秋の味覚と言えば、まず秋刀魚が浮かぶ。
そして秋刀魚は、庶民の味でもある。
秋刀魚の初ものを探しに行くが、今年は秋刀魚が不漁とのことで、お値段が少し張る。
大した金額ではないのだが、そこはやはり“庶民の味”なので、値下がりするのを待つとする。
秋刀魚は刺身でも美味しいが、焼いても美味しい。
昔は居酒屋などで秋刀魚焼きを頼むと、レモンが付いて来た。
これは焼いた秋刀魚と添えられた大根おろしを一緒に摂ると、魚介類に含まれるジメチルアミンが、ニトロソアミンという発ガン性物質に変化すると言われており、それをレモンのビタミンCが中和してくれるという話があった。
いや、それがあったとしても微々たるもので、心配するには及ばない気がする。
当時は巷に、妙な仮説がまことしやかに囁かれていたことを思い出す。
魚のEPAとかDHAの話は、もっとしてもいいと思うが。
焼き秋刀魚を、頭から食べる人がいる。
骨までムシャムシャと食べるそうだ。
秋刀魚の骨は柔らかいが、それでも何かの間違いで喉に刺さったりすると大変なことになる。
以前、下町の小料理屋で秋刀魚の塩焼きを食べてから、その頭と骨の部分を唐揚げにして出してもらったことがあった。
秋刀魚の骨は酒に浸し片栗粉をまぶして、骨せんべいにする。
頭はカリカリに揚げて、そのまま齧る。
苦味があって、酒の肴にぴったりである。
内臓の苦い部分も、立派な酒のアテになる。
1尾の魚を、身から骨まで、すべて美味しくいただく。
こう考えると、秋刀魚は本当に庶民の味覚なのである。