口を開けカンラカンラと笑うのが、理解できません。そして失礼です。

この頃、三島由紀夫氏に何があったのでしょう。勿論、割腹自殺事件は大きな話題でした。また、この頃、塩月八重子著の「冠婚葬祭入門」というベストセーラがあり、この著書がゴーストライターによるものではないかと話題になっていたようです。これらの話題は、サザエさんと友達にとって、格好のお喋りの話題だったのでしょう。二人は、早口でペチャクチャとお喋りしました。おばあさんは、この早口のお喋りを耳に挟んで、三島由紀夫と冠婚葬祭をごっちゃにし、このおばあさんの勘違いが面白いという落ちではないでしょうか?間違っているかもしれません。自信はありません。

 

サザエさん―雑(3-シミ)

 

シミ。

 

朝日文庫版42巻〔13頁〕・昭和47年

『サザエさんが、居間で受話器を取っています。受話器は「シミができちゃった!どうしたらいい?」と言っています。サザエさんは、目をパチクリとし、腰に手を置いて、偉そうに、「よくやるのよね」と即座に答えています』

『それから、得意そうに、「パンくずでこする」(服を台の上に広げて、パンくずを包んだガーゼの包みを擦りつけているのを思い浮かべながら)「水でたたく」(パンくずをこすりつけた服を、水を含ませたタオルで叩くのを思い浮かべながら)と得意そう喋っています』

『そして、念を押すように「それでだめならベンジンでこする」とニコニコ笑顔で駄目押しをしています』

『サザエさんの話し相手の奥さんが、日焼けした顔に涙をあふれさせ大きく口を開いて、「ぜっこうよもう!!ゆきやけのシミ!!」と怒鳴りつけています』

 

友達同志の電話美容相談、間違えばこんなこともあるのです。

友達の奥さんのシミは相当深刻のようです。スキーに行って、日焼け止めは塗ったと思いますが、どうしたのでしょう。肌に合わなかった?粗悪品だった?ともあれ家に帰って数日後、顔面が黒くなりシミが出てきたようです。

これは大変だ!友達のサザエさんに相談を持ちかけた。

これが駄目でした。

 

サザエさんの家族は、スキーがスキではありません。スキーに出かけることがあまりなく、スキーで日焼けなどしたことがなかった?

だから、姿の見えない相手が「シミ」と言えば「シミ」なのです。

染みにも色々あります。

大辞林によれば、①液体などがしみ込んでできた汚れ、②顔面、とくに顔、眉、頬などに生じる褐色の色素斑。その他いろいろですが、見えない相手と話しているサザエさんは①で、友達は②でした。どちらもシミですが、サザエさんが教えてやったシミ抜きは、良くありません。

もし、知能指数が低い奥様で、サザエさんが教える通りやったら、大変、いや、面白いですね!

朝食べた食パンを半分くらい残しておきます。それを小さく押しつぶします。カーゼが良いと思います。パンくずを包んだカーゼの包みを作ります。それを持って、鏡台の前に行きます。鏡に日焼けした自分の顔を映します。「アラやだわ」と言いながら、シミのありかを確認し、先に作ったパン屑のガーゼの包みをシミの上に当て、ゴシゴシと擦ります。「なんだかいやだわ、これ位でいいかしら」と十分に擦りつけます。「ここはすんだわ、次は濡れタオルね」と洗面所でタオルに十分水を含ませ、軽く絞ります。鏡の前に戻ります。「パン屑を擦りつけたところを、このぬれタオルで叩くのね」と、濡れタオルでポンポンと叩きます。「これで教えてもらった通りやったわ、シミなくなったかしら」と言い、期待しながら鏡を覗き込む。

覗き込んだ鏡に映った自分の顔を見たとき、友達である奥さんはビックリしてのけ反るでしょう。シミが赤黒く酷くなっている、これはいけない。「でも、サザエさん言っていたわ!!それでもだめならベンジンで擦ってみる」、「ベンジンあったかしら!そうだ、あったあった、お父さんの油絵の材料」

「でもなんだか変だわ、お父さんは、油絵の具のシミを取る時、ベンジンを使っていたわ!そうだ!ベンジンは、絵具などの汚れを取るとき使うものよ!顔に使うものではないわ!」

「エエエッサザエさん服の汚れのシミの取り方を教えてくれたのだわ!!」

知能指数の低い奥さんも、やっと気がつきます。

奥さん!早く気付かないと駄目ですよ、どこまでやったーーー

「本当に!パン粉を擦りつけて、濡れタオルで叩いたのですか?」

そこまでやったんですか?確かにサザエさんとは絶交ですね!

