酷暑日が続いたが、この数日は過ごしやすい気温となったようだ。

 

 昔は夏ってこんな感じだったなぁ、という気分がした。

 

 

 自転車で、日陰また日陰を巡りながら走る。

 

 なじみのフレンチのお店が、お昼前に満席だったので、そのまま思いつきで北に移動。

 

 たまたま通りがかった商店街の一角に、老舗っぽい寿司屋を発見した。

 

 外から暖簾の奥を覗くと、お客もそれほどいないようなので、そのまま店に入ることに。

 

 カウンター内のハチマキを巻いた大将がこちらを見ながら、「らっしゃえ〜」との掛け声。

 これだけで、嬉しくなってしまう。

 

 握りのランチがあるということで、それを注文した。

 

 美濃焼の魚字湯呑みにお茶を入れてもらって、目の前でネタをさばく大将の手腕に惚れ惚れとする。

 

 お客は、高齢者の常連さんばかりのようで、大将との会話が漏れ聞こえてくる。

 

 ご近所の噂話がほとんどだ。

 

 大将は、常連さんの噂話にいちいち相槌を打ちながら、こちらの注文している寿司を手際よく握っている。

 

「へい、お待ち」と、年季の入った寿司下駄に乗った握り寿司がカウンター越しに、こちらに届く。

 大きなエビの頭の入ったお吸い物も付いてきた。こういうものは、気持ち的にもありがたい。

 

 2段に並んだ寿司は、下段の右から左側に向かって食べて行って、最後には卵焼きで終了。

 混み始めてきたので、速やかにお会計を済ます。

 

 最後に大将が、「お客さん、うちは初めてでしたよね」と声をかけてくれた。

 

「そうです。前を通った時に、なんとなく暖簾が気になったので、覗かせていただきました」

 などと、おかしなことを言ってしまう。

 

 苦笑いする大将。

 

 そこで自分も、つられて苦笑い。

 

 こういうコミュニケーションがあってもいいように思った。

 

 昔から、こうではなかったのか?

 

 ある夏の、懐かしい午後であった。