サザエさん―喧嘩(5)

 カルタに負けて喧嘩し、喧嘩を止められた悔し泣き。学業で負けないように勉強しよう。

 朝日文庫版19巻〔81頁〕・昭和32年

『カツオ君と友達とワカメちゃんと女の子との4人でカルタをしていました。畳みの上にカルタを裏返しにして、バラバラに置いています。多分“シンケイスイジャク”という遊びをしているのでしょう。楽しく遊んでいたのに、突然、カツオ君と友達が、激しく口争いしながら、一枚のカルタを掴み、引っ張り合っています』

『争いは、次第に激しくなり、2人は、畳の上に置いてあるカルタを、手当たり次第に取って、激しく口争いしながら、相手の顔を目がけて投げつけています。ワカメちゃんと女の子は、居たたまれなって、その場からいなくなりました』

『その激しく喧嘩しているところに、サザエさんとお父さんが現れ、サザエさんが友達を、お父さんんがカツオ君を止めています。とくに、カツオ君は、お父さんに止められていますが、手足をバタつかせて、何か大きな声で文句を言っています。友達は、サザエさんに止められ、かなり落ち着いてきたようです』

『相当に悔しかったのか、カツオ君は、自分の勉強机に「カルタまけて悔しい~」と大粒の涙を流して、泣き伏しています。傍にいたお父さんは、悔しがり泣き叫ぶカツオ君を見ながら「あ~~学業にそのくらいねっしんだったらな!」と泣き言を言っています』

 

カツオ君!カルタ遊びに負けてそんなに悔しいか?

それにしても、喧嘩も、悔しがり方も、少しオーバすぎないかな?

初めは、一枚のカルタを引っ張り合っていたのに、友達も渡してくれない。とうとう、君は並べてあったランプを、引っかきまわし、拾い上げて、友達の顔を目がけてに投げつけている。そんなことすると友達もだ黙っていない。

ほら!友達もカルタを拾い上げて投げつけてきたぞ!

あまり激しい喧嘩になってしまったので、ワカメちゃんと女の子は、逃げ出して居なくなってしまった。

お父さんとお姉さんが止めに入った。

2人が、引き離してくれなかつたら、もっと大変な喧嘩になっているよ。

負けていたんだな。よっぽど悔しかったのか?

「よしよしそんなに泣くな!」ほら、お父さんが嘆いているぞ!

しかし、お父さんお嘆きに同情するな!

「学業に負けて、悔し泣きするほど勉強しろ」

サザエさん―喧嘩(4)

 

オジサンは、カツオ君のイタズラで、喧嘩を覚悟していましたが、謝るばかりで喧嘩になりませんでした。

 

朝日文庫版18巻〔99頁〕・昭和32年

『カツオ君が、板塀に囲まれた邸宅の、“雨除け屋根の付いた引き戸門扉”の門柱に取り付けてある“呼び鈴のボタン”を押しています。カツオ君は、イタズラをしているようです』

『浴衣を着た鼻の高いオジサンが、怒った顔をして現れ、カツオくんを捕えて、着ていた上着の首筋を掴み上げ、「こらっいたずら小僧どこのうち子だ?」と怒鳴っています。カツオ君は、可哀そうにオジサンに吊り上げられ、宙に浮いた足をバタバタと動かしています』

『カツオ君は、もの凄く怒った顔をしたオジサンをある家に案内し、泣きながらその家を指さしています。オジサンは、その家の玄関の前に立ち、玄関の柱に取りつけられている呼び鈴のボタンを、「おやにちゅういしておかにゃいかん!」と言いながら押し続けています』

『オジサンは、呼び鈴に呼び出されて現れた、眉毛が釣り上がり、口髭も偉そうにはやした頑固爺そうな怖いお爺さんに、「いい年をしてよそのベルを・・・・・」と激しく叱られています。オジサンは、情けなさそうな顔をして深々と頭を下げ謝っています。遠くの方に、カツオ君が、懸命に足り去っているのが見えます』

 