ちょっとこう言ってくれたら良かったのにね!

[服の汚れたシミ抜きはねェ~こうするのよ~]

サザエさん―雑(2-話題)

 

バスの中で、上司に合ったらあった、黙っておきましょう。それが一番です。

 

朝日文庫版43巻〔81頁〕・昭和47年

『マスオさんが、バスに乗り込むと、すぐ目の前の席に、スルメのような顔をして紳士が、コートを着て座って、バスに揺られていました。スルメのような顔の紳士は、マスオさんの勤め先の会社の専務でした。マスオさんは、すぐ気がついて「アせんむ!!」と頭を下げて、丁寧に挨拶をしました』

『専務の隣の席が空いていたので、マスオさんは腰掛けました。腰掛けたものの「何かを話しかけなければいけない」と思い、頭の中身にいろんな話題を思い浮かべました。思い浮かべた話題を取り上げるどうかも、頭の中で判断していきました。「いつもおわかいですナー、ダメめためたしい(これ駄目)、「かてい、おくさんやむすめさんのこと、たちいりすぎる (これも駄目)「ミカン、かずのこなどたべもののこと、 へいぼんすぎる(これも駄目)、「おてんきのこと、 そらぞらしい(これも駄目)、専務に話しかけるに相応しい話題が出てきません。話しかけねばならんと思うと、額から少し冷や汗が出てきました』

『ないかな?と頭を絞っています。「おちゃ、ケーキ、けいばなどのしゅみ、おれはしゅみはないし(これは無理)「ろうじんもんだい、あてつけがましい(これは絶対駄目)「ウチのはなし、サザエやタラちゃんのこと、みっともない(これは話にならん駄目)、「紅白ウタ、ミーハー的(これも駄目、お偉い方にする話題ではない)、次々と、専務と語り合おうに相応しい話題がないかと、頭の中に思い浮かべましたが、皆、駄目で、頭の額から冷や汗が吹き出すだけでした』

『バス停にバスが止まり、すっかり疲れきった顔をしたマスオさんが、肩を落として「ストレスはからだにこたえる」と愚痴りながら降りています』

 

マスオさんの上司は、カタブツだったのかな?なんでも良いから話しかけるということができない人だったのですか。

そんな人だったら、何か話さなければならんと思えば、考えるだけで疲れますね!ずいぶんたくさんいろいろの話題を思いつきましたね!それでも 皆 駄目でしたか?本当に疲れたでしょう。

何も話をしなくてもいいじゃないですか。

ストレスがたまったでしょうから、早く家に帰って、スルメでもかじって、酒飲んで寝るのが一番です。

サザエさん―雑(1-タツクリ)

 

タズクリを食べましょう。お箸置きは食べられません。

 

朝日文庫版45巻〔52頁〕・昭和48年

『サザエさんが、テレビの前の机に座り、テレビの料理番組をメモを取りながら真剣に視ています。テレビの画面では、料理人のオジサンが、鍋と、皿に盛った料理材料を前に、「ではタックリのつくりかたを・・・・・」と説明しています』

『サザエさんは、中華鍋のような大きくて深みもある鍋をガスコンロに乗せ、湯気が立ち上っている鍋に入った材料を、長い料理用のお箸でかき混ぜています。そんなサザエさんを、お父さんが、キッチンの引き戸越しに覗き込んでいます』

『キッチンの調理台の上に、出来上がった料理が大きな皿に、沢山盛って置いてあります。そこへ、お父さんがやって来ました。その大きな皿の傍に数個散らばっています。お父さんは、その一つ口に咥え、歯が立たないのか、もの凄く硬くて食べられないと言わんばかりに顔をゆがめています』

『サザエさんが、割れたお箸置きを手にして、驚いたような大きな声で「だーれおハシおきわっちゃったひと」と叫んでいます。お父さんが顔を赤らめて立ち去っています』

 

判らないことがありました。テレビの画面の中で料理の先生が言っている「たつくり」とは何ですか?

