ずっと以前の話だ。
友人だったSくんが亡くなり、ご遺族のご好意で彼の残したものでほしいものがあれば、ということになった。
まだ整理中のSくんの部屋に入ると、1枚の紙切れが畳の上に落ちていた。
何気にその紙切れを拾い上げると、そこには濃い鉛筆で殴り書きのようなものがあった。
それにタイトルなどはなかったが、なにか歌詞のようなものだろうと思った。
その紙切れは、くしゃくしゃになっていた。
捨てるつもりだったのだろうか。
筆跡はSくんのものなので、彼が書いたものに違いない。
ご遺族にこの紙切れを、と申し出た。
文末に日付が入っていたが、この日付が詩の書かれた日なのだろうか。
自分はこの作者であろうSくんのことをいま思い出して、このリリックをささやかな記事として掲載しておこうと思う。なお、タイトルは自分がつけたものである。
詩の中に登場する“君”とは、誰のことだったのだろう。
「夜明け前のlyric」
my soul is with you
my soul is with you
きらめく星空
見上げる君
そんな星空が
夜明けとともに見えなくなってゆく
その瞬間を君はいつも怖がっていたね
でも星は消えたんじゃない
明け方の光の中で見えなくなっただけだよ
今は弱々しく光っているけれど、夜になるとまた戻ってくる
だからどうかどうか心配などせず、安心しておやすみ
そんな君を、嘘ばっかりだった僕はいま思い出しているよ
ある日とつぜん、いなくなってしまったんだ
飲みさしの缶コーヒーと
秋に着るはずだった新しいセーターを残して
my soul is with you
my soul is with you
いつも明け方になると思い出すんだ
魂がかき消えるくらい抱きしめたかった
君のことを
そしてもう一度、同じ星空を見たい
2011・3/10