サザエさん―傘(25)

 

キップ1枚が無くなったくらいで、それを探そうと猿股一つになることはないでしょう。

 

朝日文庫版28巻〔108頁〕・昭和39年

『ワカメちゃんが、雨の中、大きなコウモリ傘を小脇に挟んで持ち、小さな傘をさして、柳の木が植えてある街路を楽しそうに歩いています』

『ワカメちゃんは、駅の待合室に到着しました、小さな傘を畳みながら待合室の中に入って行きました』

『と、目の前に、お父さんが、カンカンに怒っている制服制帽の駅員さんの前で、ネクタイを外し、スーツもシャツも脱ぎ、ズボンも取り、猿股一つの恥ずかしい姿になっています。お父さんは、脱いだズボンを駅員さんに向かって振りかざして「イヤ!のるときはキップはたしかにあったんだ」と弁明しています』

『ワカメちゃんが、顔を真っ赤にして、大きなコウモリ傘を小脇に挟んで持ち、小さな傘をさして、一人で駅の待合室から出ていきました』

 

こんな時、猿股一つのお父さんに、コウモリ傘を差し出して「迎えに来たよ」とは、恥ずかしくて言えませんよね!

猿股一つになったお父さんは、相当に怒っているようです。

何処からも、薄っぺらなキップは出てこないようです。

そんな状況を駅員さんに、幾ら示しても、キップは、どうしても出てきません。

こんな恥ずかしいことをしなくても、切符代を、また支払えばいい、と思いますが、お父さんは、何を興奮しているのでしょう?

 

何時も思うのですが、頭の天辺に毛が一本のハゲ頭のワカメちゃんのお父さんは、オジイサンすぎる。

ワカメちゃんとお父さんが一緒になると、お父さんがお爺さんに見え、ワカメちゃんはお孫さんに見えてしまう。

ここでも、興奮したお爺ちゃんが恥ずかしくなった、お孫さんが逃げ出したという、可愛いシーンになっています。

サザエさん―傘(24)

 

コウモリ傘の動機不純。

 

朝日文庫版28巻〔73頁〕・昭和39年

『雨の中、ノリスケさんが、同僚とコウモリ傘をさしての会社帰り、前方を傘もささず、髪も、上着も、スカートも濡らして歩いている女性がいました。二人は、その女性を追って走りだしました』

『近くまで来た時、ノリスケサンは、突然、立ち止まり、右手で同僚を制して「きみィぼくが先にみつけたんだ!」と主張しました』

『すると同僚は冷静な顔で、「しかしぼくのほうがどうきがじゅんすいだ」と自分の方を指さして言い放ちました。ノリスケサンは同僚が言っていることが判らずキョトンとしています』

『同僚は、女性を自分の傘の中に入れて歩きながら、ノリスケさんに「おフクロだッ」と言いました。ノリスケサンは、ガッカリした様子で、一人の傘の中、サッサと言ってしまいました』

 

若くもないのに、男性は何を思うのでしょう?

傘に入れて上げただけで、モテルとでも思うのでしょうか?

たいしていい男とも思えないのに。不可思議です。

しかし、最近は若くもない、男の齢の差婚が芸能界を賑ぎ合わせいるようですね。

 

動機不純、これは良いことだと提案しても、提案を吟味され、正当な理由ではなく、動機不純だと却下される、苦々しいことはありませんでしたか?

 

ノリスケさんが、女の人が雨にぬれているので、傘に入れてあげようと思う事は、純粋です、決して動機不純だとは思えません。

本当に「雨に濡れ可哀そうだ」と判断した純粋な気持ちです。

そんな気持ちを、母親だから傘に入れてあげるのが当然の気持ちであるはずの同僚が、、ノリスケさんの傘に入れてあげようする純粋な動機を、「動機不純」と断定することこそ、何だか不純なこと何時も考えているように思えて仕方ありませんでした。

サザエさん―傘(23)

 

コウモリ傘も壊れます。

 

朝日文庫版27巻〔110頁〕・昭和38年

『サザエさんが、コウモリ傘を小脇に挟んで、歩道に立っています。その前を太った角刈りの男性がスクーターに乗って、通りかかりました。サザエさんは、即座に手を振って、走っていくスクーターに向かって、何やら呼びかけています』