判らなければ調べます。ありました。正式には「田作り」、通称「たつくり」のようです。

レシピーは、簡単でした。材料は、カタクチイワシの幼魚の乾燥品、ごまめ、醤油、みりん、砂糖、赤唐辛子を少量です。 乾燥させた小魚を乾煎りし、冷ましてから、これを、醤油、みりん、砂糖、少量の赤唐辛子を煮詰めた液で絡めて作るそうです。絡め過ぎると全部くっついて取れなくなると書いてあり、アアそうか、小魚の煮干しの、佃煮みたいなものだと思い当たりました。 

サザエさんもそんな「たつくり」を作ってみたのですね。

問題はお父さんです。キッチンから良い匂いがしたのでしょうか?お父さんは、キッチンにソーッと忍び寄り、サザエさんには声もかけず、「サザエのやつ何か珍しい美味しそうなものを作っているぞ」と舌なめずりをしたのでしょう。

サザエさんがいなくなったキッチンの調理台に、サザエさんが調理した美味しそうなものが皿に盛ってあります。多分、ソーッと寄って行き、黙って、味見させてもらうよと、皿に手を出す。

ところが、そこで、お父さんは、皿に盛ってあるのを、つまべば良いのに、何を遠慮したのか、大皿の傍に落ちていた1個の「たつくり」とおぼしきものを摘まみあげ、口に持って行きました。

噛もうと口を閉じました。美味しそうだ、サザエに見つからないうちに早く食べようと、思いっきりガブッとかんだら、ガリーッと歯が立ちません。「痛いっ」少し欠けたかもしれません。

サザエが戻ってきた。思わず「痛いっ」と声が出たのかな、早く逃げろ!と逃げだしたのです。

 

サザエさんは、確かに「痛いっ」と声を聞いた気がして、キッチンに戻りました。

台の上に「お箸を乗せるお箸置き」を置いていたのです。それが、噛み砕かれていました、

「すごい、瀬戸物のお箸置きを噛み砕くなんて!」

と驚いてしまいました。

で、

「だーれおハシおきわっちゃったひと」

と叫んでしまったのです。

 

お父さんは、「たつくり」「お箸置き」をなぜ間違えたのでしょう。

お箸置きには、いろんな物がありますが、確かに「魚」の形の瀬戸物を多く見かけました。そんな魚のお箸置きが食卓の上にあり、魚の胴の上に箸の先端を置き休めます。

お父さんは、そんなお箸置きを食べようとしたのです。

サザエさんが使った魚の干物が少し大きかったのが、間違いのもとでした。

お箸置きのように大きい小魚でなく、モット小さい縮緬じゃこで良かったのです。

そんな小さなお箸置きはありませんから。

 

お父さん!歯は大丈夫ですか?隠れてツマミ食いは、いやし食いともいうと思いますが、堂々と

「おう!サザエ!何か美味しいものが出来たようだね!一つ味見させてくれ」

と言えば

「いいわよ!お父さん」

と皿の上から一つつまんでくれますよ。

まさか、落ちているお箸置きを摘まんでくれるとは思いません。

 

サザエさん―傘(45)

 

サザエさんのお父さんが、余所の奥様に、買ったばかりのジャンプ傘を、開くところを見せたいそうです。

 

朝日文庫版44巻〔78頁〕・昭和48年

『地下鉄の駅の階段を上がってきた入口のようです。サザエさんのお父さんが、少し大きめの立派なジャンプ傘を持っています。お父さんの前に、髪をアップに結い上げ、綺麗な柄の和服を着て、濃い色と派手な模様の帯を締め、洒落れたバッグを持った、高く太い鼻の奥様が立っています。奥様は、降っている雨を見て「まァふってるヮ」と思わず声を出しました。それを、後から来たサザエさんのお父さんが聞き、「アノよろしかったらどうーぞ」と言っています』

『奥様は「ではおことばにあまえて」と素直にお願いしました。お父さんは、少し大きめの立派なジャンプ傘を、格好を付けるように持ち、右手の親指を傘のボタンに当てています。お父さんは、そのボタンをパチンと押しました。しかし、ワンタッチで開くはずのコウモリ傘が開きません』

『ワンタッチボタンをパチ、パチ、パチ、パチと何回押しても開きません。お父さんは「おかしいと言いながら、あせり、きまり悪そうにしています』

『そこへ、カツオ君が現れ、お父さんの大きめの立派なジャンプ傘をカバーたままの布袋を、「おちついてまずふくろとらなきゃと言いながら引っ張って取ってやっています。奥様は、赤い口紅を塗った口に手を当て、オホホと笑っています。お父さんは、顔を赤くして頭をかいています』

 

「アノーよろしかったらどーぞ」と奥様の跡を追っかけていく、サザエさんのお父さんの姿が、実に可愛らしく描いてあり、以前から興味を持って注目していました。

そんな作品の数々を含む、傘と雨のシリーズも終了しました。このシリーズも意外と沢山の作品がありました。当然ですね。年間、雨の日は沢山ありますから。

 

この日、お父さんが持っていたのは、ジャンプ傘と言われるコウモリ傘で、新しく買ったのでしょうか?このパチンとボタンを押すとパッと開くコウモリ傘を見せ立ったのでしょうか?そうなんです!上品な奥様の前で、ボタンをパチンと押して、パッと開き、「どうぞ」と入れてやりたかったのでしょう。