カツオ君は、妙なイタズラをしますね!よその家の呼び鈴を用もないのに押しまくり、その家の人を呼び出すイタズラです。

イタズラで、こんなことをしたら駄目です。

ほら!怖いオジサンが出てきました。カツオ君は、シャツの首筋をつかまれ、カツオ君の両足が宙に浮くほど、高くグイッと釣り上げられています。

オジサンは、こんなイタズラ坊主の悪さは、親に言いつけないとイカン

「貴様、どこの家の子だ」

「ハイ、こっちです

カツオ君は、素直にオジサンを、案内しました。

「この家の子です」

「この家か」

「ハイ」

「よし、君はそこで待つとれ!」

怒っているオジサンは、その家の玄関の呼び鈴を押しました。しかし、出てきません。絶対に親に文句を言いたいオジサンは、でてくるまで絶対止めんぞ!

と押して押して押しまくります。出てきました。

眉毛を釣り上げ、口髭も偉そうにはやした頑固爺のお爺さんです。

「なんだ!五月蠅い!なんだ!子供じゃないんだ、お前が押したのか。いい年して、何をやっているんだ!」

お爺さんの剣幕に恐れをなしたオジサンは、

「どうもすみません、申し訳ありません」

と、何度も何度も謝り、とても喧嘩にはなりません。

イタズラしたカツオ君は、あっという間にどこかへ逃げてしまいました。

喧嘩も覚悟でやってきたオジサンは、ぺこぺことお爺さんに謝るばかりです。

サザエさん―喧嘩(3)

 

ホームベースでの、セーフ・アウトを巡る激しい争いです。草野球では裁いてくれる人は、いないようです、喧嘩で決着をつけるのでしょうか?、

 

朝日文庫版18巻〔99頁〕・昭和32年

『浴衣を着たサザエさんのお父さんが、リビングでチェアーの座り、ノンビリと新聞を読んでいると、突然、野球のボールが、ガラス窓を粉々に砕いて飛び込んできました。お父さんは、ビックリしました』

『お父さんはカンカンに怒り、ボールを拾うと、外に飛び出しました。近くの広場で、草野球のオジサン達が、くたびれたユニホームを着て、野球帽を被ったオジサンたちが野球をやっていました。お父さんが、ボールを手にし、頭から湯気を出し、かんかんに怒って、近づいてきます。丁度、その時、3塁ランナーが、ホームベースを目がけて、両腕を伸ばし、頭から滑り込んできました。ホームベースを守っていたオジサンは、バックホームだ!とホームベースを左足で踏みつけ、グローブを突き出し、飛んでくるボールを受けようとしています。ボールがグローブに入る瞬間、飛び込んだランナーの両手はベースに触っています』

『直ぐに、ホームベースは、4人のオジサンたちに囲まれ、攻撃チ-ムの二人のオジサンが、口を尖らして、腕を突き上げ、それぞれ「セーフ」「セーフ」と叫んでいます。守備チームの二人のオジサンが、それぞれ、右腕を突き出し「アウト」アウト」と叫び続けています。争いは激しくなり、「アウト」と言い続ける一人のオジサンは、「セーフ」と叫んで掴みかかろうとするオジサンを、後ろから、ハガイジメにして抑えています。サザエさんのお父さんは、ボールを手にして、自分の家の方を指さし、口を突き出して、「文句」を言っていますが、「セーフ」「アウト」と争っているオジサン達に、全く相手にされていません』

『オジサン達の争いは、ますます激しくなり。とうとう、攻撃側の一人のオジサンと守備側の一人のオジサンが、掴み合っています。こうなると、ボールを持って抗議に来たサザエさんのお父さんは、全く相手にされず、お父さんは、ついに抗議をあきらめ「てんでだめだ」と、持ってきたボールをオジサン達の足元に置いて、帰って行きました』

 

草野球の、ホームベースでの、セーフ・アウトを巡る激しい争いになっています。

サザエさん家に飛び込んできて、お父さんを怒らせてたボールは、新聞を読んでいたお父さんの所まで、どう飛んできたのでしょうか?

ホームランか、ファールか、暴投のいずれか判りませんが、草野球をやっていたオジサン達のボールが、お父さんの所まで飛んで行ったようです。

草野球の勝負は、白熱してきた。どこかへ飛んで行ったボールのことなどどうでもいいよ!