『突然、雨が降り出しました。雨は、男性の頭から降りかかってきました。男性は、さっき、何か叫びかけた女性がコウモリ傘を小脇に挟んでいてことに気付きました』

『男性は、「のっけてってあげましょう!!」と叫びながら、雨の中、スクーターを、今来た道に引き返しています』

『サザエさんは、スクーターの後ろの席に跨っています。コウモリ傘は、開かず、畳んだまま小脇に挟んでいます。サザエさんは、「カサこわれてんです」と申し訳なさそうに言っています。男性は、降りかかる雨に向かって、情けなさそうな顔をし、頭から雨水を垂らしながら、小脇にコウモリ傘を挟んだサザエさんを後に乗せてスクーターを走らせています』

 

可哀そうな男性ですね。

スクーターを走らせていたらが降り出した。

さっき、手を振って呼びかけてきた女は、確かコウモリ傘を持っていたぞ。

後に乗せてやれば、傘を開いてくれる。雨にぬれずに帰れるぞ!これはラッキーだとでも思ったのでしょう。

思いついたら、直ちに実行。

「ア!まだいる。お譲さん、スクーターの後ろの席は空いていますよ。良ければ乗ってください」

お譲さんと思われたサザエさん

「ありがとう!助かりますわ」

と乗ってきた。

「発車しますよ」

バルンバルンとエンジンをふかして走り出したが、お譲さんは、カサを開かない。

開いてくださいとは言えないので、そのまま走っていると、お譲さんは、コウモリ傘を開かない訳を明かした。

「カサこわれているんです」

と!

 

こうなったら、この女をお譲さんとは言わない。

「このオバサンは、雨が降り出しそうなのに、持っている傘が壊れているので、俺のスクーターに便乗しようとしたのか。しまった、しまった。余計なことして、ビショリヌレなってしまったぞ!」

サザエさん―傘(22)

 

困っている幼い子を見つけたら、勇気をだして助けてあげましょう。

 

朝日文庫版26巻〔79頁〕・昭和38年

『小学新入生らしい、新しい制帽を被り、ランドルを背負った男の子が、悲しそうな顔をして、雨に濡れて歩いてきます。直ぐ近くを、をさした、普段着のマスオさんが、歩いています』

『泣き出しそうな顔をして、雨に濡れて歩いている男の子を見て、をさしているマスオさんは、入れてあげようかどうしようかと悩んでいるようです』

『男の子は、新しい帽子から雨水を垂らしながら、濡れてしょんぼりと帰っていきます。マスオさんは、自分の家の前まで来ていました。そこまで、マスオさんは、男の子を傘の中に入れてあげていません。家の門の前まで来た時、サザエさんが、買い物籠を下げて現われ、男の子を指さして、プンプンと怒りマスオさんを叱っています。多分、<傘に入れてあげなさい、どうして入れてあげないの>と責めているようです。マスオさんは、大変困った顔をしています』

『マスオさんとサザエさんは、一つのコウモリ傘に入って、家の前から遠ざかっていく男の子を、ただ見ているだけです。マスオさんが、「だってゆうかいかとおもってこわがるよ」と言うと、サザエさんも、「それもそうね」と頷いています』

 

そうなんです。小さい子供が、困っていたり、危ない目に会おうとしている時、助けてあげようと、直ちに、行動できない時があるようです。

仮にそのように行動した時、その行動を、第三者から見た時、大の大人が小さい子に良からぬことをしようとしている、誘拐していると見られたりします。

 

第三者に、

「あなた、小さい子に何をしているのですか」

と怪しまれたり、拘束されたりすることが、あるかもしれません。

 

「違いますよ!この子を助けてあげようとしているのです」

と釈明しなければなりません。

 

疑われて、釈明すれば、不届きなことをしたのではないと、第三者は判ってくれるでしょう。

 

しかし、釈明することが面倒だと思うのでしょう。

どうやら、サザエさん夫婦は、そうだったようです。

 

小さい子が、危険な状況に置かれようとしている時や困っている時、大人のあなたは、勇気を持って、その子を助けてあげましょう。

 

昔と同様、小さい子供達が危険な事件に巻き込まれる犯罪は、度々、発生しています。

この種の事件を許してはいけません、撲滅しましょう、勇気を出しましょう!!