 

今日2015年09月10日は、大変な豪雨です、関東地方でも、各地の被害は、異常事態だとテレビは言っています。その模様は確かに異常事態です、町や村や都会に雨が溢れ、川の氾濫や崖ぐずれなどひどいものです。

サザエさんのお父さんのように、ジャンプ傘をパチンと押してパッっと開く、お遊びなどやっているところではありません。

 

カツオ君が現れました。カツオ君はお父さんと一緒だったのでしょうか?お父さんも何するか分からないから、シッカリと傍に付いていないといけないぞ!ほれ見ろ!お父さんは、コウモリ傘の袋も取らないで、ボタンをパチパチパチと押しているぞ!あれじゃ何回ボタンを押しても、傘は開かないよ!開かないものだから、あせって何回も何回もパチンパチンパチンと、何時までもやっている、袋を取らないと絶対に開かないのだから。カツオ君早く出て行ってやれよ!奥様がお父さんのこと笑っている!早く!早く!そうだ、傘の袋を取ってやればいいのだ!

サザエさん―傘(44)

 

激しい雨の中で、いただいたアジサイは、綺麗な花でした。

 

朝日文庫版44巻〔74頁〕・昭和48年

『サザエさんのお父さんが、会社からの帰り途で、家の近くまで来ると突然にわか雨が降ってきました。激しい雨です。持っていた新聞紙で、頭に降りかかる雨を防ぎながら、急ぎ足で歩いていると、禿げ頭のオジサンが傘をさして歩いていました。お父さんは、その人の傘の中に「すみません入れてくいださい」と入って行きましたは。オジサンは、「どーぞ」と入れてくれました』

『お父さんは、磯野家の門の前まで送って貰いました。お父さんは、「おまちください」と言いながら、門の中に入って行きました。オジサンは、激しい雨の中、言われた通り門の外で、傘をさして待っています』

『お父さんは、庭に植えているアジサイの大きな花を一本だけ切ると、「ほんのおれいごころに」と言いながらオジサンに渡しています。オジサンは、激しい雨の中、表情も変えず受け取っています』

『オジサンは、激しい雨の中、アジサイの花をぶら下げて、「花」と書いた看板のある花屋さんに入って行きました。花屋の看板おばちゃんが、オジサンがアジサイの花をぶら下げて「オレなんでもことわれないタチなんだ」と言いながら帰ってきたのを見て、「とうちゃんたら」と呆れかえっています

 

サザエさんのお父さんに、アジサイの花を貰ったハゲ頭のオジサンは、花屋のご主人でした。多分、花を愛するオジサンは、サザエさんのお父さんが、自慢にしているアジサイの花を「要りません」と断われなかったようです。

激しい雨の中、一本のアジサイの花をぶら下げて帰ってきたのですね。

奥さんに「とうちゃんたら」とあきれてしまわれるのが当然でしょう。

いくら優しい奥さんでも「あら良いものいただいてきたわね!」とは言わないと思います。

綺麗な花が沢山ある「花屋さん」ですから!折角貰ったんだから、「そこのバケツに入れといて」とくらいは言うでしょう。

綺麗な花が沢山置いてある「花屋さん」ですから、お父さんのアジサイの花はお気に召さないと思います。

しかし、折角、サザエさんのお父さんが、庭で育てたアジサイの花を切って渡し、頂いたご主人が激しい雨の中、大事に持って帰ったアジサイの花ですから、お世辞でも良いですから、

「あら、きれいなアジサイね!」

とくらい驚いてあげたらいかがでしょうか?

 

サザエさん―傘(43)

 

一張羅のドレスは、肩までまくれ!

 

朝日文庫版41巻〔72頁〕・昭和45年

『雨の降るバス停に、カツオ君が、コウモリ傘を脇に挟んで持ち、右手にレインシューズを持って立っています。どうやら、サザエさんを迎えに来ているようです。』

『カツオ君は、バス停に出迎えに来ているのは、自分だけだと思っていました。しかし、なんとなく気配を感じ、後ろを振り向くと、着物にエプロンをしたオバアサンが、左腕に畳んだ傘を引っ掛け、右手に、3個の洗濯バサミを挟んだ大きな針金の輪を持ち、足元にレインシューズを置いて、開いた傘を右手に持った、物々しい姿で立っていました。カツオ君は、そのオバアサンを、何だこのオバアサンは?と言わんばかりに、しみじみとみています。』