「セーフか」「アウトか」のいずれか、とことん喧嘩しても、ハッキリさせようようよ!とオジサンたちは、掴みかかって激しく争っています。

こんな時、どこかへ飛んで行ったボールなどどうでもよいと、お父さんの抗議は、まるで相手にされません

サザエさん―喧嘩(2)

 

小さなことでも直ぐに始まる兄妹喧嘩

 

朝日文庫版7巻〔105頁〕・昭和26年

『サザエさんが、台所でタラちゃんを背負い、鍋を七輪に乗せ、団扇で煽いでいると、後ろで、カツオ君とワカメちゃんが喧嘩している声が聞こえてきます』

『余りにもうるさいので、行ってみると、二人がの取り合いをしていました。サザエさんは、思わず、「うるさいわネ、にわでもはいててっだってよ」と叱りつけました』

『と叱りつけて台所に戻って暫くすると、サザエさんの耳に、またも、二人が喧嘩している声が、庭の方から聞こえてくるのです。手を休め、手拭いで手をフキフキ声のする方に行きました』

『すると、庭でカツオ君とワカメちゃんが、大きな声で叫び合いながら、松葉箒を激しく取り合っていました。サザエさんは驚いてしまいました』

 

兄妹喧嘩は些細なことで始まります。特に、妹のワカメちゃんが勝気だから、兄のカツオ君に負けてはいないようです。

一冊の童話の、絵本でしょうか?カツオ君が読もうとしたら、ワカメちゃんが寄ってきて、「兄ちゃん私に見せて」と取り上げようとしました。

あ!そうでないそうです。ワカメちゃんが言っています。「私が本箱から取ってきて読もうとしたら、お兄ちゃんが、おれに見せろと取り上げようとしたのよ!絶対渡さないわ」

二人は、よこせ!いやだ!と本の取り合いの喧嘩をしていたのです。

この喧嘩の言い合いを、夕食の支度をしていたサザエさんが聞きつけて、怖い顔して、「そんな喧嘩はやめなさい!庭の履き掃除をして頂戴」と言うから、本当は、本を読みたくなかった、私たちは、「そうだ、庭の履き掃除をした方がおもしろそうだ。それのお姉さんの言いつけは怖い」と思ったんです。

ところが、困ったことに、松葉箒は一本しかありません。二人ともお姉さんが怖くて、庭の履き掃除をする気になっていますから、「私が履く」いや僕が履く」と松葉箒の取り合いの喧嘩をしていたんです。

サザエさん―喧嘩(1)

 

スーツに水をかけられたくらいで、口喧嘩は辞めたがいいですよ!

 

朝日文庫版5巻〔40頁〕・昭和25年

『スーツを着てカバンを持ったサザエさんのお父さんが、家の近くの道の角でお爺さんと喧嘩しています。どうやら、お父さんが街角に出てきたとき、ハラマキをし、ステテコを着たお爺さんが、手に持ったバケツの水を柄杓ですくって、ばら撒いていた水が、お父さんのズボンを濡らしたようです。お父さんは、濡れたズボンを、お爺さんに指し示して、盛んに文句を言っています。お爺さんもそれに対抗して盛んにいきまいています』

『喧嘩は、治まったようで、お父さんは、その場を離れた道路にたたずんで、頭をひねり、「かんがえてみれば、わしも少し言い過ぎた・・・・・」と反省しています。そして、反省した結果、「なかなおりしてこよう」と言うことになりました』

『お父さんが、仲直りしようと道路の角から出てきたとき、まだ水を撒いていたお爺さんが、よそ見をしながら、バケツの水を柄杓ですくって、パアーツと撒いた水が、またもや、お父さんのスーツを濡らしてしまいました』

『ステテコにハラマキをした、禿げたお爺さんは、サザエさんの父さんと、地面に置かれたバケツと柄杓を挟んで、互いに、相手を指さしながら、怒りで声を震わせて、激しく言い合っています。沢山のやじ馬が集まってきて、二人の激しい口喧嘩を珍しそうに見ています』

