イチゴとリンゴの赤い恋 (2-2) | みーうさの巣

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2015年末よりユンサンヒョンさまにハマる
その後ユチョン→JYJ→東方神起→オルペン・ユンジェペンに漂着
ユンジェ小説書いてます。
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イチゴとリンゴの赤い恋  2-2 


休日のはずのユノが朝からスーツで出かけたと聞き、ジェジュンはずっとソワソワしていた。

「ねぇねぇ、会社で何かあったのかな、大丈夫かな」

スーパーの奥にある事務室。

パソコンに向かう忙しそうなチャンミンの前で、ジェジュンはただウロウロと歩き回っていた。

「サラリーマンですから、休日出勤くらいしますよ。それより又勝手に変な物仕入れてないでしょうね」

オトコ相手に一目惚れだなんて自由で困ったひょんではあるが、いざとなると発揮される的確な決断力と行動力をチャンミンは素直に尊敬していた。それに、なんだかんだ世話焼きで優しいジェジュンの事が好きなので(本人には決して言わないが)、何をしてもつい大目に見てしまっていた。

「変な物なんて一回も仕入れた事ないもん。帯だってちゃんと売れたし」

ジェジュンはそう言いつつ、届いたばかりの商品の請求書をそっと伝票の束に紛れ込ませた。

「まぁ、あれは意外な需要でしたが」

「オレって目利きだよね」

ジェジュンは得意そうに顔の前で親指を立てた。

「たまたま近くに道場が出来たからでしょう。それより昼休みはとうに終わってますよ。働いてください」

「ハイハイ、いってきまーす」


一人になった部屋でキーボードを叩きながら、これじゃどっちが社長か分からないなと、クスっと笑っていると胸ポケットで携帯が震えた。

画面を開くと、さっき出て行ったばかりのジェジュンからメッセージが届いていた。

(今ユノが駅に着いたみたい、ユチョから見かけたって連絡あったから、ちょっと行ってくる)

(いいですけど、今日は5時から例の会議ですから、それまでには帰ってきてくださいよ)

まだ5分も働いてないのに。

携帯を置き溜息をつくと、チャンミンは再び入力作業に戻った。

ちなみに、このメッセージが既読になったのは、翌日の昼をとうに回ってからだった。




「きゃっ」
植え込みに隠れ、いつものようにストーキングしていたジェジュンは、いきなりの急展開に短く叫ぶ事しか出来なかった。
なぜか目の前にユノがいて、黒猫が腕からぴょんと飛び降りて、その反動でよろめく体をユノに抱きとめられた。
一瞬の出来事なのにスローモーションのようだった。
「ふぇ、ひゃ、きゃ、や、やだ、は、離して」
ジタバタと腕の中でもがく体を、ユノは問答無用にぎゅっと抱き締めた。この機会を逃したらもう二度と会えない可能性もある。
「だめだ、逃がさない。俺を追いかけ回す理由を言わないと離せない」
ジェジュンはその言葉にハッとして体を強ばらせた。
バレてた…きっともう嫌われている。
「ご、ごめんなさい。もうしない…ゆるして」
震える声と潤む瞳で許しを乞う姿に、ユノは慌てて力を緩めた。
「ごめん、怖がらせるつもりはなくて、逃げないって約束してくれるなら…て、あ、あれ? あの、もしかして君って… 」
いくら痩せているにしても抱き心地が違うし、肩幅もしっかりとしている事に気が付いた。そして、気のせいか話す度に喉仏も動いているような?
「え、君もしかしてオ・ト・コ?」
逃げるのを諦めたジェジュンは、肩を落としコクンと頷いた。
ただ嫌われるだけじゃない、気持ちの悪いヤツだと思われてしまう。
恥ずかしくて、怖くて、悲しくて、このまま消えて無くなりたいと思った。
ユノはユノで、まさかの展開に頭がクラクラしていた。やっと捕まえた苺ちゃんはオトコだったのだ。
俺ってオトコに恋してたのか?
「どうしよう」
思わず声に出てしまった。
「もしかして警察に行くの? 」
すがるように服を掴むジェジュンに見つめられ、ユノの胸がキュンと痛んだ。恋の病は後戻り出来ない程に重症のようだ。
「まさか、警察なんて行かないよ。それよりストーカーなんて言ってごめん」
全ては勘違いだったのだろう。オトコの彼がオトコの俺をストーキングする道理がない。
だが、ジェジュンは俯きつつ首を振った。
「ううん、謝らないでよ。だってオレ、本当にストーカーだもん」
「そうなの?」
「そうなの」
オウム返しの言葉と、上目遣いがまた可愛い。性別を超えるビジュアルショックだ。
ユノは思わずニヤける頬を隠しつつ、ジェジュンの手を引いて一緒にベンチに座った。本当にストーカーなんだったら聞きたい事が山ほどあった。