『バスから、派手な格好のお嬢さんが、ハンドバックを振り回し飛び出してきました。お嬢さんは、丈が足首までもある、派手な花柄のドレスを着て、黒いツバの長い帽子をかぶっています。お嬢さんはドレスの裾で雨を蹴散らしながら、オバアサンに近づき、オバアサンは、洗濯バサミが挟んである針金の輪を持ち、開いた傘をお嬢さんの方に差し出して、走り寄りました。』

『カツオ君が見たのは、傘をさしたお嬢さんが、ドレスの裾を肩のところまで引き上げ、その裾を両方の肩に洗濯バサミで挟んでいます。ドレスは、裏地が見え、パンティも丸見えです。カツオ君は、目をまんまると大きく見開いて、驚いて見ています』

 

カツオ君は、見てならぬもの、そうではなく見てもいいものを見ました。

カツオ君は、そんなものを見ることになるとは、思ってもいませんでした。

カツオ君は、雨が降り出したので、オバアサンも出迎えに来ている。しかし、変だな、針金の輪に洗濯バサミを挟んでいるどうするんだろう?

と思っていたらバスが来ました。

 

カツオ君は、バスから、ド派手なお嬢さんが飛び出してきて驚きました。

ハイヒールが隠れるくらいの裾の長いドレスを着て、雨の中に飛び出して来ました。すると、すぐに、オバアサンは、洗濯バサミを挟んだ針金の輪を持って駆け寄ったのです。何をするのか?興味を持ってカツオ君が見ていると、オバアサンが、お嬢さんのドレスの裾を持って、肩までまくし上げると、針金の輪に挟んでいた洗濯バサミで、ドレスの肩口に挟みつけました。

ドレスは、裏返しになり、お嬢さんのパンティが丸見えです。カツオ君は、今日は、雨の中も姉さんをお迎えに来て、見てはいけない、いや、見ても良い物を見てしまいました。

オバアサンは、お嬢さんのドレスが、一張羅のたった一枚の上等の着物だったので、濡らしたくなかったのでしょう。カツオ君が、ドレスの中身を見るぐらい、どうということはないのです。

ついでに、オバアサンは、針金の輪は、お嬢さんが履き換えたシューズと一緒に持ち帰っています。

 

雨の中のお迎えも、これ位のことがなければ、やってはおれないだろ!カツオ君。

サザエさん―傘(42)

 

あまりの突然の大雨で溢れ出た雨水の中に、陳列台の上に生きたまま並べられていた魚クンが泳いでいました。

 

朝日文庫版40巻〔141頁〕・昭和45年

『雨が降っています。かなりの豪雨です。こんな時でもサザエさんは、夕食のおオカズにしようと、魚屋さんに、魚を買いに来ています。魚屋さんのオジサンは、強くなってくる雨に、魚を懸命に売っています。サザエさんが傘をさして店先で品定めをしています。いろんな魚を台の上に並べて、オジサンは多分、〈エーいらっしゃい!雨もひどくなってきた。今日は、特別に安くしておくよ〉と言っているようです』

『雨も次第に酷くなり、暗くなった街の建物に激しく降り注いでいます』

『ますます、雨はひどくなり、雨水が街にあふれてきました。魚屋さんの店にも溢れた雨水が押し寄せ、オジサンの膝上まで雨水に浸かってしまいました。店先に並べていた魚や商売道具が流れ始めました。オジサンは、手のつけようもなく、お手上げの状態になってしまいました』

『溢れて押し寄せてきた雨水に、陳列されていた魚が流されています。その中に生きていた魚がいました。その魚は、溢れ出た雨水の中を「生きていてよかった!」と言いながら泳いでいます』

 

魚クン!良かったね!君は本当に幸運な魚だ!

台の上に並べられていたとき、君は、まだ、生きていたんだ、すごい。

こんな雨もあるんだ。諦めたらだめだ!

異常気象は、君に幸運をもたらしたようだ。

急に黒雲が沸き起こり、激しく、バケツの水を引っくり返したように、天から降ってくるんだ。

あっ!という間に雨水が街に溢れ、人も車も浸かってしまう。

こんな時、君のように強運の生きていた魚がいたら、溢れた水の中を泳げるぞ。

君がいた街では、溢れた雨水は、幸い、川に流れているぞ!

君は、そのまま流れに乗って泳いで行け!

そうすると、君は、広い海に行きつく、そして、広い海を泳げる。

君は、台の上で生き伸びていた甲斐があったんだ。

ところで、君は、川の魚かな?海の魚かな?

海の魚なら、雨水の流れの中を懸命に泳いで海に行け!川の魚なら川まで行って、その川に留まれ!