 

サザエさんのお父さんが、水撒きをしていたお爺さんと激しく口ゲンカです。

サザエさんのお父さんは、会社への出勤時、家の近くの町角で、出会いがしらに、お爺さんに撒いていた水でスーツを濡らされてしまいました。

お父さんは、瞬間的に興奮し、お爺さんに激しく文句を言っています。

口喧嘩がすんだら、そのまま、会社に行けばいいのに、お父さんは、余計な反省をして、お爺さんと仲直りしようと、お爺さんのところに戻って行ったのです。

 

水を引っ掛けたお爺さんは、まさか、さっき水を引っ掛けた、サザエさんのお父さんが、仲直りしようと戻ってくるとは思いもしません。

まだバケツには水は残っているし、まだ水をまいていない道路も残っている。

もう一仕事と、水をまいていたら、戻ってきたサザエさんのお父さんに、またもや、水を引っ掛けてしまいました。

 

以下お爺さんの言い分です。

「水を引っ掛けたら、戻ってきた其の男が、またもや、烈火のごとく怒り出した。売られたケンカは買わねばならん。何も、アンタに水をかけようと水を撒いているわけではない。カラカラ天気で埃も立つから家の周り一面に水を撒いているのだ。何も反省などしなくてもいいんだ、さっきの喧嘩など仲直りなどせんでもよい。余計なことするから、又、水をかけられるんだ。さっさと会社に行けばいいのだ。口喧嘩なら、前さんには負けんぞ!何時までもやってやるぞ!しかし、あんたもやるな。長いこと、言い合っているから、ほら見てみなされ、やじ馬があんなに沢山集まってきたぞ!」

サザエさん―エレベーター(5)

 

頭にバンダナを巻き、黒いショールを肩にかけ、純白のミニドレスのマネキンは、この時期のファッションでした。

 

朝日文庫版21巻〔91頁〕・昭和33年

『マスオさんが、エレベーターに乗ろうとボタンを押しています、エレベーターは、蛇腹式扉のデパートのエレベーターのようです』

『エレベーターが、マスオさんの前に降りて来て、蛇腹式扉が開きました。買い物包みを持ったマスオさんがエレベーターに乗り込もうとしています』

『マスオさんは、足を一歩踏み出して、エレベータの中に、頭に純白のバンダナを巻き、肩に黒いショールをかけた、純白のミニドレスを着た、まるで正田美智子様のような綺麗な女性が立っています。マスオさんは、それを見て「ハッ」としました。その女性の横には、付き人のような男性が立っています』

『エレベーターの扉が開いて、正田美智子様のような、真っすぐに硬直した女性のマネキンを肩に担いだ付き人のような男性が、エレベーターから出てきました。マスオさんは、額の冷や汗をハンカチで拭き拭き、「ちょっとしたショックでしたなぁ」と言いながら、マネキンを担いだ男性の後からエレベーターを降りました』

 

これは、随分古い話でした。やはり、エレベーターをネタにしたサザエさんの四コマ漫画は、僅かしかありませんでした。

このネタが最初のエレベーターをネタにしたものでした。

古い話です、昭和の33年頃の出来事です。

この頃、皇太子殿下のお妃が、民間出身の正田美智子様だと大変な話題でした。マスオさんが、デパートに買い物に行き、デパートの古風な蛇腹式扉のエレベーターの奥に、その正田美智子様を見たのです。

そのエレベーターに、正田美智子様が乗っている!と思った瞬間は、驚いてエレベーターに乗り込むのを躊躇しました。

ハッと驚きましたが、よく見ると違っていました。

乗り込んで、その美智子様とともにエレベーターに乗りました。

エレベーターは、止まり扉が開くと、正田美智子様は硬直し、男性の肩に担がれてエレベーターを降りました。

マスオさんは、ホッとしたようです。

マスオさんが見たのは、正田美智子様のような女性のマネキンでした。

旧式の蛇腹式の扉の隙間越しに見た、そのマネキンは、正に、正田美智子様のように見えたのでしょう。

サザエさん―エレベーター(4)

