イチゴとリンゴの赤い恋 (2-1) | みーうさの巣

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2015年末よりユンサンヒョンさまにハマる
その後ユチョン→JYJ→東方神起→オルペン・ユンジェペンに漂着
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イチゴとリンゴの赤い恋  2-1 


その冬は本当におかしな気候だった。
例年ならとっくに咲いている花が蕾なのに、まだまだ出ないはずの芽が土からニョキっと顔を出していたりした。
そんなだから、園芸に詳しいわけでも気象予報士でもないユノさえも、季節の違和感は感じていた。
「ま、だからって俺の日常は特に影響ないからな、でも野菜が不作とかで食費が増えるのは困るか…」
ザル勘定とは言え一人暮らし10年選手ともなると、さすがにそこは気になってしまうものだ。

今日は急な呼び出しで休日出勤になった。
土曜だと言うのにスーツを着て朝の電車に乗ると、いかにも今からお出かけしますという家族連れがいた。届かない足をブラブラさせながら何やら歌う男の子と、それを微笑んで見守る若い両親の姿は幸せそうで単純に羨ましく思った。
30代後半、独身のユノに届く目出度い知らせは同期から後輩の物へと移ってきていた。

午後3時を回った頃にやっと仕事を終え、最寄り駅から自宅へとテクテク歩いていた。賑わう商店街は空きっ腹を誘惑する匂いで溢れている。
ユノは弁当屋の前で足を止めると、商品を見るフリをしてチラリと後ろを確認した。
「ブラックな勤め先より異常気象より目下の俺の問題はアレだな」
そう、ユノには最近とても気になっている事があるのだ。
最初にあれっ?  と思ったのは冬の始まりの頃(実際にいつからだったのかは不明)
帰宅途中や買い物中など、この町限定で感じる視線は振り返るとサッと影を残して消えた。気の所為と思うには頻繁すぎて、これは所謂ストーカーだと思い至った。
チラリと見えた姿は、細身の体にショートカット、見覚えがあるような…ないような…あるような。 特に実害はないけれど、どうにも気持ちが悪い。
まさに今も、その視線を感じていた。
自分のミスでも無い事で休日を潰されイラついていたのもあり、ユノは今日こそストーカーを捕まえるぞと決心した。

自宅マンションへの道をそれて、ユノは近くの公園へと向かった。まだ硬い蕾を付ける桜の木の下で、ベンチに座り缶コーヒーを開ける。
寒風吹く公園まで着いてくるならストーカー確定だろう。飲みながら携帯をいじっていると、やがて背後に気配を感じ、やっぱりかと思った。
ユノは手の中の携帯をインカメにし、そっと角度を立ち上げて後方を写した。
「ん?」
右後方、綺麗に切り揃えられた植込みからぴょこんと耳が出ているのが見えた。
黒い猫耳?
ストーカーじゃなくて猫?  勘違い?  と、そう思っていたら猫耳の後ろから人の顔が現れた。
顔の輪郭に沿ってボーイッシュに切られた艶のあるショートヘアと、長めの前髪の隙間から見える大きな瞳、寒いからか白い肌に色づく赤い頬がとても可愛らしい。
この人に間違いないと確信した。
ユノのストーカーであり想い人だ。
そう想い人。
話が違うって?  確かに変な話ではあるがユノは自分をストーキングするこの人が気になって気になって気になって、とうとうその一途な心とドンピシャタイプな姿に恋をしてしまったのだ。

実はユノが覚えている一番最初の出会いは、半年前だった。
その日は、仕事のストレスからか無性に甘い苺が食べたくなり、帰りに八百屋に立ち寄った。しかし季節外れだからか、苺パックには微妙に悩む値札が付いていたのだ。
「う~ん高い、バナナで我慢するか、う~ん」
そうやって、しばし八百屋の前で腕を組んで悩んでいると、腕をツンツンとつつかれた。
ん?  と横を見ると、塾に行く途中なのかリュックを背負った男の子がユノに向かって紙を差し出していた。
「なに?  俺?」
ひとまず受け取ると、男の子は何も言わずに行ってしまった。
「チラシ?  おお!  これは」
手に残った紙を見るやいなや、ユノは大通りに面したスーパーマーケットへ向かって歩き出した。
遠回りになるため、あまり行かない店だが、もらったチラシには今まさに苺のタイムセールをしていると書いてあったのだ。
「すげー有益情報。あの子なんで俺が苺ほしいの分かったんかな…まぁいいか、急げ急げ」
繊細だがおおらかな性格のユノにとって、今大事なのは苺の特売品を手に入れる事だった。

「おひとり様1パック、先着10名様にはさらに1パック贈呈…それはもう無理だろな」
スーパーに着いたのは夕方6時半過ぎ、奥様方の買い物ラッシュもひと段落ついた時間だった。贈呈の部分は諦め、ユノは吟味に吟味を重ねて一番甘そうな苺パックを一つ選びレジへ向かった。
「い、い、いらっしゃいにゃせ。苺が1パックですね。タ、タイムサービスでもう1パック、えと、2パックお渡しします!」
1パック買って2パック付いてくるの? それって儲かる?
「 マジすか」
「はいマジっす…あ、失礼しました。本当です」
「うわお」
「う、うれしいですか?」
「はい、とっても!  ありがとうございます」
「こ、こちらこそ…また、あの、来てください。サービスしにゃす」
「え? あはは、はい、来ますね」
バイトの子にサービスをする権限があるとは思えなかったが、ユノはその気持ちがうれしかった。
それに、不慣れながらも一生懸命接客する姿もとても好ましかった。