サザエさん―傘(21)

 

仲の良い友達でも、雨の中の長話は止めましょう。大事な人に迷惑をかけます。

 

朝日文庫版24巻〔110頁〕・昭和37年

『サザエさんと近所の奥さんが、互いに派手な柄の雨傘をさして、雨の中ペチャクチャと笑いながら、楽しそうにお喋りをしています。サザエさんは、小脇にコウモリ傘を挟んで持ち、その先の手には長靴をぶら下げています』

『すると向うから、マスオさんが、ソフト帽のつばから雨水を垂らし、スーツの襟を立てて、濡れながらサザエさんの方にやってきました。サザエさんは、大きな声で「おかえんなさい」と声をかけました。近所の奥さんも、振り返ってマスオさんを見ています』

『サザエさんは、マスオさんが傍まで来ると、持っていたコウモリ傘を渡しました。マスオさんがコウモリ傘を開くと、サザエさんは、持っていた長靴をマスオさんの足元に置いて、皮靴と履き替えさせています。マスオさんは、コウモリ傘の中で、濡れたソフト帽やスーツから雨水をポタポタと落としながら、皮靴を長靴と履き替えています。近所の奥さんは、サッサと行ってしまいました』

『長靴に履き替えマスオさんが、怒った顔をして「なんだいこんなところで!!」とカンカンに怒っています。サザエさんは、マスオさんが履き替えた皮靴を持って、「アラ、そんなにおこらなくたっていいじゃない」と文句を言っています。サザエさんの後ろには、「いその」と書いた表札がある門柱でした』

 

サザエさんが、折角持ってきた長靴を皮靴に履き替えさせている。

濡れた皮靴は一刻も早く履きかえさせよう。

何処でもいいじゃないか、早い方が良いよネ!サザエさん。

それなのに、

「なんだいこんなところで!!」

はないだろう!!

亭主だと言ってそんな怒り方はないだろう!!

と腹が立ちました。

 

ところが、よくよく見ると、そこは、礒野家の門の前でした。

マスオさんでなくても!そりゃ怒りますよ。

 

サザエさん、貴方は、自宅の門を出てところで近所の奥さんと出会い、ペチャクチャと長話をしているから、マスオさんは、雨に濡れて家まで帰ることになってしまったじゃありませんか!

 

何時でも何処でも彼処でも長話をするのは止めてくれ!

 

「アラ、そんなにおこらなくたっていいじゃない」

と言われても、そりゃ怒るのが当然だ。

マスオさん、もう少し「ガツン」とやった方が良いよ!

そうしないと、サザエさんの可笑しな癖は直らないよ。

マスオさん、寒かったでしょう。

早く風呂に入って、一杯呑んで寝ましょう!

サザエさん―傘(20)

 

コウモリ傘は、例えば、焼き芋を買っている姿を人に見られたくない時の道具として使えます。

 

朝日文庫版21巻〔68頁〕・昭和33年

『サザエさんのお父さんが、コウモリ傘をさして、会社からの帰りです。道路に雨水だまりが残っていますが、お父さんが、傘の外に手を出しても、雨しずくは、手に当たりません。太陽も晴れた空に輝いています』

『ハーフコートにサンダルを履いたレディーが、ハデな模様の雨傘を差して、向こう向きに立っています。サザエさんのお父さんが、にこやかに、「もうあめはやんでますよ」と声をかけました』

『レディーは、傘を差したまま振り返ると「わかってます!」と不快そうに返事をしました。お父さんは、エッと驚いています』

『よく見ると、レディーは、屋台の焼き芋屋さんの前から少し離れたところに、傘を深く被るようにして立っていたのです。お父さんは、「なるほど!!」と納得しています』

 

傘は、やはり、その開いた陰に隠れ、人に見てほしくないことをするときに使う道具でした。

 

ヤキイモは、多くの女性が大好きな食べ物です。

しかし、これを買うのは、人に見られたくないのでしょうか?

好きなものです、堂々と買えばいいのにと思うのですが?

