八百比丘尼
富、名声、権力を手にした人間は古来より例外なく不老不死を望んできた。例を挙げるなら秦の始皇帝などがそうだろう。彼は晩年、不老不死の妙薬として水銀を服用していたといわれる。
ほかにも世界中に伝わる不老不死にまつわる伝説は枚挙にいとまがない。
もちろん、我が国日本にも不老不死の伝説はある。
・・・・・耳にしたことのある方はいるだろうか。
冒頭の八百比丘尼の伝説がそれである。
これは、現在の福井県小浜市に伝わる伝説である。
ある日、高橋某という長者が、海の向こうに住む主人から人魚の肉をもらってきた。彼はその肉を大事に戸棚にしまっておいたが、ある日長者の娘が見つけて食べてしまった。
娘はそれ以来、年を取らなくなってしまった。
やがて、家族は老いて死に、夫にも先立たれた。
独りぼっちになった娘は比丘尼(諸国を遊行して歩く尼僧)となり、国々へ巡行の旅に出たという。
彼女は行く先々で貧しい人々や困った人々を助けていった。
そして、800年の歳月が流れた。
比丘尼は若く、美しいまま・・・・・。
そのうちに生まれた若狭の国を懐かしく思い、故郷に戻ったが、誰一人自分を知る者はいなかった。
その後、比丘尼は洞窟へ入り、二度と人前に姿を現さなくなった。
その洞窟の前にはいつも白い椿が咲き誇っていたという。
※八百比丘尼の伝説は福井県のみならず、栃木、石川、岐阜、三重、京都、島根などにも伝えられています。