「まず、君の名前を教えてくれる? 俺の名前は…それは知ってるんだっけ」
「うん、ユノでしょ。チョン・ユンホ…さん。オレはジェジュン、キム・ジェジュンです」
なぜかユノが怒っていないようだったので、ジェジュンは少し安心して肩の力を抜いた。
「ユノでいいよ。ジェジュン…って呼んでもいいか?」
これまで何度も想像したユノからの名前呼びにジェジュンの胸は高鳴った。
「うん、いいよ…ユノ」
そして、それはユノも同じだった。いや、それ以上だった。
「ジェジュン、もう一回」
「え、なに?  ユノ…」
ただ名前を呼ばれただけなのに、その瞬間からユノは自分の名前が希少な宝石のように特別な輝きを持つのを感じた。
初めての感覚、初めての経験。
一気に色々どうでもよくなった。
常識より経験より、何よりもこの恋を大切に愛に育てなきゃいけない。
そう確信したユノは、繋いだままだったジェジュンの手をぎゅっと握り直した。
「っ…ユノ…オレもう逃げないよ」
強い力に驚いて、ジェジュンは反射的に手を引いた。
「うん、でもダメだ。まだ離さない」
離したくない。
「な、なんで、だってオレ気持ち悪いストーカーなんだよ。触りたくないでしょ。オトコなのにコソコソと周りをうろついて、勝手に色々調べて、勝手に盛り上がって、勝手にどんどん好きに…好きになって…ごめんなさい」
ユノの手の甲に雫が落ちた。
「ごめん汚い」
ジェジュンは伸ばした袖先でゴシゴシと濡れたユノの手を拭いたけれど、その間にもポタポタと涙は落ち続けた。
いたいけなその様は、ユノの胸をぎゅっと掴んだ。そして込み上げる思いに、たまらずジェジュンを抱きしめていた。
「大丈夫、大丈夫だからジェジュン。汚くなんかない」
腕の中で泣く人をただ愛おしいと、そう思った。
ユノはポンポンとあやす様にジェジュンの背に手をあてた。
「だ、だってオレ、散々付け回してユノに、ユノにやな思いさせて…迷惑かけて」
「迷惑なんかじゃ無かったよ。そうそう、ほら急に雨が降った日にマンションの下でカエルの歌を歌って知らせてくれたのジェジュンだろ、洗濯物が濡れなくて助かった」
「…うん」
ジェジュンはコクンと頷いた。
通り過ぎる人に変な目で見られながらも、ユノが気付くまで何度も歌った。
「ひどい風邪を引いた時に、ドアの取っ手にお粥のポットを下げてくれたのは?」
「…たべた?」
「まぁ、ちょっと怪しんだけどね。たぶん君だろうと思ったから食べたよ。とっても美味しかったし元気出た。今度ポット返すね」
「うん…」
お粥はやりすぎだと止められたけれど、あの時はユノが心配で居ても立ってもいられなかったのだ。食べてくれた事が分かって嬉しかったが、ジェジュンはある事に気がついた。
「あの…オレからだって分かってて食べたの?」
信じられないと言う表情でユノを見た。
「そうだよ。だからジェジュンが気持ち悪いストーカーなら、俺だって気持ち悪い奴なんだよ。そうやってジェジュンにストーカーされてるのを喜んでた。知らないフリして楽しんでた。ごめん」
「…」
無言で俯いてしまったジェジュンに、ユノは言い含めるように「本当だよ」と言った。
「…でも」
ジェジュンにはまだ信じ難かった。
「もっとあるよ。年末だったか、いつもみたいに電柱に隠れて俺を見てる時にさ、犬に吠えられた事あったでしょ。ジェジュンあの時ワンワンってイヌ語で応戦してたの覚えてる? 面白かったし、すごく可愛かった」
ユノはクスクスと思い出し笑いをした。
「…見られ、てた」
結局わんことの戦いに負けて、電柱を譲ったんだった。
「ついこないだは外国の人に道を聞かれて、案内してどっか行っちゃったろ。あれは寂しかった」