何故でしょう。

 

ヤキイモが、ガス源となり、悪臭の根源となってしまい、それを放つのが、恥だと思うのでしょうか?

そんなことを思わない者にとって、堂々と買える、美味しい食べ物です。

大好物です、堂々と買います。

 

もし、焼き芋を食べて、芳香が発せられると、どうなるでしょう?

サツマイモの品種改良で「焼いて食べれば、香しい芳香を放出できる芋」の新発明が出来れば、ご婦人がたも、堂々とヤキイモを買うようになるのでしょうか?

サザエさん―傘(19)

 

コウモリ傘は、人に見られたくないことをする時の道具として使えます。

 

朝日文庫版18巻〔90頁〕・昭和32年

『マスオさんが、コウモリ傘をさして会社からの帰りです。近くを歩いていたご婦人が、傘を畳みました。それを見て、マスオさんが傘の外に手を出すと、雨しずくは、手に当たりません。雨は、もう、とっくに、やんでいました』

『マスオさんは、コウモリ傘を畳んで手に持ち、颯爽と歩いていると、電信柱の傍に、傘を開いて、その下に立っている、スーツを着た男性がいます』

『マスオさんは、その男性の後から、開いたコウモリ傘を、トントンと突き、太陽を指さして、もう雨は止んでいますよと言っているようです』

『よく見ると、その男性は、開いたコウモリ傘の陰で、貰ったばかりのボーナス袋を、確認していました。マスオさんは、失礼しましたと赤面して立ち去りました』

 

コウモリ傘は、開いた陰に隠れ、人に見てほしくないことをする道具として使う隠れ蓑まがい使い道がありました。

 

男性も、一刻も早く、家に帰り、奥さんと一緒に見ればいいものを、まだ、家に着かない電信柱の傍で、開いたコウモリ傘の陰でボーナス袋の中身を確認しています。

 

こんな所で、ボーナス袋を確認するのは、よほどの事情があったのでしょう。

「ボーナス幾らもらったのかな!あのバーの飲み代出せるかな!」

と、奥さんに見せれば出せなくなる、ボーナスの中身を確認して、これだけあればと、奥さんを騙す口実でも考えたのでしょうか?

 

しかし、透明なビニール傘では、隠し事は出来ません。透けて見えます。

サザエさん―傘(18)

 

俄か雨が降り出しました。怒りも冷静に致しましょう。貴方達を誰かが見ています。

 

朝日文庫版18巻〔85頁〕・昭和32年

『マスオさんが、ソフト帽を被り、コートを着て、会社に出かけようとしています。玄関まで来ると、サザエさんがいて、傘立てを覗いて不審そうに、「あなたカサは?」と尋ねています。マスオさんは、頭に手をやって、思い出そうとする様子で、「ないかい?」と言っています』

『隣の家の中から、意地悪そうな小顔の中年のサラリーマンらしきオジサンが、奥の部屋の奥さんにでも話しかけているのか、「オイきてごらん またご主人がやられているよ」とニヤニヤして言っています。マスオさんとサザエさんは、玄関を出たところで、番傘をさして、頭を垂れて立っているマスオさんに、サザエさんが、凄い剣幕で、コウモリ傘は何処にやったのよと問い詰めているようです』

『マスオさんは、コウモリ傘垣根に干したままになっているのを見つけました。番傘をさして、垣根に干されたままのコウモリ傘を指さして、サザエさんに文句を言っています。サザエさんも、気付いて、しまったという顔をしています』

『隣の家の窓際に、意地悪そうな小顔のサラリーマンと、その奥さんが並んで立っており、奥さんが「うそおっしゃいあべこべじゃないの」と言っています。サザエさん家の玄関先では、コウモリ傘をさしたマスオさんが、畳んだ番傘を手にして、頭を垂らして立っているサザエさんに、激しくガミガミと文句を言っているところでした』

 

今日は、マスオさんが、激しく怒っています。

原因は、マスオさんのコウモリ傘です。

マスオさんが、会社に行こうとした時、サザエさんが、マスオさんのコウモリ傘が傘立ての中にないと言い出したのです。

 

サザエさんが、

「カサは何処?」

と言いだし、マスオさんは

「どうしたかな?」

と思い出そうとしています。

 