 

もう年です、五階までも、階段を歩いてあがるのはやめて、やはりエレベーターに乗りましょう。

 

朝日文庫版32巻〔17頁〕・昭和41年

『1階から8階までの昇降階を示す数字の表示板がある1階のエレベーターの前に、サザエさんのお父さんがいます。お父さんは、エレベーターのボタンを押しています』

『エレベーターが降りて来て、ドアーが開き、エレベーターガールが現れ、右手でドアーを抑え、左手で上を示し、にっこりと笑って、「どうもおまたせしました上にまいります」と言いました』

『サザエさんのお父さんは、エレベーターに乗り込まず、ドアーが開いたエレベーターの前に立ったままで、右手を盛んに振って、「のらないんだけんこうのため五階までかいだんをあがっていく」と言っています。エレベーターガールは、いやな顔をしてお父さんを睨みつけています』

『お父さんは、デパートの広い階段を、汗を飛ばしながら、「だれかにいわないことにゃ とてもけっしんがにぶるからな」と愚痴を言いながら登っています』

 

まだ若いころ、勤務先が日本橋三越の近くにあった会社に勤務し、机に座って仕事をしていたので、昼休みになると、足腰を鍛えるためだと、エレベーターやエスカレーターに乗らず、デパートの階段を上ったことは、よくありました。若いころは駆け上がることもできました。

 

サザエさんのお父さんは、頭もハゲてかなりお歳ですから、「無理はしない方がいいですよ」と心配します。

こんなことを言うと、サザエさんのお父さんは、意固地だから、「いやおれも、エレベーターに乗らず、階段をあがる」と言うのでしょうね。

 

お父さんは、どういう心境だったのでしょうか、「最近脚力が衰えてきたぞ」と自覚していたのでしょうか?

ある日デパートに来て、デパートの「広く上に伸びている階段」を見上げ、「きょうは足腰を鍛えるためエレベーターにはならず、階段をあがるぞ」と決心したようです。

しかし、お父さんは意地っ張りです。

「お父さんそんなことやめなさい」と誰かに止められ、その誰かに「いや!おれは五階まで歩いてあがる」と宣言しないと、階段を上がる決心がつかないと言うのです。

そんな決心を伝える知人が誰もいないデパートの中で、お父さんは、しかたなく、スタスタとエレベーターの前に行き、エレベーターガールのお嬢さんに、

「私はエレベーターには乗りません、五階まで階段を上がります」

と自分の決心を伝えたのです。

 

誰でもいい、エレベーターガールのお嬢さんで良いと、自分の決心を告げたら階段を上ることに踏ん切りがついた。

しかし、年老いて五階まで上がるのは並大抵のことではありませんでした。

汗は出るは、脚は痛むはで大変だったでしょう。

しかし、お父さんの心情は単純で子供っぽくて可愛いですね!

サザエさん―エレベーター(3)

 

マスオさん!新入りエレベーターガールさんの練習にご協力ください。

 

朝日文庫版36巻〔64頁〕・昭和42年

『マスオさんの前に、待っていたエレベーターが来ました。ドアーが開きました。マスオさんは、サーッと乗り込みました。乗客は誰もいません。エレベーターガールが居て、行き先ボタンを押しています。マスオさんは、上の方を指さしながら「屋上!」と言って乗り込みました』

『乗客は、マスオさんだけのエレベーターの中で、エレベーターガールは、行き先ボタンを見ながら、「つぎは四かいおおりのかたございませんか?」と言っています。それを聞いたマスオさんは、「だから置上!」と念を押すように答えています』

『上に昇っていくマスオさんだけが乗客のエレベーターの中で、エレベーターガールは、また行き先ボタンを見ながら、少しうつむき加減に「つぎは五かいごようのかいすうおしらせねがいます」と言っています。それを聞いたマスオさんは、いらつき加減に「だから屋上だといってるでしョ!」と大声で怒鳴っています』

『すると行き先ボタンを見ていたエレベーターガールが、パッと後ろを振り向いて、マスオさんを睨みつけながら、「しずかにしてください、れんしゅうしているんだから」ときっぱりと言いました。手には練習用のメモ用紙を持っていました。マスオさんは、「ア新入りか!」と気付きおとなしくしています』