何故か知らない人に話しかけられる事が多いジェジュンは、度々似たような経験をしていた。特にあの時は自分も知らない場所だったので、人に訪ねながら結局目的地まで行ったんだった。
そうだ、あの時
「遠かったからすごく時間がかかったのに、戻った時ユノまだいたよね」
「うん、待ってたんだよ。俺の所に帰ってくるのを」
思ってもみなかったその言葉に、ジェジュンは漸くしっかりと顔を上げた。
すぐ目の前に、出会ったあの日と同じ優しい微笑みと黒い瞳があった。
吸い込まれる、吸い込まれたい。
全てを手放して身を委ねたいと願ってしまう漆黒が、そこにあった。
言葉を失ったように、ただうっとりと自分を見つめるジェジュンに、ユノも見惚れていた。涙に濡れて光る睫毛、潤んだ瞳、ふっくらと柔らかそうな頬、苺の様に赤い唇は何か言いたげに薄く開いていた。
目を逸らせぬままに、ユノはゆっくりと顔を近づけ「好きだよ」と囁いて唇を重ねた。
春まだ浅い夕闇の冷えた公園、誰も知らない時間の中でふたりの唇は熱を与えあった。何度も食みながら押し付けられるキスに、戸惑っていたジェジュンもやがて答えるように唇を開きユノを迎え入れた。
夢…なのかもしれない。小春日和にウトウトと見ている夢なのかもしれない。
これまで何度もユノとのデートを夢想した。雪の日はコートのポケットの中で手を絡め歩きたいと、春には満開の桜を見上げ微笑み合い、夏は波にさらわれる砂浜に何度も二人の名前をきざみ、秋の色づく葉陰に隠れて抱き締められたいと。
夢…なのだ。目を開けると消えてしまう。
キスに応えながらも止まらないジェジュンの涙をユノはちゅっと優しく吸った。
「なんで泣くの、いやだった?」
目を瞑ったまま顔を振るジェジュンの涙が空に散った。
「うれしい…けど」
「けど?」
「夢だから、目を開けたら覚める夢だから…悲しい」
ユノはジェジュンの前髪を指先でよけると額にキスをした。
「ほらジェジュン、夢じゃないよ。俺は目の前にいて、もっとキスしたいと思ってる。でも…」
そこでユノは黙り込んだ。
しーんとした時間が過ぎて、ジェジュンが不安になってきた時だった。
「早く目を開けてくれないと、俺本当に消えるかも 」
ユノはゆっくりとジェジュンから体を離して立ち上がった。急速に冷えていく体温にジェジュンは焦った。
「やだっ、ユノ行かないで」
そう叫んでいた。
「うん、行かないよ」
咄嗟に開いてしまったジェジュンの瞳は、ニコニコと嬉しそうに笑うユノの姿をしっかりと見た。
夢じゃない。
これは夢じゃない。
ユノはオレを好きだと言った。オトコだと分かったのに抱きしめてキスをした。
もうコソコソと後を追いかけたりしない。二人並んで歩けるんだ。
うれしくて、うれしくて…胸がいっぱいになって、また涙が出てきた。
そんなジェジュンをユノは「ん?」と、とぼけた表情で見守っていたのだが、そのイタズラっ子のような笑顔は、ホッとしたジェジュンを少しイラつかせた。
ちょっとくらいやり返してもいいよね?
「いじわる、ユノきらい」
「えっ」
ジェジュンは手を伸ばすと驚くユノのネクタイを掴み、そのままグイッと引っ張ってキスをした。瞬間、びっくりしたユノの目がくるんと大きく見開かれて、そしてフニャンと優しく微笑んだ。
「うそ…大すき」
息継ぎするのも惜しかった。
「んっ…俺も」
やがて、肩を持たれジェジュンが立ち上がると、二人は隙間を無くすように互いを引き寄せ合い、より深く長いキスを交わした。
リンゴやイチゴを包む飴のように、赤く甘い香りが二人を包み込んだ。