思い出せないでいると、サザエさんのが落ちてきます。

ガミガミと問い詰めているようです。

何と言っているのでしょう。

 

その言っていることを聞いてみたいですね。

確りと聞いている人がいました。

隣のご主人です。

「オイきてごらん またご主人がやられているよ」

と奥さんに言っていますから、相当、マスオさんは、サザエさんに、激しいことを言われているのでしょう。

多分

「折角、良いコウモリ傘を買ってあげたのに、もう、何処かへ忘れてきたの!思い出して、取りに行きなさい。貴方は、まだ若いと思っているのに、頭悪いんだから、物忘れが酷いんだから、しっかりして頂戴!!ガミガミ・・・・」

と喧しく怒鳴りつけられていたのでしょう。

隣のご主人は、それが面白くて仕方ないのです。

「これは、一人で楽しむのはもったいない」

奥さんにも見せてあげようとしたのです。

 

ところがです。

物忘れが酷いのは、マスオさんではなかったのです。

サザエさんの方でした。

マスオさんのコウモリ傘は、前の日も雨だったので、マスオさんが使ったのです。

濡れていたので、サザエさんが、開いて、垣根に干していた。

サザエさんは、そのことを、すっかり、忘れてしまっていたのです。

 

垣根に、開いたまま干してあるコウモリ傘に気付いたのは、マスオさんでした。

今度は、マスオさんの方が、物忘れの酷いサザエさんに、「ガミガミ」と文句を言う番です。

マスオさんが、干してあったコウモリ傘を持ってきて、サザエさんを激しく叱りつけています。

 

その様子を、隣の夫婦は並んで見ていました。

ご主人が、奥さんに見せたかった

「カンカンに怒ったサザエさんに叱られ、うな垂れているマスオさんの図」

は、奥さんが見たときには、

「カンカンに怒ったマスオさんに叱られ、うな垂れているサザエさんの図」

に変わっていました。

ご主人が、奥さんに見せたかった

「オイきてごらん またご主人がやられているよ」

奥さんが見たのは

「うそおっしゃいあべこべじゃないの」

でした。

マスオさんもサザエさんも、いずれ劣らず、物覚えは良くないようです。

 

それにしても、庭での言い争いは、誰かが見ているかもしれません、注意しましょう。

サザエさん―傘(17)

 

何時、俄か雨が降り出すか判りません。怒りも冷静にいたしましょう。

 

朝日文庫版16巻〔37頁〕・昭和32年

『サザエさんのお父さんが、近所の小さな悪さ坊主の襟首を掴み、坊主のお父さんに、玄関の中で、頭から湯気を立て、カンカンに怒り、文句を言っています。坊主は、観念したように、首をうなだれ、大人しくしています、坊主のお父さんは、真面目な顔をして、サザエさんのお父さんの文句を静かに聞いています』

『サザエさんのお父さんが、まさに、厳しく文句を言っている時、激しいにわか雨が降り出しました。坊主のお父さんは、部屋の方に向かって大きな声でコウモリ傘と言っています。サザエさんのお父さんは、突然のにわか雨に大人しくなってしまいました』

『坊主のお母さんが、部屋の中からコウモリ傘を持って現れました。その上、レインコートまで持ってきました。坊主のお父さんは、そのレインコートをサザエさんのお父さんに差し出しています。サザエさんのお父さんは、首に手を当て、深々と頭を下げお礼を言っています』

『借りたレインコートを着て、借りたコウモリ傘を持ったサザエさんのお父さんは、激しい俄か雨の降る玄関先で、深々と腰を折り、地面に着かんばかりに頭を下げ、お礼を言っています。悪さ坊主のお母さんは、そんなサザエさんのお父さんを静かに見ています』

 

サザエさんのお父さんの激しく怒った顔!

これほど怒ったお父さんの顔は見たことがありません。

それほど怒っています。

 

小さな悪さ坊主は、何をやったのでしょう?