その後勝手に「苺ちゃん」と名付けたその子に会いたいのもあって、ユノは度々スーパーに行くようになったのだが、何故かいつ行っても苺ちゃんはいなかった。一度、もう辞めたのか聞いたが「そんな子はいた事もありませんが」と、冷ややかに言われてしまった。社員の印象に残らないほどの短期バイトだったのか、または個人情報だし俺を怪しんで教えてくれなかったのかもしれない。
それでも諦めきれず、ユノはスーパーに通った。

「ここって、品揃えが俺得すぎる」
行きつけになって気付いたのだが、そこはちょっと不思議なスーパーだった。
気の所為かもしれないが、昼夜関係なくユノが入店すると、すかさずタイムセールが始まり、要望を伝えているわけでもないのに、欲しいと思っている物が次に行く時には必ず入荷されていた。
ずっと習っているテコンドーの道着の帯を無くした時に、帯だけが玉ねぎの横に陳列されていた時は流石にちょっと引いたが、それもユノ得意の繊細だがおおらかな性格で受け流し、有難く購入した。

さて、会えないと余計に気になる。
「苺ちゃん可愛かったな…」
レジ越しに自分を見る大きな目も、白い肌も、苺を渡してくれた時に触れた指先も、はにかんだ笑顔も、全て時が経つ程に鮮明によみがり、更に恋しく感じた。
そして、どうにかしてもう一度会いたいと思うユノの前に、いや背後にストーカーが現れた。それが二度目の出会いだった。
ある時、隠れているつもりのストーカーの姿が、向かいのショーウィンドウにバッチリと写っていて気がついた。
「まさかの苺ちゃんがストーカーだったとは…ラッキーすぎる」
それからはストーキングされるのも楽しくなったし、いつ話しかけて来るのだろうとドキドキして待った。
まぁ結局いつまで経っても進展がないので、いっそ自分から行こうと決め機会を狙っていたのだが。

そんなわけで、携帯カメラで苺ちゃんの姿を確認したユノは、意を決しベンチを足場に素早く植込みを乗り越えた。




ジェジュンは片恋をしていた。
最初の出会いは偶然だった。あれは友人宅に遊びに行った際、手土産で持参したリンゴが廊下を転がり、たまたま隣の部屋から出てきた彼がそれを拾うという、今どき漫画でもないようなシュチュエーションだった。ふたり同時に出した手が赤いリンゴの上で重なり目が合った。ジェジュンは一瞬にして、その深く黒い瞳に見惚れ、柔らかい微笑みに心を奪われた。そして重ねた手の温もりと共に、その時の光景を何度も反芻するように思い返し、どんどん恋心を深めて行ったのだった。

「リンゴの王子様…一目惚れって本当にあるんだね」
「ヒトメボレ?  日本のお米の品種ですね。ひょんも食べた事があるんですか?  今度仕入れましょう、 あれは美味しいですからね」
「うん、すっっっごくカッコよかったんだ~」
「また食べたいですね。炊きたてに明太子なんか乗せて」
「うん、また会いたいね。タコツボに明太子乗せて」
「は?  炊きたてご飯に明太子です」
「あぁごめん、タキツバ解散後にメンタリストね~オレそれ分かんな~い」
噛み合わないにも程がある。
「チャミはDAIGOさんに会いたいの?  おっれは…うふっ」
「いえ、私はヤギと散歩したくないし、ウィッシュもしません…て、ちょっと、そっちじゃないって言ってくださいよ。恥ずかしいじゃないですか。それにさっきから変ですよ。熱でもあるんですか?   顔も赤いし、普段以上に話が通じません」
「うふっ、オレのハートはバーニングボンバー♪消火は不可能さぁぁぁ♪うふふふふふふふふふf」
「うげっ」
リンゴを手にクルクル回るジェジュンの姿に、弟同然に親しい彼も生ゴミでも見るかのように顔を顰めた。 

ジェジュンが二度目にユノに会ったのは帰宅途中だった。
通りかかった八百屋の前に、偶然腕組みをするユノがいた。高鳴る胸を押さえて、そっと近づくと「う~ん苺が高い…」と言いながら、ユノは買うか買うまいか迷っているようだった。
ジェジュンは一旦その場を離れると、素直そうな子供を探し、ポケットから出したチラシをユノに渡すように託した。そして自分は退勤してきたばかりの職場へ急いで戻った。
「ジュンちゃん、ジュンちゃんどこどこ、ジュンちゃーん」
正面から入ったジェジュンは売り場を走り抜けるとバックヤードにいるジュンスを探した。
「あれ、ひょん帰ったんじゃなかった?」
「ジュンちゃんいた!  急いで苺出して。  それに、ひょんじゃなくて社長って呼んでってば」
「ハイハイ社長」
「ハイは一回でしょ。まぁいいや急げ急げ」
二人で下ろした苺の箱を再びカートに乗せていると、後ろから声がした。
「それ、明日の特売用でしょ、チャミに怒られるよ?」
人手が足りない時に来てくれている友人だ。
「ユチョナ~良かったこれやっといて。オレはレジ交代してもらうから先に売り場に行っとくね。早くしないとリンゴの王子様が来ちゃう」
「えーリンゴも出すの?」
「ちがーう。リンゴ王子が苺を買いに来るんだってば」
「何そのメルヘン」

そんなわけで、ユノはジェジュンが社長を務めるスーパーに苺を買いに来て、緊張してカミカミで接客するジェジュンと出会ったのだった。


続く




来週になったら、ユノはドラマ撮影が始まりそうだし、ジェジュンは神戸に映画のロケに来日しそうだし大活躍の二人にワクワク♡

で、次回もう最終回?!となりますがアメ限にします。別にエロくはないんですがイチャイチャはちょっと隠したい乙女心です。ご容赦ください。