 

よく見かけました、デパートのエレベーターガール。

彼女たちは、新入りの時は、いろいろと案内のお知らせお願いなど、練習するのですね。

マスオさんは、そんな新入りエレベーターガールのエレベーターに一人だけ乗り合わせたようです。

乗るとき、「屋上」とハッキリ言ったのに、自分以外に誰もいないし、乗り込んでも来ない、そんな乗客は、自分一人だけのエレベーターなのに、このエレベーターガールは、毎階、「降りる階数を知らせろ」、「御用の階数を知らせろ」など聞いてくる。

「なぜだ!俺は乗るとき大きな声で、屋上と言ったはずだ」、

聞いてくるから知らん顔はできない、だから、聞かれるたびに

「だから屋上!」

と念を押さないと駄目だ!

毎階聞くから、イラツイタ、つい、大きな声で怒鳴ってしまつた。

「だから屋上!」

「え!新入りさんだったの!練習していたのか。怒鳴りつけてごめん。怒らせてしまったようだね。本当にごめんなさい」

初めから言ってくれればよかったのに!

「新入りのエレベーターガールさんですか?練習中ですか!」

ということになれば、彼女は

『「お客様!屋上ですね。私新入りです、ただ今、エレベーターガールの練習中でございます。お耳触りでしょうが、あなたの行き先屋上まで私のつたないアナウンスにお付き合いください」

とご迷惑にならないようにお願いしましたのに!ホホホホ!』

と言ったでしょう。

しかし、マスオさん、屋上に何をしに行くのですか?

サザエさん―エレベーター(2)

 

ではなくであればよかったのに!

 

朝日文庫版41巻〔52頁〕・昭和45年

『エレベーターの中です。マスオさんとその他大勢の人が乗っています。皆さんは、エレベーターの中では黙っていて、お喋りもしていません、エレベーターの中は静かです。乗っている人達を順番に見てみます。一番背の高いのがマスオさんです。次が髪を刈り上げて若い人でマスオさんから一人離れて立っています。マスオさんから遠く離れた右端には、髪の毛をモッコリと盛り上げた若者らしい男が立っています。その斜め前方に一番背の低い髪の毛をボサーツとさせた中年の会社員らしいオジサンが立っています。そのオジサンの左隣でマスオさんの右隣りには眼鏡をかけた実直そうな部課長クラスのオジサンが立っています。マスオさんの左隣には、制帽をかぶったエレベータガールが立っています』

『このエレベーターの中で、突然「PU~」という音が響きました。どうやら部課長クラスのオジサンの後ろから聞こえてきました。そのオジサンは、正直に「あっという顔」をしています』

『真ん中にいた、その部課長クラスのオジサンは、マスオさんほか皆さんの真ん中で、眉毛を八の字にして、済まなさそうに恐縮しています。とくにマスオさんは、眉毛を逆立てて怒っています』

『エレベーターが止まると、部課長クラスのオジサンは、そのエレベーターに乗っていた男性のみなさんに、エレベーターの外に引きづり出され、床に倒されて袋だたきにあっています。髪の毛をモッコリと盛り上げた若者らしい男は、「これだけ公害をうけている上に何だっ!!」といきりたち、ゲンコツを振り上げています。勿論、その他の、髪を刈り上げて若い人は、両手の拳を叩きつけています、一番背の低い髪の毛をボサーツとさせた中年の会社員らしいオジサンは、部課長クラスのオジサンの髪の毛を引っ張り殴っています。PUと音を響かせたオジサンが、皆に思い思いの暴力を振るわれている中、マスオさんだけは、腕を組んで、「みんなこのところ気がたっているからなあ」と偉そうに文句を言うだけです』

 

エレベーターの中で、屁をこけばこんなことになるのでしょうか?

