[原著論文]ERVs(内因性レトロウィルス)を放し飼いにすることにより腫瘍免疫も活性化できる。 | 30台からの基礎研究

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DNA-Demethylating Agents Target Colorectal Cancer Cells by Inducing Viral Mimicry by Endogenous Transcripts

 2015 Aug 27;162(5):961-73

 

In brief

抗腫瘍DNA脱メチル化剤は①ウイルス認識および②インターフェロン応答経路を活性化する内因性dsRNAの転写を誘導する。この抗ウイルス応答は、結腸直腸癌開始細胞の増殖を減少させる。(癌細胞自体のinnate immuneを活性化することで免疫を誘導して癌治療に応用する。)

 

High Light
d5-AZA-CdRはdsRNAの形成およびMDA5/MAVS/IRF7経路の活性化を誘導する
DNA脱メチル化すると増殖が落ちるのはウイルス感染状態と近い状態だからである。
ウィルス感染状態を作り出すと、CICsが治療できる。
dMDA5/MAVS/IRF7経路は、結腸直腸癌に対する潜在的標的である

 

Abstract

DNA脱メチル化剤は、臨床的抗腫瘍効果を示しているが作用機序が未知である。本論文は結腸直腸癌細胞を用いた実験およびbioinfomaticsの組み合わせににおいて、低用量5-AZA-CdRがウイルス感染状態を模倣することによって結腸直腸癌CICを標的とすることを示した。これは、①内在性レトロウイルス②MDA5/MAVS経路の活性化、および③IRF7の下流の活性化から少なくとも部分的に誘導されたdsRNAの誘導に関連する。実際に、MDA5、MAVS、またはIRF7のノックダウンによりウイルス認識経路を遮断すると、5-AZA-CdRが結腸直腸CICを標的とする効果が阻害され、5-AZA-CdRの長期間の増殖抑制効果が有意に低下する。さらに、CICへのdsRNAのトランスフェクションは、5-AZA-CdRの効果を模倣することができる。以上より、我々の結果は、DNA脱メチル化剤の抗腫瘍メカニズムの理解に大きな転換をもたらし、MDA5 / MAVS / IRF7経路をCICに対する潜在的な標的として強調している。

 

[コメント]

がん細胞における腫瘍免疫は遺伝子の化石と言われる内在性レトロウィルスをあえて解放してしまうことにより、腫瘍免疫を活性化して治療することができる。副作用と治療効果が相関するという報告とも一致し、生体のERVsが活性化しがちな人は副作用も出やすいが腫瘍免疫も活性化しやすくPD-1/PD-L1 Ab治療がよく聞くということ。医療としてchromatin accesibilityを高くしてERVsを解放してしまうというのも治療になりうるが、おそらく副作用も強くなるはず。