「ジェジュンひょん会議に来なかったね」
エレベーターを降りてマンションの廊下を歩きながらジュンスが言った。
「まったく無責任にも程があります。自分が会議を開くって日時指定したくせに、連絡のひとつもない」
凄い勢いでジェジュンへの苦情メールをスマホに叩き込みながらチャンミンが言った。
「まぁ、会議って言っても大半はリンゴ王子ことユノ攻略について、でしょ。売り場に出たらすぐ会えるのに、恥ずかしいからってストーカーになるの謎すぎる」
店からチョロまかした酒を揺らしてユチョンが笑った。
せっかく集まったので三人で鍋でも食べようかと、チャンミンの部屋へ向かっていた。
そんな彼らの前方で声がした。

「ジェジュン誤解するなよ。普段はこんなにすぐ部屋に誘ったりはしないんだ。本当だよ。でもジェジュンと俺ってちょっと特殊だろ、知り合ったばっかりって訳でもないし。あっ、でも俺は明日休みだけどジェジュンは仕事か…でもコーヒーくらいならいいよね? もうちょっと一緒にいたいし」
チャンミンの隣の部屋、つまりユノの部屋の前にジェジュンが立っていた。扉が開いていて声しか聞こえなかったが、当然ユノもいるようだ。
気配に気づいたジェジュンが振り向いて、三人と目が合った。
「あーっと大丈夫だよユノ。実はおっれも明日休みになったんだ。だからゆっくり出来るし、美味しい朝ごはんも作ってあげるね。ユノはパン派? ご飯派?  オレどっちも得意だよ」
「え、朝ごはん…朝まで…いいの、ホント?  楽しみでヨダレ出そう。じゃあ早く、遠慮してないで早くこっちにおいで、俺の可愛いジェジュア~」
呆然とする三人にヒラヒラと手を振りながら、ジェジュンは引っ張られるように部屋の中に消えていった。

カチャン。
ユノの部屋が閉まると同時に、チャンミンとユチョンは踵を返しエレベーターへと向かった。
「ジェジュンひょんだったよね、いつの間にリンゴ王子と仲良くなったんだろ?  あれ、二人ともどこ行くの? ねぇ、ボク明日休みなんだけどいいよね」
取り残されている事に気付いて、ジュンスが追いかけて来た。
「今夜は絶対に部屋に帰りませんからね。ユチョン、すみませんが泊めてくださいね」
長々と打ち込んだ苦情を全消ししながらチャンミンが言った。
「ボク絶対に休むからね」
一番にエレベーターに乗り込みながらジュンスが言った。
「何がどうなってあんな事になったのかは気になるけど、恋が実って良かったよ。次の議題は社長の無断欠勤について、に決まりだけどね。それにしても、俺の可愛いジェジュア~って」
面白くてしょうがないと言うふうにユチョンが笑った。

チャンミン、ジュンス、ユチョン
三人三様の感情を乗せてエレベーターはゆっくりと扉を閉め降りていった。


おわり。





アメ限にするのやめました。
恥ずかしいけど我慢する///
そしてジュンちゃんいつまでも子供扱いしてごめん。そうじゃないの知ってるからね。

↓この曲も好きなので良かったら。
時々思い出して聴いて浸る。
君にメロメロで君しかいらんみたいな曲です。

「intoxicated」

 The Cabと言うアメリカのロックバンドの曲です。詳しい事は何も知りません。


では、感想お待ちしております。
ばいちゃ