サザエさん―シルバ(40)
優しいお爺さんと可愛い女の子―1
朝日文庫版14巻〔60頁〕・昭和30年
『鶏を一匹入れた飼育籠のある庭に、落ちていた女の子の洋服を、エプロン姿のお婆さんが拾っています』
『お婆ちゃんは、拾った洋服を両手で広げて持って、「うらのせんたくものがとんできています」と言いながら、縁側で、キセルでキザミタバコを喫んでいるお爺さんの所に行きました』
『お爺さんは、それを見るとお婆さんに「とどけておあげ」と優しく言いました』
『そして、部屋の中に目配せしながら、「ついでになかみもとどけちゃどうだい」と優しく言っています。お婆さんが部屋の中を見ると、そこでは、座敷机の上に画用紙を広げ、お日様が輝いている絵を、夢中になって描いている可愛いワカメちゃんがいました』
「おじいちゃん、お婆ちゃん、遊ぼう」と言って、隣の可愛い女の子が遊びに来るんですね。
きっとお婆ちゃんは、こう言います。
「オバアチャンは、まだ、お仕事があるから、ワカメちゃん、部屋にあがって、一人で遊んでいてね!」
お爺さんは、可愛いワカメちゃんが来た来たと嬉しそうに、座敷机の上に画用紙を広げ、
「ワカメちゃん!今日は、良い天気でお日様も出ているから、お庭の絵を描いてごらん」
と鉛筆とクレヨンを渡しました。
ワカメちゃんは、
「うん」
と言って、画用紙に丸を描いて、その周りに、線をいっぱい描き始めました。
お爺さんは、
「やあ上手だね」
と言うと、縁側に座り込み、キセルでタバコをのみはじめました。ポカポカ陽気で、ついウトウトし始めたら、直ぐに、お婆ちゃんが、女の子の洋服を持ってきました。隣から飛んできたと言うもんだから、よく見てみると、ワカメちゃんの洋服だ!
ワカメちゃんの絵も出来ているようだし、わしも、もう少し昼寝したい。
「婆さん、その服は、ワカメちゃんの洋服だぞ、届けてあげればいいよ、ついでにその洋服の中身も、あそこにあるからとどけておくれ。わしは、折角のいい天気だから、ゆっくりと昼寝するよ」
と言いました。お婆ちゃんは
「ハイハイ、お爺さん。ワカメちゃん、もうお絵描きすんだでしょう。お婆ちゃんと洋服と一緒にお家に帰ろう」
と言いました。
ワカメちゃんは、大きな声で、「はーい」と答える可愛い素直な子でした。