サザエさんのお父さんは、その小さな悪さ坊主の襟首を釣り上げるように持ち、頭から湯気が噴き出し、目をつり上げ、声を張り上げ、坊主のお父さんに文句を言っています。

その様子から坊主は、相当の悪さをやったようです。

 

サザエさんのお父さんは、サンザン文句を言ってスッキリして、引き上げるつもりだったでしょう。

 

ところが悪いことに、激しい俄か雨が降ってきました。

激しい怒りをブチまけた後とは言え、激しい雨の中に飛び出すわけにはいきません。

 

どうしようかと思った瞬間、親切な、坊主のお父さんは、家の奥にいるお母さんに、

「俄か雨が降って来たから、お客さんにレインコートとコウモリ傘を持ってきて!」

と声をかけました。

 

優しいお母さんは、直ぐにコウモリ傘、その上レインコートまで持ってきました。

お父さんは、サザエさんのお父さんに

「激しい雨が降ってきました、濡れたら大変です。使ってください」

と貸してくれました。

 

サザエさんのお父さんは、悪さ坊主のことを激しく責め立てたばかりで、大変恥かしい思いでしたが、この雨では濡れて帰れず、借りることにしました。

 

ご夫婦の親切に、深く深く、お礼を言う事になってしまいました。

サザエさん―傘(16)

 

鉄柵の素敵な音、しかし、柵の向こうに何がいるか判りません。用心しましょう。

 

朝日文庫版14巻〔67頁〕・昭和30年

『街路を挟んで、バス停がある大きなお屋敷があります。そのお屋敷は、鉄柵で囲われています。学校帰りのワカメちゃんは、コウモリ傘を持って鉄柵に沿った道を歩いています。ワカメちゃんが、歩きながらコウモリ傘の先端を鉄柵に当てると「カランカラン」と素敵な音が響きました』

『コウモリ傘の先端が鉄柵に当たると素敵な音が出ることが判りました。ワカメちゃんは、コウモリ傘の先端を当てながら走りだしました。「カランカランカランカランカラン~~~~~~」と鉄柵が続く限り素敵な音が響きます。ワカメちゃんは楽しくなりました』

『ワカメちゃんが、鉄柵にコウモリ傘の先端をあてながら「カランカランカランカランカラン~~~~~~」と走り続けていると、突然「ゴツン」と異様な音がしました。ワカメちゃんは、何だろうと思いました』

『額に大きな瘤ができたオジサンが、鉄柵の下の煉瓦の上にペンキの缶を置き、手に刷毛を持って、怖い顔をして、額の瘤を指さしながら、ワカメちゃんを睨みつけています。それを見たワカメちゃんは、全速力で逃げました』

 

確かに、小さい頃、鉄柵に金棒を当てて出る音で遊んだことがあります。

等間隔で並んでいる鉄柵にコウモリ傘の先端が当たって出る

「カランカランカランカランカラン~~~~~~」

の音は、小さい子には楽しい遊びです。

 

ワカメちゃんも、楽しくなり、鉄柵にコウモリ傘の先端を当てたまま走ったのでしょう。

 

しかし、等間隔に並んでいる鉄柵の間に何がいるか判りません。

ワカメちゃんの場合、一つの鉄柵の間にオジサンの額があったおです。

どうして額があった?

多分、オジサンは鉄柵の根元が少し錆びておいるのに気付き、錆止め塗料と刷毛を買ってきて、鉄柵に額を近づけ、錆びたところに塗料を塗っていたのでしょう。

 

小さい子がしたことだとは言え、勢いよく当てて来るコウモリ傘の先端が、額に当たれば痛いでしょう!コブくらいは出来ると思います。

 

ワカメちゃんも、コブができたオジサンの頭が突然出てきたら、ビックリしたでしょう。

コウモリ傘を引きずって、一目散に逃げています。

 

傘の先端が人の額に当たっても「カラン」という音は、例え、脳味噌が少ない人でも出ないでしょう。

 

「ゴツン」でしょう。

その音に、ワカメちゃんは、オヤ!おかしいと気づき、見てみると

額に大きな瘤ができたオジサンが、目を釣りあげ怖い顔をして、怒鳴り散らしていました。

 

幸い!オジサンは、ライオンのように鉄柵の向こうにいます。

ワカメちゃんの方に飛び出してくることは出来ません。

逃げるが勝ちです。

ワカメちゃんそれ逃げろ!