そうかもしれません。実直そうな部課長クラスのオジサンは、いさぎよくPU~などと思い切った音を出して、屁をこいたものですから、皆さんに直ぐ分ったんですね。

皆さんの怒りようは、ただものではありません。音だけでなく、香りも相当の悪臭だったのでしょう。

エレベーター中でのオナラは、こういう結果になるかもしれません。

だから、エレベーターの中でのオナラは控えめにSU~と音がしないか~僅かに気づかれる程度にした方がよいでしょう。

SU~であれば、気付かれない可能性大です、やむを得ず出てしまったら、悪臭が漂う前にエレベーターを降りましょう。

しかし、エレベーターの中でPU~という音のオナラは、犯人であることが、直ぐばれますから、袋叩きの暴力を受けることもあるということでしょう。

しかし、この暴力はいけません。警察沙汰になるかもしれません。

とにかく、皆さん相当に怒って、袋叩きにしていますから、障害事件になることも予想されます。

マスオさんは、そこまで、先を見通して、手を出さなかったのでしょうか?いや殴る勇気がなかったのでしょう。良い恰好などせずに、見事に音を出して臭いオナラをした男性の頭を一発ぐらい殴れば、気も晴れてよかったのに、と思いました。

 

サザエさん―エレベーター(1)

 

男女二人きりの夜のエレベーターの中は、互いに気疲れするもの。

 

朝日文庫版42巻〔100頁〕・昭和46年

『夜のエレベーターです。ノリスケさんが乗っています。あと一人、髪を高ーくアップに結った、妙齢の和服の女性が、バッグを胸に抱え込むようにして立っています。二人きりの夜のエレベーターの中で、二人は、やり場のない顔をしています。そんな中で、ノリスケさんは、眉をひそめ、「こっちをあやしんでいるんじゃねえかナ」と思っています』

『妙齢の和服の女性は、少し、顔をノリスケさんから避けるようにして、横目でノリスケさんの方を見ると、「あたしがあやしんでいると思っているんじゃないかしら」と思っています。ノリスケさんは、横目で女性の方を見ています』

『二人は、互いに素知らぬ顔をして、ノリスケさんは、「こっちがアヤしんでいると思ってるンじゃないかと思っているンじゃないかナア・・・」と思いめぐらし、女性は「こっちがアヤしんでると思っているンじゃ・・・・」と思いめぐらしいます』

『16階について、女性はエレベーターを降りました。エレベーターを出た女性は、疲れた顔をホッとさせながら「アー気疲れした!!」と逃げるように歩いています。ノリスケさんは、止まったエレベーターのドアーを手で押しとどめ、随分と疲れたような顔をして、「アー気疲れした!!」と溜まっていた息をフーッと吐き出しています』

 

エレベーターを題材に、どんな話題が取り上げられているか、と思い探してみました。

まずは、男女二人きりしか乗っていない夜のエレベーターの中です。

狭い箱の中、乗っていた男性が、妙齢の綺麗なご婦人と二人きりだったら、俺のこと、どう思っているだろうか?

やはり、「変な男かもしれないわ」と怪しまれることが多いでしょうね。

 

しかし、人の性格もいろいろ、心配性の人だけではありません。

楽天家の人は、ノリスケさんのよう

「こっちがアヤしんでいると思ってるンじゃないかと思っているンじゃないかナア・・・」

とは思わないかもしれません。

想像して気味が悪いのですが、19階まで登っている間、夢を見るのが良いかもしれません。

想像するんです、女性が話しかけてきます。

「あら素敵なお方、エレベーターを降りて、下のレストランでお食事しません。あたしが、ご馳走しますわ!」

これを無視しないんです。

「いやー結構ですよ。ええ!そうですか、そんなに俺と食事したいのですか?そうおっしゃるなら、むげにお断りするわけにはいきません、御馳走になりましょう」

なんて、所詮、夢のような意外なことになるかもしれません。

エレベーターの壁に凭れかかり束の間の夢を見れば、余計な気疲れはしません。あなたが、にこやかに夢見るような顔をしていれば、夜のエレベーターであっても、女性は余計な気疲れはしないでしょう。

しかし、ノリスケさんのように緊張した顔をしていれば、見知らぬ男女二人きりのエレベーターの中では、作者が心配するような気疲れはあるでしょう。